Editor’s Eye

2017.10.31

Editor’s Eye

「みっともない」けど愛しい滑稽な家族の姿

あまりにもピタッと役柄がハマっていたので、吉子のキャラが、岸井さんに重なる部分も多いのだろうと仮想していた。「吉子と私は全然違うと思います。吉子はこの先どうしたらいいんだろうって漠然と悩みながら生きている。広い海で丸太ひとつ抱えて浮かんでいて、何を取ってもかすっちゃう、みたいな。私はもっと頑固で、嫌なことがハッキリしているんですよね。選択肢がありすぎて悩んじゃう感じ。」



「吉子は『今はこの木があるから頼っておこう』みたいなところがあって。だから最初は掴みにくかったです。」実は奔放でちょっと生意気な従妹・千春の方がどちらかというと自分の性格には近いという岸井さん。映画の中で吉子と千春は数年ぶりに会う従妹同士の気まずさを巧みに演じ、自分にはない強さや潔さを持つ年下の千春に羨望を抱く吉子が、やんわりと距離を縮めていく。「私自身も花梨ちゃんにすごく興味が湧いて。2週間くらい一緒にいたのですが、少しずつ仲良くなって。映画と同じ、良い距離感でできたと思います。」

クライマックスは、幾度となく勃発する昭男・清二兄弟間の諍いが叔母の薫にまで飛び火し、声を荒らげて、互いへの不満をぶちまける宴会の席。身内のみとはいえ、親戚の「みっともなさ」が蔓延する台詞の連続にドン引き必須のシーンである。しかし、この台詞…この気まずさ…この微妙な空気。目を覆いたくなる「みっともなさ」が、「家族」や「親戚」を知る人誰にでも思い当たる部分があるはずなのだ。

「吉子は『こうじゃいけない』ってきっと思っていたけど、『きっとこうなっちゃうんだよ』というのを、『みんなそうなんだ』と思って安心して観てもらってもいいし、『やっぱりそれは許せない』と思ってもらってもいい。吉子が最後一人で一歩踏み出すというところに勇気をもらってほしいなと思います。」「一歩」がインドのガンジス川だというところに吉子の飛躍的な成長ぶりを感じるが、岸井さんはインドロケを楽しんでいた様子。



「あの後絶対吉子は変われる、って私がインドを体験して確信しました。日本では想像できないような場面にたくさん遭遇して、得るものがない方がおかしい、と思うくらいとにかくすごい国でした。逆に生命力をもらっちゃいまいたね。インド、すごく好きです。また行きたい!でもひとりでは無理かも(笑)。」

(Text:Nao Asakura)
(Photo:Masashi Nagao)


『おじいちゃん、死んじゃったって。』
11月4日(土)より公開
監督:森ガキ侑大
脚本:山崎佐保子
出演:岸井ゆきの、岩松了、美保純、岡山天音、水野美紀 他
協力:熊本県人吉市
2017年/日本/カラー/シネマスコ―プ/DCP/104分/PG-12
© 2017「おじいちゃん、死んじゃったって。」製作委員会
公式サイト:http://ojiichan-movie.com

映画初参加となる話題のシティポップバンド・YogeeNewWaves書き下ろしの主題歌「SAYONARAMARA」(アルバム『WAVES』 収録/発売中/Roman Label/BAYON PRODUCTION)からインスピレーションを受け、森ガキ監督自らが新たに撮りおろしたスペシャルショートムービーも公開された。こちらは”映画のその後の物語”のストーリーになっており、清々しい吉子の表情が魅力的だ。

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