Editor’s Eye

2016.12.27

Editor’s Eye

IMG_5866 Jeff Mills: The Planets at Amsterdam’s Concertgebouw.
「Robeco SummerNights 2016」(2016.8.30) © De Fotomeisjes

5.1chサラウンド音源で宇宙旅行体験!
Jeff Mills最新作『Planets』に迫る

もはやクラブDJという枠を超え、ヨーロッパを中心に世界の音楽・アートシーンを股にかけて活躍するエレクトロニックミュージック・アーティスト、ジェフ・ミルズ。今年3月に行われた東京フィルハーモニー交響楽団との共演や、テレビ朝日「題名のない音楽会」への出演で、日本でも従来のクラブファンのみならず、クラシック界などよりアカデミックなシーンでも話題となっている。そんな彼が来年、初めてオーケストラのために書き下ろしたという新作『Planets』をリリースする。

IMG_5774 Jeff Mills: The Planets at Amsterdam’s Concertgebouw.
「Robeco SummerNights 2016」(2016.8.30) © De Fotomeisjes
「惑星の物理的な特徴をサラウンドで細かく表現したい」という意図により、5.1chサラウンド音源で制作された本作。CDフォーマットと5.1chサラウンド音源を収録したBlu-rayの2フォーマットというプレミアムな形式にてリリース予定だ。そのアルバム先行試聴会が、東京・お台場の日本科学未来館、5.1chサラウンドシステム環境にて行われた。

同日、同じ会場で自身の作品を聴いていたミルズ氏に試聴会終了後、恐る恐る率直な感想を述べてみた。「とてもリラックスできると思いきや、途中でちょっと不安というか、緊張感みたいなものに襲われました」

「不安感を得るのは当然だね。というのは、この日本科学未来館の館長であり、宇宙飛行士である毛利衛氏と話をしたときに感じた、宇宙飛行に出ているときの不安な気持ちや、死と隣合わせの旅であること、美しい惑星も実際には人間には危険なところである、ということを音で表現しているわけだから」

なるほど、プラネタリウムでオーケストラ×エレクトロニックミュージックの音楽を聴く、なんてロマンチックでうっとりした気分になるかと思いきや、そわそわした気持ちになったのはミルズ氏の仕業だったのか。それにしても、「宇宙を音で表現する」ってそもそもどういうことなのだろう。

Jeff Mills; Robeco; Concertgebouw; 2016 Jeff Mills: The Planets at Amsterdam’s Concertgebouw.
「Robeco SummerNights 2016」(2016.8.30) © De Fotomeisjes
「『Planets』は100年前にリリースされたホルストの「惑星」を参考に、それらがギリシャ神話を基に制作されているのに対して、科学的・物質的根拠に基づいて制作している。個々の曲は各惑星の物理的な特徴に基づいて、想像力を働かせてね」

イギリスの作曲家グスターヴ・ホルストによる「惑星」は当時太陽系の惑星として認識されていた8つの天体のうち、地球を除いた7つの天体の曲名からなる組曲で、ミルズ氏の『Planets』はそれに地球、冥王星を加えた9の楽曲が収録されている。それぞれの惑星の特徴を、具体的にどう音で表現しているのだろうか。

「例えば大きく分けて、惑星は岩石でできているものとガスでできているものがある。岩石でできているものは表面を歩いたりできるから、その感覚を音にしたり、地球から遠い惑星である冥王星や海王星はミステリアスな雰囲気の音にしている。あるいは土星の回転は一番早いのでそれを音で表現したり、土星の輪がアナログレコードに似ているので、その溝のループを聞いているみたいな感じにしたりとか」

科学的根拠は各惑星の研究レポートなどである程度リサーチできるが、想像力の部分というのは、実にアーティストらしい発想によって創作されている。しかもこの“宇宙”と”音楽”という組み合わせが、ミルズ氏のエレクトロニックミュージック(それがオーケストラによって演奏されればなおさら)という媒介によってより説得力のあるものとして伝わってくる。

さらにミルズ氏は科学者が惑星において新しい発見や解釈を発表したら、曲を変更したり、追加していくという。

「例えば火星に生物が見つかったとしたら、生物がいる地球に似たような曲に作り変えるかもしれない。希望としては、その作業を誰かに引き継いでもらって、私の死後もずっと続けて欲しいんだ」

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