Jazz Singer akiko の Tokyo Swingin’ Life

2018.05.17

Tokyo Swingin’ Life
photo by Jessica Miglio (C) 2017 GRAVIER PRODUCTIONS, INC.

女と男の観覧車 Wonder Wheel

ハリウッドの奇才、ウディ・アレン。好き嫌いが分かれる監督でもある。その変人ぶりは彼が長年連れ添ったミア・ファローの養女と結婚したというエピソードはもとより、彼の多くの作品からも明らかだ。 と、書くといかにも私も「アンチ・ウディ・アレン」であるように聞こえるかもしれないが、 好きな作品は実はたくさんある。彼自身もクラリネットを演奏するほどの大のジャズ好きであり、1920〜1950年代に時代設定した作品など、その趣味やセンスに共感することも多い。

そんなウディの最新作『女と男の観覧車』(原題 / Wonder Wheel)における、映画と音楽の絶妙な関係性を見ていきたいと思う。
舞台は、かつてビーチと遊園地で賑わいを見せた1950年代のコニー・アイランド。まず冒頭で流れるのがミルス・ブラザーズの『コニー・アイランド・ウォッシュボード』という曲だ。ただのスウィングジャズでなく、黒人DOO WOOPの草わけ、ミルス・ブラザーズであるというところがまたニクい、というかなんともウディ・アレンらしい。物語の舞台である50’sのファッションや、遊園地の賑やかで楽しげな雰囲気ともあっている。これからどんなワクワクが待っているのだろう、というようなオープニングだ。



遊園地のレストランで働くジニー(ケイト・ウィンスレット)は、夫のハンプティ(ジム・ベルーシ)と自身の連れ子と観覧車の見える部屋で暮らしている。実は彼女は夫に隠れて、ビーチでライフガードのアルバイトをしているミッキー(ジャスティン・ティンバーレイク)と付き合っている。平凡な毎日に失望していたジニーは、彼との未来を夢見るが、ギャングと駆け落ちして音信不通になっていた夫の娘が現れ、事態は思わぬ方向に向かい、全てが狂い始めていく。
物語の途中にも古いジャズ・ナンバーの数々が流れ、時代感がとてもよく統一されている。そんな中で何度となくこの『コニー・アイランド・ウォッシュボード』が挿入される。はじめはキュートで楽しげだったこの曲が、なんだか少し違ったように聴こえてくるのは私だけだろうか。



ウディ・アレンの作品を大別すると、人の心の葛藤や闇を「面白おかしくコミカルに描いたもの」と「ロマンティックでドラマティックに描いたもの」とに分けられるように思う。前者には、皮肉っぽくて神経症じみたニューヨーカーである本人自身も出演していることが多い。いずれにしても観終わった後は「爽快感」ではなく「やるせなさ」が残るのだが、どちらかというと今回は後者のほうだ。
抜け出したくてもどうにもならない現実や圧倒的な絶望感を前に、それでも続いていく人生とはなんなのだろう、と答えの出ないテーマを突きつけられる。
Wonder Wheel(観覧車)はまるで、どこにもたどり着けず同じ場所をくるくる回って繰り返すだけの、そんなもどかしさの象徴のようだ。

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