映画と音楽のオイシイ関係

2018.07.xx

Tokyo Swingin’ Life

©2017 Broad Green Pictures LLC 私事で申し訳ないが今年3月初めてキューバを訪れた。キューバが他の国と大きく違うところ、それは自然の景色や建物や街並みより何より、この国が社会主義国であるところであるように思う。しかも他のどの社会主義国とも違い、「社会主義」の本来の思想が、概ねうまく行っている点にある。
その国民性というか人間性が、音楽に現れているように思うのだ。貧しい国には変わりないが、みんな心から音楽を愛し、共有したいという思いに溢れている。ハバナの街角のレストランでも、音楽祭が行われていたサンティアゴ・デ・クーバのクラブでも、レストランやクラブに入るお金のない地元民たちが食い入るように外から中の演奏風景を覗いていたり、感情に任せて踊りだす光景をたくさん目にした。それに対して誰が文句を言うわけでもなく、皆当然のこととして受け入れている。音楽は彼らの人生と密接に関わっていて、食べる物と同じくらい彼らの生活にとって必要なもの。音楽がまるで人生そのもののようだ。そんなキューバ人たちの姿をみるにつけ、日本人である私たちは、いや私は、それほどまでに音楽と深くつながっているだろうか、愛せているだろうか、と自責の念に駆られるのを否めない。

実は私はドキュメンタリー映画があまり得意ではない。ドキュメンタリーの面白さは語られる人物や出来事に対してどれだけ興味を持っているかにもよるだろうが、例え興味深いミュージシャンのドキュメンタリーだったとしても、何故だか冷めた目で見てしまうことが少なくない。
そんな私が初めて泣いたドキュメンタリーがこの映画だ。 それはキューバの自然や街並みの美しい色合いを切り取った映像はもちろんのこと、生死という人間にとっての大きなテーマが彼らの音楽に反映されているからに他ならない。音楽ドキュメンタリーなら当たり前、と思うだろうが、こんなにも音楽の力を感じるドキュメンタリーはそう多くないはずだ。

人は聴覚から得る情報の何倍もの情報を視覚から得るという。けれど、その両方が重なった時、その相乗効果は計り知れない。

©2017 Broad Green Pictures LLC キューバ音楽に興味がなかった人でも、この映画をみればきっとキューバに行きたくなるはずだ。

(Text:akiko)


『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ★アディオス』
7/20(金)TOHO シネマズ シャンテほか全国順次ロードショー!

▪️製作総指揮:ヴィム・ヴェンダース他
▪️監督:ルーシー・ウォーカー
▪️出演:オマーラ・ポルトゥオンド(ヴォーカル)/イブライム・フェレール(ヴォーカル)他
▪️配給:ギャガGAGA ★(2017 年 イギリス 110 分)
▪️公式サイト:http://gaga.ne.jp/buenavista-adios/


akiko

ジャズシンガー
2001年、名門ジャズレーベル「ヴァーヴ」初の日本人女性シンガーとしてユニバーサル・ミュージックよりデビュー。既存のジャズの枠に捕われない幅広い音楽活動で人気を博し、現在までに22枚のアルバムを発表。これまでに「ジャズ・ディスク大賞」や「Billboard Japan Music Award」を始め、数々のミュージックアワードを受賞。2003年にはエスティー・ローダーより日本人女性に送られる美の賞「ディファイニング・ビューティー・アワード」を授与される。

アルバムプロデュースやコンピレーションCDの選曲、執筆、アパレル・ブランドとのコラボレーションなど多方面で活躍。また、ボイス・ワークショップの開催や、アーユルヴェーダやヨガのワークショップ、国内外でのリトリートツアーなども不定期に開催している。
デビュー15周年となる2016年にはアーユルヴェーダのコンセプトを元に5種類に分けた5枚組ベストアルバム「Elemental Harmony」をリリース。 音楽性やファッション性のみならず、そのライフ・スタイルにも多くの支持が集まる。
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