ARTIST SELF-PRAISE 作家自画自賛

2016.12.16

ARTIST

 葛藤もあった。悩んだ時期もあった

柳川荒士4 ジョン ローレンス サリバンというブランドには、“エッジィ”という言葉がよく似合う。 代表的なスタイルのひとつに、身体にぴったりと沿うクールなブリティッシュスーツが想起されるが、これについて荒士氏はこう語る。

「テーラードといういわゆる“硬い服”が日本の市場に合わなくなってきた時、物づくりのベクトルを少し柔らかい方に向けた方がいいのか、間口を広げるためには、年齢層の幅が広く、体型を選ばない服も作った方がいいのかー。葛藤した時期が2~3年ほど続きました。そんな自分がすごく辛かったですね」
悩みあぐねた末、どれもやらなかったという。
「これからも手探りで遠回りすることがあるかもしれないけど、ここまでやってきたなら、このままやり抜いた方がいいと思うし、常に新しいチャレンジができて、スタッフみんなが楽しめるブランドを継続していく方が面白いなと。今思うのは、うちしか作れない服、もっともっとうちらしい強い服、とてつもないエネルギーをファッションに注ぎ込んでいる20~30代の日本だけでなく海外の人たちが“欲しい”と思う服を作っていくことが、僕たちの使命なんじゃないかということです」

柳川荒士5

 朝起きて3秒後でも、洋服のことがずっと頭にある

「洋服が大好き。欲しい洋服を買うために、どれほどお金を使ってきたか分からないくらい。これといった趣味もなく、洋服以外に欲しいものも特にない」という。
「今って、自分のチャレンジしたい生地で、チャレンジしたいシルエットを作れるわけだから、とても幸せなことです。他のデザイナーがどうなのか分からないけど、“オン&オフ”のスイッチって、僕はほとんどないんです。酒を飲んでいようが、家で寝て起きて3秒後だろうが、服のことがずっと頭にあって。“あ、コレ面白い”とか、“昨日寝る前に考えてたアレ、やっぱりいいな”とか、もうそれが自分です」

例えば、映画を観ている時も、次のアイデアを探していたり、勝手に、本能的にアンテナが洋服に向かうのだそう。
「“そんなにずっと毎日考えててつらくないの?”とか言われても、それが僕にとっては普通だし、逆に、“”洋服のことを考えている瞬間が見受けられないんだけど、いつ考えてるの?”っていう人も。仕事してないように見えるみたいですね(笑)」

柳川荒士6

今、日本でブランドを始めた時と同じフラットな感覚に戻れている

現在は、17/18AWシーズンに向けて準備を進めている。 「ショー(パリコレ)をお休みして2年くらいになりますが、チーム的にも、物作りの感覚的にもいい感じになってきたし、そろそろ海外でも発表しようかなと。今回は、ランウェイをロンドンでやってみようと決めました。知名度があるかどうかなど、二次的な要素を越えたところで、洋服をちゃんと見て、評価してくれる寛大さがあるというか、ロンドンは、よりオープンで自分に合う気がしているんです。ここ1年くらいで、ロンドン、フランス、ドイツ、イタリアなどの雑誌でエディトリアルにきっちり使ってもらえたり、ロンドンのBROWNSなど、少しずついいお店もつき始めていて、“あ、ちゃんと世界でファッションをやってるんだな”という実感が湧き始めています。だからこそ、タイミングを逃さずに、アクションを起こせればいいなと」

「今、日本でブランドを始めた時と同じくらいフラットな感覚に戻れています。試行錯誤や失敗も多々あったけれど、またひとつ成長して、ここに戻ってきたのかもしれません。いい洋服をちゃんと作っていきたいという当初の気持ちは絶対的に変わらない。でも、よりダイナミックに、大胆になってきたのかもしれません」
 原点回帰した彼は、次にどんなクリエイションを魅せてくれるのだろうか。“モード”という名のリングで闘う至高のファイター・柳川荒士から、ますます目が離せない。

柳川荒士
2003年「JOHN LAWRENCE SULLIVAN」を設立し、テーラードを軸としたメンズウエアを展開。強さとエレガントさを持ち合わせた男性像を基本的コンセプトとしている。また、2010年SSシーズンよりレディースラインも展開しており、メンズテーラードの技術を駆使したシャープな印象が特徴的である。

2003年「JOHN LAWRENCE SULLIVAN」設立
2007年 SS – 2010年AW 東京コレクション参加
2008年 旗艦店を中目黒にオープン
2010年 S/SよりWOMEN’S ラインスタート
2011年 A/Wよりパリメンズコレクション参加

(Text:岸 由利子
(Photo: Yuuko Konagai)

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