Editor’s Eye

2015.06.09

Editor’s Eye
s_258A5163_re

日常もアウトドアも、
より生活を豊かにするブランド”Monrõ[モンロ]”

Monrõ[モンロ]というブランドをご存知だろうか。
Helinoxとコラボレーションしたポータブルチェアなどが有名で、”アウトドアブランド”という位置付けで知られている。”アウトドア”に関するアイテムを揃えているという意味では正しいが、サバイバル的な要素やヘヴィーデューティを売りにする、一般的なアウトドアブランドとは一線を画していると思う。 “Urban Bohemian”というショルダーワードが表しているように、このブランドは都市生活者が街にいながら自由奔放な瞬間を過ごすためのブランドではないか、と。

彼らの視点は、ちょっと変わっているというか、本格的なアウトドアグッズに欠けていた視点=テキスタイルに特化した特徴がある。ボヘミアンの名の通り、エスニック感満開のオリジナルなテキスタイルは、ともすればストイックになりがちなアウトドアにカラフルでバイタルなシチュエーションを作り出してくれる。


関 昌邦 氏 [関美工堂 代表]
中野 ハジメ 氏 [KIKI. Co., [Monrõ] 代表]
森 由美 氏 [KIKI Co., [Monrõ] デザイナー]
吉田 豊 氏 [Monrõ アンバサダー]



s_258A5184 Monrõ アンバサダー 吉田 豊 氏

そんなボヘミアンな彼らが新しく展開を始めたのが、なんと漆器だ。なぜ?をMonrõのアンバサダーを務める吉田豊氏に聞いた。
「そもそも、アウトドアで使う食器と言ったら金属製かプラスティック製しかないというのが素朴な疑問でした。自然の中で使う食器だから、それにふさわしいナチュラルな素材のものはないかと探していて、漆器がいいのでは思い当たったんです。ただ漆器は高価だし、取り扱いが大変だと思っていた時に、“ノダテマグ”というのを作っている人がいるということを知って、早々に連絡を取ってみたんです」。

s_258A5171 関美工堂 関 昌邦 氏

その“ノダテマグ”を作っていたのが会津漆の製造元・関美工堂の関 昌邦氏。
「以前からMonrõのことは知っていて、その取り組みの姿勢に共感していたのですが、あるイベントで声をかけられて、自分たちがアウトドアで使える漆器という観点で作っていた“ノダテマグ”を発展させられるのではないか、と。漆器は木の型に漆を塗るものですから極めてナチュラル。しかも軽く熱が逃げにくいというアウトドアにぴったりの性質を持っている。かつては外使いとしても漆器は使われていたのにいつの間にか廃れてしまい、それを復活させたいという思いもありました」。

s_258A5250 Monrõ 代表 中野 ハジメ 氏

Monrõ代表のHajime氏は、
「美術品ではなく、普通に使うもの=日常からアウトドアまで連続していて、それでいてできるだけナチュラルな食器を探していたボクたちにとって、会津塗りは実に魅力的でした。伝統的な職人の技術と自分たちの感覚的なモノ作りの発想を融合させるいいチャンスだと」。

関氏の側にも、このコラボレーションには大きな魅力を感じていた部分がある。
「会津塗りは400年以上の伝統があるけれど、現在の生産量は最盛期の1/6まで減ってしまいました。そこをなんとかして地域を盛り上げたいと考えて“ノダテマグ”を始めましたが、次はどうしようというときにこの話がスタートしました。今回のアイテムで使っている漆の手法は“拭き漆”というもので、塗重ねる艶のある塗り方よりも日常使いが楽で、壊れた時の修理もしやすいです。漆というと朱か漆黒というイメージがありますが、漆には昔から多様な色数があります」。

s_258A5219
Monrõ デザイナー 森 由美 氏

Monrõデザイナーの森 由美氏にとってはそこも大きな魅力だった。
「そこで選んだのが“白”です。白といっても純白ではなく木肌とマッチしたミルクコーヒーのようなオーガニックな色目が気に入りました。そこに、Monrõらしさを加えることを考え、自分たちのブランドのテーマにマッチする“道・月・星”をイメージしてにデザインしたんです。伝統をリスペクトをしながら、Monrõのフィルターを通してアップデートするという手法。そうすることで、日本独自の伝統が、今の時代にフィットして日常の中で蘇るのではないか、と。大げさですけど、そんなふうに考えているんです」。

関氏も驚きを隠せなかったようだ。
「正直、やられた!というのがデザインを見た第一印象でした。白漆でなおかつ、ゴールドを不規則に使うというアイデア。それなら、というわけで、モチーフをプリントではなく蒔絵師の方に、実際に手書きをしてもらおうと。技術は伝統でも仕上がりは単なる和テイストではないものを作り上げたいという情熱ですかねw」。 s_258A5276

こうして出来上がった、アウトドアのための新しい漆器。こういったやり取りこそがコラボレーションと言えるもので、単にどこかに別注をかけるという安易なものではない完成度を目指す、お互いの丁々発止があるところが、素晴らしいと思う。
アウトドアのためというところからスタートはしているが、十分に日常でも使え、伝統的でもありつつモダン。
この漆器の上にどんな料理が似合うのかということを考えるのも楽しいのではないか。

(Text: Y.Nag)
(Photo: Yuuko Konagai)

Monrõ[モンロ]
www.monromian.com

TOKYOWISE SOCIAL TOKYOWISE SOCIAL