55万部突破の「翔んで埼玉」や 「パタリロ!」の生みの親 魔夜峰央先生インタビュー Patariro&Flying to Saitama

2017.03.27

vol.16 MYBOOM

知ればもっと楽しい!
魔夜先生の作品に欠かせない要素


『翔んで埼玉』(宝島社)のコミックに収められている『時の流れに』と『やおいくんの日常的でない生活』、代表作である『パタリロ!』のストーリーの中にはSFの要素を感じるものがある。そして、それだけじゃない他分野のネタが随所に盛り込まれているから、知れば知るほど面白さが増すのだ。

55万部突破の「翔んで埼玉」や「パタリロ!」の生みの親 魔夜峰央先生インタビュー Patariro&Flying to Saitama

魔夜先生:SFとミステリーは好きですね。『パタリロ!』に関しては、落語と宝石と妖怪という三大ネタがハッキリしてますから、困った時には使う! 落語は良いですよ。トークショーのMCをお願いしているのが、柳家小せん師匠と芸人の流れ星の瀧上君なんですけど、お二人とも子供の頃から『パタリロ!』を好きで読んでくれていて。柳家小せん師匠は、落語の道に進んでから先輩達の話を聞いて、「あれ、これ知ってるぞ!」という内容が、『パタリロ!』に描かれていたものだったそうで。それぐらい、私は綺麗にパクっていたと(笑)。漫画を描く上で、落語に近い雰囲気を出せたらいいなと思っています。何度聞いても同じところで笑ってしまうと言いますか、落語のま(間)が参考になっているところがあって。“ま”って、間とも書きますし、魔法の魔、悪魔の魔とも書く。これがちょっとずれただけで笑いにはならない。漫画では、コマとコマの間の縦線のことをいうんですけど、その縦線の間にどれだけの時間が経っているのか、0.01秒なのか0.3秒なのか、微妙な差をコントロールすることでギャグが生まれる。

──ギャグ漫画である『パタリロ!』は、笑いばかりでなく感動的なストーリーもあって読者が一喜一憂できる漫画だと思います。

魔夜先生:読者アンケート、ファンの中でも人気のFLY ME TO THE MOONという話があるのですが、あれは読者を泣かせるために狙って描いたものなんです。それが見事にハマって、してやったり。人を感動させるっていうのは難しいけれど、簡単といえば簡単。要は、ツボにはめれば必ず感動させられるから。でも、笑いはそう簡単にいかない。落語ではないんですが、以前、松竹新喜劇の藤山寛美さんの『桂春団治』という舞台を観に行ったことがあるんですよ。春団治が奥さんを捨てて他の女性のところへ行ってしまう……家を出た時、春団治役の寛美さんが羽織りをサッと被ったんですよ。その時、笑って良いのか泣いて良いのかわからなくて、涙と笑いが一緒に出てたんですよ。多少の時間差があるならわかるんだけれど、同時っていうのが私は生まれて初めてだったし、ああいう一コマが描けたら、もう思い残すことはないというか、大袈裟かもしれないけれど、それぐらい憧れた一コマでしたね。感動と笑いって紙一重なんだなって。

漫画の枠を越えて飛躍する『パタリロ!』


2015〜2016年には有名ブランド、アナ・スイとコラボレーションしたバッグをリリース、さらに、漫画を飛び出して、昨年の舞台化※3も大いに話題となった『パタリロ!』。

パタリロ!

──今回の舞台化は、漫画やアニメを知らない世代にも『パタリロ!』を知ってもらえる機会になったと思いますか?

魔夜先生:そうですね、幅広い世代の人に『パタリロ!』を知ってもらえたんじゃないかと。少し前に行ったサイン会でも、「親子四代で読んでいます」って言うファンの方がいたんですよ。今まで三代はあったけれど、四代っていうのは初めてで驚きましたね。『パタリロ!』は、教育上、良いか悪いかは別として(苦笑)、世代のギャップを埋めていきたいですし、とにかく、子供に読んでもらいたいです。

(Text:Sayaka Miyano
(Photo:Yuko Konagai)
魔夜峰央
1953年、新潟県出身。横浜在住。
1973年<デラックスマーガレット>(集英社)でデビュー。1978年、<花とゆめ>(白泉社)にて代表作『パタリロ!』の連載を開始。1982年、フジテレビ系列で『パタリロ!』がアニメーション化。『パタリロ西遊記!』などのスピンオフ作品、読み切り短編スタイルを入れると100冊以上を出版。。現在も『パタリロ!』『翔ばして埼玉』などを連載中。
https://www.hanayumeonline.com/magazine/magazine86.html


※1:主人公・パタリロのオカマアレルギーの原因になったとされる三人衆(マリリン、グレース、マレーネ)が登場する話。一国の王であり、ケチなパタリロは船代の節約のため、密航している船に乗り込み、空調室でこの三人と出会い、全身なめなめサービスを受けて失神してしまう。バンコランやマライヒのような美少年とは違い、ヒゲが濃かったり、ブサイクなのに愛嬌があるキャラに加えてセリフがまた面白い(東カリマンタンの殺人という話もぜひ)。

※2:オーブリー・ヴェインセント・ビアズリー(1872-1898年) ペン画、黒色のドローイング作品は、日本の浮世絵が大きく影響されたといわれ、グロテスク性や退廃性、エロティシズムを強調した表現となっている。オスカー・ワイルドやホイッスラーを含めた耽美主義ムーブメントの中心的な芸術家の一人。また、アール・ヌーヴォーの創始者の一人として位置付けられており、ビアズリーのスタイルを模倣した芸術家も多い。

※3:加藤諒さんがパタリロ役を熱演。魔夜先生曰く、「文句の付け所がない配役で、リクエストしたのはバンコランとマライヒのキスシーンは絶対に入れろということぐらいで基本はお任せ」だったとか。2018年には第二弾の公演が予定されている。

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