ARTIST SELF-PRAISE 作家自画自賛

2017.10.27

ARTIST

プロの落語家になってみて


落語家 春風亭一之輔 【アーティスト自身による 自画自賛 Vol.22】

—落語で食べていけるようになったのは、いつ頃ですか?
前座の頃もね、なんとなくやっていたよ。先輩と一緒にいるとご飯食べさせてくれるんですよ。ご飯も、電車も切符買ってくれたり。収入が少なかったけど、なんか生きていけてた。
二つ目になって収入が減ってきたね。前座は労働力として頻繁に仕事があるんだけど、二つ目は、自分で頑張ってね、ってなるから、その時は大変でしたね。
結婚したけど最初は共働きで、ここ5年くらいですかね、カミさんが仕事辞めたのは。

—息子さんに、落語やってほしいとかは思いますか?
いやいや〜…

—ご自由にどうぞって?
いや、辞めたほうがいいでしょって。(一同笑)
考え直したほうがいいね。災害とかすぐに仕事なくなっちゃうから、それを考えるとね…。血を引くってもんじゃないし。個人のその時の努力しかないんですよ。面白味とか、持っているものを子供が継ぐってことはないと思うんですよね。お客様が求めるのは、笑いが主だから。個人のパーソナリティの問題。

—どんな人が向いているんですかね?
どんな人が向いてんのかな〜わかんねえな〜。
向いているとかじゃないけど、いろんなことに興味持っている人がいいと思う。
いろんなことやってみたいとか、見てみたいってほうが、落語に生きてくると思いますね。こういう人がいてもいいんじゃないかな、ってのが落語に生きてくる。
あと…八割五分は、持って生まれたものだと思いますね。声とか、節回しとか、リズム感とか。楽器みたいなもんだから、落語って。
だけど、そういうの抜きにして、圧倒的に上手い人もいますしね。コツコツやって面白い人いますし。あとは、面白い顔しているほうが得ですよね。

—自己プロデュースとかはしてます?
そういうのは、ないですね。言われたことやってるだけ。
頓着ないんですよ。服もカミさんが通販で買ったもの。もらった帽子をかぶってるだけ。

目標なんてない、一日一回喋れれば良い


落語家 春風亭一之輔 【アーティスト自身による 自画自賛 Vol.22】

—最近海外とかも公演されているじゃないですか、日本語で話されるんですよね。
私は日本語を話して、あとで字幕が出てきますね。落語に詳しいドイツの方がいて、ワンテンスごとに英語に訳していくんです。枕は、「落語ってこういうもんですよ」っていうものを決めておいて。

—みなさん笑っている部分は?
日本人と同じところで笑ってますよ。親子ネタとか普遍的なものだから。ただ言葉遊びみたいな日本人にはわからない話は選ばない。ネタ選びは大事ですね。

—笑いのテンション、文化の違いは?
落語に関してはなかったなあ…。一人で喋る芸に対して、政治を切るとか、風刺とかは言わないんですか?って聞かれましたけど、一人で座って喋るって芸は日本にしかないですよね。
ブラックユーモアとか風刺とかある海外に比べると、落語はほのぼのしてますよね。日常生活というか、親子ってこういうもんですね、夫婦ってこういうもんですね、とかね。

—古典落語で新しい笑いを生むことはありますか?
そういうのは、演者の人間性が出る感じかな。どれを主人公にするか、演じる人次第だからね。自分が出るんですよね。人によって違いますね。

—もし、(場所を)どこでもやっていいよって言われたら、どこかやりたいところはありますか?
う〜ん、落語はどこでもできそうで、どこでもできないんですよね。
外は暑いからやだな〜。お客様は近いほうがいいですね。
ひなびた寺とか…10人くらいで村の人集めて。クーラーが必要のない、寺。(笑)

—目標は?
目標…ないんですよねえ。あるわけないじゃないですか(笑)。
つつがなく、暮らすこと。あと死ぬときは、老衰もしくは、一瞬で死ぬ方法を探す。毎日、喋られればそれでいいですよ。 子供に仕送りもらって、年金もらって、寄席やってね、一回3000円くらいかな。
終わったら16時半くらいから飲んで、寝る。そんで、だんだん死んでいく。

—それ自体が、落語の世界みたいですね。
落語は平和の世界ですよ。その生活するためには、世界が平和でなくちゃいけないですからね。だから、世界平和を目指して。

会話中、朗らかに笑っていた一之輔さん。素人の下手な返しにも付き合い、必ずツッコンでくれる優しさと、ご自分に対しては厳しい言葉が返ってきた。その姿勢を見習いつつ…とりあえず、落語は世界を救うのだ。

春風亭一之輔 しゅんぷうてい・いちのすけ
芸歴
2001(平成13)年3月 日本大学芸術学部卒業
2001(平成13)年5月春風亭一朝に入門
2001(平成13)年7月前座となる 前座名「朝左久」
2004(平成16)年11月二ツ目昇進 「一之輔」と改名
2012(平成24)年3月真打昇進
HP:http://www.ichinosuke-en.com/
Twitter:https://twitter.com/ichinosuke111

<今後の主なスケジュール>
10月中席 浅草演芸ホール <昼の部>13:00ごろ上り
10月中席 上野鈴本演芸場<昼の部>14:30ごろ上り
11月21~29日 上野鈴本演芸場<夜の部>(トリ!)
詳しくはこちら:http://www.ichinosuke-en.com/

(Text:Umeko)
(Photo:Masashi Nagao)

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