映画と音楽のオイシイ関係

2018.05.17

Tokyo Swingin’ Life



エンディングで再び流れる『コニー・アイランド・ウォッシュボード』は、私の耳にはもう完全に皮肉にしか聴こえない。ミルス・ブラザーズお得意のファニーなカズー(くわえてハミングする感じで声をだすと、上に張られたセロファンが振動して歪んだ音がでる簡易的な楽器)のサウンドも、もはや嘲笑のようだ。

言うまでもなく、映像と音楽は切っても切り離せない密接な関係にある。何気ないシーンに音楽をつけるだけで情緒が生まれ、また物語のハイライトやクライマックスをより一層盛り立てるのに大きな役割を果たす。しかしこの映画においては逆の効果、つまりストーリーや映像自体が音楽の聴こえさせ方を変えてしまう可能性を実感した。それは古いジャズをこよなく愛するウディ・アレンならではの、音楽へのこだわりや選曲の妙が成せる技なのかもしれない。

昨年秋にハリウッドの大物プロデューサー、ハービー・ワインスタインによるセクハラ疑惑が次々と暴露されて以来、「Me, Too」と声をあげる女優や関係者が増えている。ここ数か月でワインスタインだけでなく、著名俳優や他の映画関係者、政治家の名前もあがるようになった。ウディ・アレンもその騒動の渦中の一人で、実の息子に「小児性愛」を告発され、養女の一人からは性的虐待を受けていたと訴えられている。ここでその真偽のほどを議論するつもりはないが、80歳を超えてもなお意欲的に人の心の闇と葛藤を描き続けるウディ・アレンの「変態的」趣向は、選曲する音楽の中にも見てとることができるようで興味深い。

(Text:akiko)

photo by Jessica Miglio (C) 2017 GRAVIER PRODUCTIONS, INC.


『女と男の観覧車』
6月23日(土)、丸の内ピカデリー、新宿ピカデリーほか全国公開


▪️配給:ロングライド
▪️脚本・監督:ウディ・アレン
▪️出演:ケイト・ウィンスレット、ジャスティン・ティンバーレイク、ジム・ベルーシ、ジュノー・テンプル
2017年/アメリカ/英語/101分/アメリカンビスタ/カラー/5.1ch/原題:Wonder Wheel/日本語字幕:吉田由紀子
▪️提供:バップ、ロングライド 配給:ロングライド
▪️公式サイト:www.longride.jp/kanransya-movie


akiko

ジャズシンガー
2001年、名門ジャズレーベル「ヴァーヴ」初の日本人女性シンガーとしてユニバーサル・ミュージックよりデビュー。既存のジャズの枠に捕われない幅広い音楽活動で人気を博し、現在までに22枚のアルバムを発表。これまでに「ジャズ・ディスク大賞」や「Billboard Japan Music Award」を始め、数々のミュージックアワードを受賞。2003年にはエスティー・ローダーより日本人女性に送られる美の賞「ディファイニング・ビューティー・アワード」を授与される。

アルバムプロデュースやコンピレーションCDの選曲、執筆、アパレル・ブランドとのコラボレーションなど多方面で活躍。また、ボイス・ワークショップの開催や、アーユルヴェーダやヨガのワークショップ、国内外でのリトリートツアーなども不定期に開催している。
デビュー15周年となる2016年にはアーユルヴェーダのコンセプトを元に5種類に分けた5枚組ベストアルバム「Elemental Harmony」をリリース。 音楽性やファッション性のみならず、そのライフ・スタイルにも多くの支持が集まる。
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