映画『フランシス・ハ』
ノア・バームバック監督独占インタビュー – (3)

2014.09.12

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Frances_Ha_3 ©Pine District, LLC.

どんな人生においても誰もが直面する
夢と現実の葛藤

──夢を追うイメージの強いニューヨーカーのリアルな姿として、フランシスの選んだ現実的な選択が非常に興味深いです。 フランシスというキャラクターは、リアルに人生を送る人物として描きたかった。最終的に彼女が到達する場所は、映画のなかではとても小さなところではあるんだけど、彼女の人生においては非常に大きな決断なんだ。

フランシスはとても頑固で、あらゆることに否定的で、どんどん大変な状況に追い込まれていっても、周りの忠告に耳を傾けない。グレタは脚本の段階から、フランシスのことを愛情を込めて「ちょっと狂ってる」と言っていたほどなんだ(笑)。

でも、まさに表裏一体であるとも言えるんだけど、見方を変えれば、フランシスは誰よりもロマンチックで、希望に満ちていて、ポジティブでもある。現実においても、誰にだって多かれ少なかれそういう部分はあるでしょ? だから最終的には彼女にもいい結末が待っている、という方向にもっていきたかったんだ。

──監督やグレタさんはある意味夢を叶えているとも言えますが、フランシスの人生をどう思われますか。 映画製作の現場においても、たとえすべてが計画どおりに進んで、運さえ味方してくれたとしても、現実には妥協しなければいけないことの方が多いんだ。この作品を撮っていたころ、自分はすでに40代前半だったんだけど、ぼくだって27歳のフランシス同様にいろんな悩みを抱えていたよ。

フランシスがこの映画で経験する旅は、置かれた状況に関係なく、誰の人生にだって起こりうることなんだ。人は誰だってある程度現実的な決断をしていかなければならないし、それとおなじように魔法みたいなことだって起きうるんだ。

フランシスの視線の先には、いつだってソフィーがいる。たとえ彼女にとってのドリーマー的人生はいったん終わったとしても、それと同時に、夢が現実になっているともいえる。ソフィーがいるからこそフランシスは、自分が魔法に満ちた現実に生きていることに気づくんだ。

Frances_Ha_noa

Noah Baumbach|ノア・バームバック
1969年9月3日アメリカ、ニューヨーク市ブルックリン生まれ。ニューヨーク州ポキプシー町にあるヴァッサー大学で学び、24歳のときにラブコメディ『彼女と僕のいた場所』(1995年)で監督・脚本デビュー。 2005年、高校時代の実体験を基にした『イカとクジラ』がアカデミー賞®脚本賞にノミネートされるなど、各映画賞を席巻し世界的に有名となる。2010年、ベン・スティラー主演『ベン・スティラー 人生は最悪だ!』でヒロインとしてグレタ・ガーウィグを起用。公開待機作として、アマンダ・セイフライド、ベン・スティラー、ナオミ・ワッツが出演する『While we’re young』が控えている。 脚本家としての活動は、ウェス・アンダーソン監督『ライフ・アクアティック』(2004年)『ファンタスティックMr.FOX』(2009年)で共同脚本を担当したほか、アニメーション『マダガスカル3』(2012年)の脚本も執筆している。
Text by Interview & Text by WATANABE Reiko(OPENERS)

『フランシス・ハ』
9月13日(土)よりユーロスペースほか全国順次公開
監督|ノア・バームバック
脚本|ノア・バームバック、グレタ・ガーウィグ
出演|グレタ・ガーウィグ、ミッキー・サムナー、アダム・ドライバー
配給|エスパース・サロウ
2012年/アメリカ/86分/原題『Frances Ha』/モノクロ
http://francesha-movie.net/

OPENERSより
MOVIE|愛すべき不器用なニューヨーカーのリアルをスタイリッシュに描く
http://openers.jp/culture/tips_movie/news_frances_ha_48056.html

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