Editor’s Eye

2019.10.03

Editor’s Eye

“カメ止め”を超えるか!?
インディーズ映画の超新星<メランコリック>をキミは見たか

都内のインディーズ系の映画館でなんの前触れもなく大ヒット快進撃を続ける映画がある。その名も<メランコリック>と言う。
銭湯を舞台にそこで巻き起こる殺人処理。と言えばなんとなくホラー的要素を感じるのだが、そうではなく、ペーソスというか悲哀と流される人生がそこに映し出される。
「そもそもは、3人でどんな映画にしようかを話し合っていて、そこから生まれたのがこの作品というのが正直なところです」
この映画の主役を務めつつプロデューサーもこなした皆川暢二氏の弁。

主演(鍋岡和彦役)兼プロデューサーの皆川暢二氏

3人とは主役兼プロデューサーの皆川氏と、監督・脚本の田中征爾氏、助演・アクション監督の磯崎義知氏の3人だ。
「最初に皆川くんから映画を作ろうという話があり、何と無くバディ映画がいいなというくらいで、特にこういう映画というのはなかったんです」と田中氏。

監督・脚本・編集の田中 征爾氏

「集まって相談したのが赤羽の喫煙OKな喫茶店で、というのがどこか影響しているのかな?」と磯崎氏。(笑)
とは言え、インディーズの低予算でどう作るという苦労があったはず。 「殺人の映画になっているんですが、アクションもちょっと加えてというのも、磯崎くんが武道の達人だし、僕とは18歳の時からの友人で、銭湯というのも彼(磯崎氏)のアイデアなんです。資金集めの皆川くんだったり、ロケーションもそれぞれの知り合いやお願いをして借りさせてもらったり。監督脚本編集は僕と決まっていたけれど、ま、あらゆる面で3人で作り上げたと言えますね」。

出演(松本役)兼アクションシーンの構成・演出の磯崎 義知氏

それに加えて登場する役者さんもいい味を出している。
「みなさん、本当によくやってくれたと感謝です。低予算とは言え、最低でもきちんと出演料をお支払いしようということを考えていたので、予算的には人件費を一番かけましたね」。皆川氏のプロデューサーとしての苦労が垣間見える。

それにつけても<メランコリック>と言うタイトルもこの映画を程よく体現しているように思うのだが。
「パイロット版の短編を撮り終わって、さてタイトルどうしようとなったところで、突然<メランコリック>は?となった。憂鬱という意味の向こうに音としての可愛さがあったり、憂鬱だけでそれほど絶望的ではない感じがぴったりかなと」。



設定の妙、タイトルの妙、出演者の妙、そして3人の妙。それらすべてが絶妙に絡み合って、インディーズの王道的展開でありながら、どこかヌーベルバーグ的完成度を持つ(と筆者が感じた)<メランコリック>。
東京国際映画祭で日本映画スプラッシュ部門監督賞の受賞を皮切りに、シカゴ、ウィーン、バンクーバー、ニューヨークなどなど海外の映画祭に次々と招待されているという事実。
「自分では、どうなのかと思っていたんですが、映画祭や実際の上映でのお客さんの反応を見て、やっと自信がついたという感じなんです」。
田中監督の言葉以上の反応が起こっている。実際に、アップリンクなどでは1日の上映回数が7回と最多で連日毎回満席という人気。それもほぼ口コミに近い広がりという、インディーズならではの浸透もまた<メランコリック>らしいのではないか。
この3人の手になる次回作は、どんな憂鬱を描き出すのかが楽しみになってきた。

(Text:Y.Nag)

「メランコリック」
▪️監督・脚本:田中征爾
▪️プロデューサー:皆川暢二
▪️キャスト:皆川暢二、磯崎義知、吉田芽吹、羽田真、矢田政伸ほか
▪️配給:アップリンク、神宮前プロデュース、One Goose
▪️公式サイト:https://www.uplink.co.jp/melancholic/

<プロフィール>
皆川暢二(みながわ・ようじ)
<<主演(鍋岡和彦役)・プロデューサー>>
1987年10月23日生まれ。神奈川県出身。
高校卒業後、体育教師を目指し大学に進学したものの、ひょんなきっかけで俳優の道を志す。 小劇場を中心に活動していたが日本に居辛さを感じた為、ワーキングホリデーを活用しカナダに一年滞在。 その予定だったが、滞在期限残り3ヶ月を切り、思いつきでカナダからアメリカ自転車縦断、アメリカ横断に挑戦。 様々なトラブルを経験しながらも、多くの人たちの助けもあり、約7,000kmを経てゴールであるニューヨークに 到着。 帰国後は映像作品を中心に俳優業を再開したが、自身の手で映画を作りたいという思いが強くなりOne Gooseを発起。2018年映画『メランコリック』を主演兼プロデューサーという形で制作。 俳優 / プロデューサー / 旅人という様々な草鞋を履きながら既存の映画・俳優の在り方とは違う、新たな道筋を作りたいとチャレンジ中。

田中征爾(たなか・せいじ)
<<監督・脚本・編集>>
1987 年8月21日生まれ。福岡県出身。
日本大学芸術学部演劇学科を中退後、映画を学ぶ為にアメリカはカリフォルニア州の大学に入学。 帰国後は舞台の演出及び、脚本執筆をしつつ、映像作品を製作。現在はベンチャーIT企業で動画制作を担当。第31 回東京国際映画祭日本映画スプラッシュ部門にて初長編監督作『メランコリック』が上映、監督賞を受賞。第21回ウディネファーイースト映画祭でも新人監督作品賞を受賞。

磯崎義知(いそざき・よしとも)
<<出演(松本役)・アクションシーンの構成・演出>>
1988年3月14日生まれ。鹿児島県出身。 幼少期より演じることに興味を持ち、クラーク記念国際高校パフォーマンスコースに入学。高校3年間で40本以上のイベントステージや演劇舞台公演を経験し、6本の映像作品に出演する。 高校卒業後はロンドンに演劇研修に行き、日本大学藝術学部演劇学科演技コースに入学。現在も映像を中心に俳優として活動する一方で、幼い 頃からの武道の経験を活かしTA directorとしても活動中。 準主役・アクションシーンの構成・演出も担当。



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