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2016.06.02

vol.10 TOKYO Go Out !
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東京は奇怪な場所や店で溢れている。
なぜこんなところに、こんなものを作るのか。理屈や常識ではとうてい想像も及ばないオリジンな奇妙さを醸し出す世界に、怖いモノ見たさでトライできるのも東京ならではの楽しみのひとつだ。ある種のマニアも存在するこうした“B級スポット”“珍スポット”を、独自のユーモアと軽妙さで紹介しているブログ「東京別視点ガイド」をご存知だろうか。2011年の立ち上げ以来、現在では月間約70万PV、UU数約20万人を記録し、2015年には「死ぬまでに東京でやりたい50のこと」(青月社)で書籍化もされる人気ぶりだ。同サイトの運営者であり、今年からガイドツアーなどの観光事業も手掛ける松澤茂信さん(33歳)。これまで、みうらじゅんや都築響一らを筆頭とする、サブカルの先駆者たちもこよなく愛してきた珍スポットを、松澤さんはどのような“別視点”で捉え、これほどの支持を得ているのか。また、これまで松澤さんが足を運んだ800件を超える取材先のなかから、東京のBEST珍スポットを教えてもらうべく、日本橋にある事務所を訪ねてみた。

珍スポットを生み出すのは
行き過ぎた情熱と愛情


古くは問屋街だった日本橋堀留町に佇む、築50年の建物を利用した別視点事務所は、エントランスの滑りの悪い引き戸を開けた瞬間からキテる。来客者用に色とりどりの便サン(便所サンダル)が並べられ、にじり口のあるトタン造りの奇妙なボックスが佇む。聞くとこれは「代表取締役収納ハウス」という松澤さんのお住まいで、世の中で一番落ち着くマンガ喫茶の空間をイメージしたのだとか。2階には珍スポット関係の蔵書が陳列された「別視点文庫」、3階には松澤さんがコレクションするアートや謎のグッズが並べられたラウンジがあり、月に2、3回会員向けサロンとしても開放されているという。
ヤバい気配と何だか懐かしさすら感じるサブカル空間で、いざ松澤さんにお話しを伺った。

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──ブログ「別視点ガイド」を始めたきっかけは?

大学卒業して3年間ほど、友人と高円寺でカフェを共同経営していましたが、これとは別に何か変わった店がやりたいと思って僕は抜けました。新しい店のリサーチがてら、変わったお店を見てみようと思ったのが始まりです。実際に色々なお店に行ってみると、自分的にヒットするお店の店主に50~60代の方が多く、僕の年齢でお店をやっても手も足も出ないなと思いました。それで、今は紹介する方に専念しようと考え、ブログ感覚でサイトを立ち上げました。

──東京版に加え、大阪版、世界版なども展開していますが、最初は東京だけで始めたんですか?

都内ですね。僕は江戸川の出身で、下町にはやっぱり濃いおじさんが多く、振り返ってみると、子供の頃からそういう環境にはなじんでいたのかもしれません。新小岩って昔はフィリピンパブとかがすごく多くて、以前はそれが普通だと思っていたんですけど、東京を色々巡ってみると、これが普通ってワケじゃないなと(笑)。最初は古本屋などであらゆる街のガイド本を買ってきて調べるんですが、ちょっと良さそうな場所に限って2、3行の紹介文でさらっと流されてたりするんですよ。そういう気になる場所を全部GoogleMapでピンを打っておいて、片っ端から取材に行っています。

──取材先は全件掲載しているんでしょうか?

基本的なルールとして悪口は書かないようにしているんです。だから、実際に行ってみてどうしても悪口にしかならないところは、最終的には書きません。変わったお店でも店主や対象物に愛がなかったり、殺伐としていたりするお店が時々あって、そういうところは書いてもしょうがないと思うんです。珍スポットとひとくくりにいっても色々ジャンルがあって、アングラ系のところが好きな人もいますが、僕は結構気持ちが引きずられちゃうので、あまり好きじゃないんです。僕が好きなところは、サービス精神過剰過ぎて違う方向のベクトルにズレているだけで、店主は陽気な方が多いんですよ。

──場所や物というよりは、人にフォーカスを当てているのが松澤さん流ですね。

それはやっているなかで、自分でも気づかされました。僕は店主の精神が具現化したものが珍スポットだと思うんです。商業化されたお店だとどうしても合理性が入ってきてしまう部分があって、それって一般化されて同じ様になりがちなんです。でも、珍スポットの店主たちはそういう合理性とは全く関係なく動いているので、心がありありと形になっているんですよね。そういう空間はなかなか少なくて、そこにいるだけで堪らないんですよね。

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