緊迫感に満ちた心理劇
『あの日のように抱きしめて』

2015.08.19

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緊迫感に満ちた心理劇『あの日のように抱きしめて』 Ⓒ SCHRAMM FILM / BR / WDR / ARTE 2014

『東ベルリンから来た女』の監督・主演トリオが描く、第二次世界大戦直後の深い葛藤。ドイツ映画『あの日のように抱きしめて』が、8月15日(土)よりBunkamura ル・シネマほかにて全国順次ロードショーされた。

夫は私を愛していたのか、それとも裏切ったのか

『東ベルリンから来た女』で2012年のベルリン国際映画祭銀熊賞(監督賞)に輝いたクリスティアン・ペッツォルト監督が、ふたたび主演にニーナ・ホスとロナルト・ツェアフェルトを迎えてメガホンを取った。今回は顔に怪我を負い収容所から生還した妻と、容姿の変わった妻に気づかない夫との愛の行方を、緊迫感満点に描き出す。

ユダヤ人たちが強制収容所に送られる様子を、ただ見守っていた普通のドイツ人たちも登場させながら、戦争によって引き裂かれた夫婦、家族、友人の心理を克明に表した「収容所のその後」を描く傑作が誕生した。

ニーナ・ホスは収容所から生還したユダヤ人女性を熱演。抑制された演技のなかで、彼女の一瞬一瞬の表情が、ネリーの過酷な体験を如実に物語る。夫役のロナルト・ツェアフェルトは、心に深い闇をもつ難しい役どころを見事に演じきった。

「この作品は、本質的にはフィルム・ノワールなんだ」と語るクリスティアン・ペッツォルト監督。フィルムで撮影し明暗のコントラストをくっきりさせることで、この世界は暗闇だが光もまた存在することを示して見せた。

収容所から生還した妻と変貌した妻に気づかない夫

ネリーは、顔に大怪我を負いながらも強制収容所から生還。親友のレネとともにドイツに戻り、顔の修復手術を受ける。レネは、パレスチナに建設されるユダヤ人国家へ2人で移住する計画を立てているが、ネリーの願いは夫ジョニーを見つけ出し過去を取り戻すこと。

顔の傷が癒えるころ、ネリーはついにジョニーと再会するが、妻は収容所で亡くなったと思い込んでいるジョニーは、容貌の変わった彼女を妻とは気づかない。そして、亡くなった妻になりまし遺産を山分けしようとネリーにもちかける。

Text by KUROMIYA Yuzu

『あの日のように抱きしめて』
8月15日(土)よりBunkamura ル・シネマほかにて全国順次ロードショー
監督・脚本|クリスティアン・ペッツォルト
共同脚本|ハルン・ファロッキ
原作|ユベール・モンティエ著『帰らざる肉体』
出演|ニーナ・ホス、ロナルト・ツェアフェルト、ニーナ・クンツェンドルフ
配給|アルバトロス・フィルム
2014 年/ドイツ/98分/原題『Phoenix』/PG-12

OPENERSより
第二次世界大戦直後、夫婦の愛の行方をサスペンスフルに描く『あの日のように抱きしめて』|MOVIE
http://openers.jp/article/1322042

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