Editor’s Eye

2015.10.20

Editor’s Eye
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先日、映画『マイ・インターン』の試写会に伺ってきた。2人のアカデミー賞受賞者、ロバート・デ・ニーロとアン・ハサウェイの豪華共演が織り成す話題作だ。10月10日に公開となり、すでにご覧になった方もいるかと思うが、「これから観たい!」という方に見どころをぜひお伝えしたい。

『プラダを着た悪魔』のヒロインの“その後”を想起させる
今回もファッション業界が舞台

舞台はニューヨーク。ジュールズ(アン・ハサウェイ)は、飛ぶ鳥を落とす勢いで急成長中のファッションサイトを経営する敏腕女社長。多数の社員を束ねつつ、分単位でサクサクと仕事をこなしていく様はまさに、デキる女そのものだ。多忙な日々を送る彼女を温かく見守るのは、心優しい“主夫”の夫と幼稚園に通う娘。

仕事も家庭も充実した理想的な人生を手にした彼女に、周囲の誰も彼もが羨望のまなざしを向けるのは言うまでもない。だが、そんなある日、人生最大の試練が待ち受けていた。悩めるCEOのアシスタントにやってきたのは、会社の福祉事業として雇用することになった“シニア”インターンのベン(ロバート・デ・ニーロ)。

二転三転ありつつも、人生経験豊富な40歳年上の部下と次第に心を通わせていく。彼が彼女に贈った“最高の助言”によって、想像もしなかった変化が訪れる…と、こんな風にストーリーは展開していく。本作は、アン・ハサウェイが9年前に主演した映画『プラダを着た悪魔』の続編ではない。

だが、きらびやかであるけれど、その分、競争や移り変わりが激しいファッション業界で奮闘するヒロイン・ジュールズを見ていると、筆者の脳裏には、アンドレア(“プラダ~”で演じた役名)の姿がおのずと重なり合って、浮かんできた。

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仕事に打ち込みすぎると、家庭や恋愛に必ずと言っていいほど、“ヒビ”が入るー『マイ・インターン』を観て、まず胸が切なくなったのはこの部分だ。働く女性なら誰しも一度は経験あることだろうし、なくてもきっと共感してしまうと思う。夫婦間のヒビと言っても色々あるが、女がらみといえば、何のことだかご察しはつくだろう。夫の変化に気づいていながら、気づかないフリをして、毎日、淡々と目の前に山積みの仕事を片付けていく姿は実に泣けてくる。

でもそこで、「もうしんどいし、面倒くさいから別れちゃえ!」と躍起になるのではなく、大事な相手だからこそ、互いにとってどうすることがベストかを考え抜いて、きちんと話し合うのがジュールズという女性。ただでさえ多忙を極めているのに、さらに時間もパワーも根気も必要なことに果敢に向かっていくのだ。しかし、それだけでなく、仕事上には今後の彼女の人生を左右するような、もっと大きな試練があった。

THE INTERN

Pinterestから生まれた心震えるストーリー、
豪華ファッションも見どころ

ダブルパンチを食らい、悩みあぐねる中、優しく包み込むように支えているのが、ロバート・デ・ニーロ演じるベン。と言っても、「頑張れ」とか言葉にしていうのではない。あくまでも、部下の立場から、事の成りゆきをじっと見つめ、仕事でも家庭でも、彼女が本当に困った時、窮地に立たされた時、絶妙なタイミングでそっと手を差し伸べるのだ。そこに感じられるのは、仕事人としての彼女に対する絶大なリスペクトと、人生の先輩としての余裕、優しさ、そして愛情。

いっぱいいっぱいの状態で、ジュールズが涙した時にハンカチを差し出したベンの紳士ぷりといったら、もう。180度打って変わって、狂気の人を演じた彼の代表作『タクシー・ドライバー』へのオマージュが劇中に登場するが、そこに見るデ・ニーロは、頼りがいのある温和でスマートな理想の男そのもの。こんなに癒されるデ・ニーロに出逢ったのは初めてかもしれない。試写会の上映中、願わくは、ベンの胸に顔を埋めたくなったのは、きっと筆者だけではないだろう。

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本作は制作過程もユニークである。脚本・監督を務めたハリウッドのヒットメーカー、ナンシー・マイヤーズ監督は、Pinterestをインスピレーションソースとして使い、ジュールズをはじめとするキャラクター作りに活かしている。

上記は、試写会会場に展示されたビジュアルボードのひとつ。出社する際、颯爽と羽織るマーティン グラントのコートにクリスチャン・ディオールのシューズ、ヴィクトリア・ベッカムのドレス、はたまたバンド オブ アウトサイダーズのジャケットにセリーヌのバッグを合わせたコーディネートなど、シーンが変わるたびに登場する、見るも艶やかなジュールズのファッションも、ここから生まれたのだ。衣装を担当したのは、あの『セックス・アンド・ザ・シティ2』のスタッフ。ラグジュアリーからカジュアルまで、幅広いスタイリングが豪華一挙に披露されている。

「なるほど、あなたには関係ないと思ってるのね。あなたは、クローゼットからそのいかにも冴えないブルーのセーターを選んで、世間にアピールしてるんだものねぇ。自分は着る物なんて気にしない真面目な人間だって」

これは、映画『プラダを着た悪魔』の悪魔こと、鬼編集長ミランダ役のメリル・ストリープが、かつて劇中でハサウェイに放ったセリフだが、着こなしのセンス、外見の美しさはむろん、内面もグッと大人の女性に成長した今回の彼女(ジュールズ)のひたむきな姿は、今を頑張る女性の心をきっと打つ。忙しい時こそ、時間を作って、ぜひ劇場に足を運んでみて欲しい。癒やしのデ・ニーロも温かく迎えてくれるはずだから。 intrun_05

(Text&Photo(試写会) 岸由利子)

作品情報】 『マイ・インターン』
公開日:2015年10月10日(土)、新宿ピカデリー、丸の内ピカデリーほか全国ロードショー
監督・脚本:ナンシー・マイヤーズ
キャスト:ロバート・デ・ニーロ、アン・ハサウェイ
配給:ワーナー・ブラザース映画
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