ARTIST SELF-PRAISE 作家自画自賛

2017.09.07

ARTIST

―超訳と銘打っていますが、具体的にはどういったものなのでしょうか?

超訳の度合いは詩によって様々なのですが、一例までに19世紀イギリスの女流詩人クリスティーナ・ロセッティの「いくつかの答え」をあげてみたいと思います。



重いものは 
海の砂と悲しみ

短いものは 
今日と明日

はかないものは 
花と若さ

深いものは 
この海原と真実

あなたと出会いわたしは知った


染まるものは
空と体

見えないものは
夜の虹と嘘

やさしいものは
春風と面影

続くものは
水平線と祈り

あなたと離れてわたしは知った

『いくつかの答え』
_クリスティーナ・ロセッティ


What are heavy? sea-sand and sorrow.
What are brief? today and tomorrow.
What are frail? spring blossoms and youth.
What are deep? the ocean and truth.

What are heavy?
_Christina Georgina Rossetti

実は原文に対応しているのは前半のみで、後半の「染まるものは空と体」以降は前半部分のロセッティへのアンサー(返歌)として、私の言葉を新たに重ねています。教科書でおなじみの和歌や漢詩なども原文との比較がしやすいかもしれませんね。



あなたは わたしの熱い肌
触れもしないで 世界を語る
ほんとの世界は ここにあるのに

(やは肌の あつき血汐にふれも見で さびしからずや道を説く君)


春はみじかく 浮世は夢よ
あなたの腕を たぐり寄せ
手のひらのうえ はずむ私の胸ふたつ

(春みじかし 何に不滅の命ぞと ちからある乳を手にさぐらせぬ)


黒くてきれいな わたしの髪も
あなたがふれた 心臓も
みだれ みだれて 朝になる

(くろ髪の 千すじの髪のみだれ髪 かつおもひみだれおもいみだるる)



恋する女の くちびるに
つやつやグロス 毒入りの
滑らせたいの わかるでしょ

(人の子の 恋をもとむる唇に 毒ある蜜をわれぬらむ願い)

『みだれ髪』
_与謝野晶子

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