Editor’s Eye

2017.11.29

Editor’s Eye

演じながら頭に流れてきたメロディーが映画の音楽に

ー今回主演されていると同時に音楽も手がけられていますね。とても素敵で、日本にもたくさんのファンがいるかと思います。前作でも音楽を手がけられていますが、何か制作する上で工夫したことや難しかったことはありますか?

前作『リアリティのダンス』では私はアナキストの小さな役だったので、音楽に全エネルギーを注ぐことができました。今回は主役だったということもあり、撮影のときに、自分が演じながら頭にメロディーが流れていました。現場で音楽の全容が出来上がっていて、スタジオに入るころには明らかな曲があり、それを収録していくという作業でしたね。一番難しかったのは、自分が主演を務める映画で自分が制作した曲が流れるということは、その曲が良くなかったら演技にも響いてくるということです。そういうリスクがある中で、演じながら音楽が乖離しないように、感情に耳を傾けて作曲しました。

(C) 2016 SATORI FILMS, LE SOLEIL FILMS Y LE PACTE
photo:(C)Pascale Montandon-Jodorowsky

ー本作のサウンドトラック(パリのスタジオでミシェル・ルグランが使っていたピアノで作曲)は、バイオリン、ピアノ、フルート、オーボエの4つの楽器を中心とした楽曲や、またエリック・サティ、ベートーヴェン、ストラヴィンスキーなどの音楽家が好きだというお父様の趣味に合わせた作曲になったかと思います。ADANOWSKYとして活動している音楽と、ジャンルはかなり異なると思いますが、そのあたりはいかがでしょうか。

自分の人生の中で、今まで例えば演技や作詞・作曲を学んだことも、リアリティのダンスで携わるまで映画音楽を制作したことはなかったけれど、全部やりたいことだったので、独学で実践してきました。一番の罠というのは、何かを自分で作り出したときに、それが周りの人にどう思われるかを気にしたり、他のアーティストと比べて価値がないのでは、と恐れること。勇敢で向う見ずでさえあれば、ただ目的に向かって音楽を作り出していくことができる。決してADANOWSKYの音楽だけに固執しているわけではありません。

ーこのシリーズは本作が2作目で、全部で5部作にされるとのこと。先ほどのお話ではその先の脚本もまだまだ控えているとのことですが、新作の到着を待つ私たちファンができることは何でしょうか。

頭がおかしいくらい、ホドロフスキー監督の映画が好きだという大金持ちのプロデューサーさんを探してください(笑)。

マジック・リアリズムが息子に与えた影響とは

ー本作はマジック・リアリズムを探求し、観た人が真の自分を発見する手がかりになる、“生きることへ”の招待となる作品だと謳われています。アダンさんは主演・音楽も担当されましたが、真の自分を発見することができましたか?

著名アーティストを親に持ったり、父親があまりに偉大過ぎると、「親のようになるにはどうすればいいか」と常に脅迫観念に苛まれ、悲惨な人生を送る人も多くいます。私の場合は、この作品で実際に父親という人物になることができたので、幻想というか、自分につきまとっていた疑念がきれいさっぱり消えました。
撮影終了後、頭を全部剃り、アタカマ砂漠の砂の中に自分の髪の毛を埋めて、聖なる湖で沐浴して生まれ変わることができました。私は、これで本物のアダン・ホドロフスキーになれたのです。



ー今回初来日ですが、日本の印象はどうですか? 

みんな時間に正確ですね。食事は素晴らしいし。唯一まだ見つかっていないのは、深い精神性、スピリチュアリティのようなものです。周りに聞くと、昔の日本とは違う(のでそのようなものはもうない)と言われました。伝統的な日本の精神性を探したいのですが、おそらく東京でなくて、地方に行かなければならないのかな、と思っています。師となる人物ぜひ見つけたい。

ー禅とか、そういったことですか?

そうですね。それが死んでしまったとは思っていないので、どこかで必ず見つかると信じています。

ー東京にも禅スピリットはありますよ。ぜひ探してみてください。

(Text:Nao Asakura)
(Photo:Yuuko Konagai)
<映画情報>
『エンドレス・ポエトリー』
監督・脚本:アレハンドロ・ホドロフスキー
撮影監督:クリストファー・ドイル
出演:アダン・ホドロフスキー、パメラ・フローレンス、ブロンティス・ホドロフスキー 他
音楽:アダン・ホドロフスキー
配給・宣伝:アップリンク
2017年11月18日(土) 新宿シネマ カリテ、ヒューマントラストシネマ有楽町、アップリンク渋谷 ほか全国順次公開
URL:http://www.uplink.co.jp/endless/

Adan Jodorowsky/ アダン・ホドロフスキー
1979年、フランス生まれ。ホドロフスキーの末の息子。『サンタ・サングレ 聖なる血』(1989年)で映画初出演。その後多くの短編を監督する一方で、ジャック・バラティエ監督の『Rien, voilà l’ordre』(2003年)、ジュリー・デルピー監督の『パリ、恋人たちの2日間』(2007年)など、様々な作品に出演。また、ミュージシャン「Adanowsky」としても活躍しており、『リアリティのダンス』(2013年)や本作のオリジナル・サウンドトラックを作曲している。

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