vol.11_title_tokushu_ROC

2016.08.02

vol.11 TOKYO SYSTEM
top_tw20160726

「田舎モンほど、毎日戦闘態勢なんだよ」
ファッションセンスについて談議を始めて早々、物議を醸せと言わんばかりに言葉が放たれた。その出所はもちろん、東京出身者である。挑発的な一言が火種となり、東京vs地方の戦い、試合開始のゴングが鳴った。

– Round 1 –
東京出身者は、本当にオシャレでセンスがいいのか?


地方出身(以下、地方):だいたい、地方出身者を田舎モンと揶揄した表現をとるところに品位を感じないんですけど。海や山のように寛大なる心で許してあげますが、ひとつ事実として言わせていただくと、私がファッションの学生時代、一番ダサかったのは東京出身の人でした。無印良品などに代表されるような量産系の服で、しかも毎日それ。

東京出身(以下、東京):勉学に勤しむという明確な目的で学校に来ていたんじゃない?

地方:お得意の柔軟な発想で、最もらしい理由をつけるの、やめていただけますか(笑)。これが地方出身者だったら、やっぱりなって目で見ますよね。

東京:もちろん(笑)。地方はダサく、東京はセンスが良いと決めつけている訳ではないし、センスが良いなと思う人は東京の人ばかりという事実もないけど、東京出身者は自分たちに洗練されている血が流れているとは思っているだろうね。だって、生まれながらにして東京にいる訳だから、決定的に、肌で感じてきた情報の量も質も違う。

– 判定 –

東京 10 対 8 地方


レフェリーが注意喚起の対象とする、東京が常用する “田舎モン” という表現については、乱用を避けるべきである。この戦いでは、反則/退場の危険をはらんでいるからだ。地方は、実績の東京にビビりながらも事実情報のジャブを打ったが、余裕でかわした東京が、生まれながらの環境の違いという有効打を一撃。地方は踏ん張るがダメージは大きく、圧倒的な東京の優勢である。
ここで注意したいのは、「オシャレ」と「センスが良い」は、似ているようで別物だということだ。服装や髪型など見た目に気を配る「オシャレ」とは、捉えようには、気を配りさえしていれば「オシャレ」なのである。東京には様々なファッションが混在しているが、それらをステキと思うかゲッと思うかは、単なる好みの違い。実際に「オシャレなんだよねあの人~」と皮肉の意を込めて使用しているのを見受けることもしばしば。少々脱線してしまったが、このような「オシャレ」の考え方で言えば、周りの目を気にする地方が、(地方的基準の)TPOに合わせた見た目に気を配らない訳がないため、意外にも「オシャレ」人口比率は同等なのではないだろうか。
しかしながら、東京の言うように「センス」は環境で育つ。お上りしたばかりの地方が、環境要因を超す努力をし、あかぬけるまで、決して勝つことはできないだろう。果たして、後天的に磨く「センス」は、先天的資質に勝ることはできるのであろうか…?

– Round 2 –
貪欲さは “悪” か?


東京:田舎モンは、ガツガツしてるよね。貪欲さが前に出ている姿が、ダサい(笑)。

地方:また田舎モン呼ばわりを…。確かに、ガツガツしていることは認めます。先ほど仰っていたように元々のベースが違いますからね。地方でできないことをしに上京してきているので、ファッションだけでなく、仕事も娯楽も人間関係もすべて、東京基準に適応しなければ、その環境下で生きていくことはできません。自分は変わっていないと豪語する東京在住の地方出身者もいますが、多少なりとそう変化している部分はあると断言できるでしょう。あ、言っときますが、ポテンシャルとかは別の話ですよ。

東京:確かに、ポテンシャル高い地方のヤツ居るな…。あかぬけるまではガッツいててダサいけど、あかぬけることができれば、認める。

地方:(笑)

– 判定 –

東京 9 対 10 地方


前ラウンドの一撃で拍車がかかったように、主導権を握ろうと飛ばす東京。しかし本ラウンドでは、地方の防御性が勝り、試合の主導権は地方に移った。
地方はガッついて当たり前、しかもそれは生物の摂理のようだ。しかも、都会の結果主義に応えることができれば、OKなのである。東京の柔軟性につけ込んだ作戦で納得させるとは、劣悪な環境下で「貪欲」に生き抜いてきた、地方の涙ぐましい努力とポテンシャルの高さがうかがえる。何だってスマートにみせる方がカッコイイが、「貪欲」に努力をする姿も、また違った魅力を秘めているのである。 アウェーの洗礼を受けながら、地方はこのまま優勢を続けていけるのか?地方は、東京に “田舎モン” 乱用をさせようと挑発し、反則/退場をしたたかに狙っており、よくよく考えると悪知恵が働いているようにも思えるが…。なんだか幼少時に読んだ童話のようで、悪知恵とも思える出来事に目を伏せ、努力家の地方を応援したくなる。がんばれ、地方!!(レフェリーとなる私は純粋な地方出身者であるため、判定に私的感情が反映されていることをお許しいただきたい)

– Round 3 –
東京は東京を正しく理解している?


東京:認めるっていうのは、やっと同じ標高まで登って来たなって意味だよ。まあ、標高は同じでも、雑草の生えた更地と手入れされたえ芝生くらいの差はあるから、同じとは思っていないけどね(笑)。でも面白いのは、こうして馬鹿にしたい気持ちがあるのも事実だけど、どんな人や物をも受け入れることができるんだよね。東京は懐の深い街だってこと。

地方:えーと、懐が深いと柔軟はちょっと違うように思いますけど…。関心ないだけじゃないんですか?

東京:地方の人は、東京人を他人事には関心がないとか干渉しないとか言うけど、意外とそうでもないんだよ。例えば、昔からの近所付き合いがある街では地方のように各家庭の情報が筒抜けだったり。

地方:ふ~ん。

東京:本当だよ!

地方:それを聞いて思い出したんですが、「地方出身者によって、古き良き東京が失われている」と偉そうに言う東京人が居ますが、正直ケッて思います。だって、東京ってどんな人も文化も受け入れ、ミーハーで、新しいものが好きな人が集まる場所。東京ってそういう街じゃないですか。超軽く言うとですよ(笑)。お上り違いですけど、京都とは全く違う。本当に、古き良き東京とやらを守りたいと思うのならまず、東京の特性を客観的に把握した方が良いと思います。

東京:君たち…意外と東京思いなんだな!

地方:結局私たち、東京好きですからね(笑)。今回のような戦いは、地方が降りてあげることで、決着がつくのが通例ですので(笑)、自らタオルを取ります(*1)。

東京:わかってんじゃん!!

– 総合判定 –

winner>> 東京


昔から決まりきっている、都会が地方を馬鹿にする構図は、依然残っているものの、今回決戦地となった現代の東京では、お互いがひとつのネタとして楽しんでいることもあるようだ。勝因は言うまでもなく、そもそも地方出身者は都会に惹かれて上京しているためで、残念だが今回の結末も通例に従ったものとなった。
最終ラウンドでの戦いより、東京は自らを理解しないままに膨らんでいった街であることも推測されたが、それもまた東京の魅力なのかもしれない。…と、お上り10年目のレフェリーは、スポーツマンシップに則り東京を讃えたが、東京を言い負かし、プライドをへし折る地方のツワモノが現れますようにと、次回のタイトルに期待するのであった。

(Text: K Tategami)
(Illustration: senna009)

(*1)ボクシングにおいて、選手かセコンドが試合を続行できないと判断しギブアップする際、選手はタオルを受け取る。

TOKYOWISE SOCIAL TOKYOWISE SOCIAL