2015.01.27

vol.4 TOKYO Midnight

# 業界の定説『ネットでの話題性と視聴率は反比例する』を打破した「美しい人に怒られたい」シリーズ
s_yoshiki_01© TV TOKYO ―画面越しに美女に激怒される「美しい人に怒られたい」シリーズは、ネットでも大反響ですよね。
高橋:「ネットで話題になった番組は、基本的に視聴率が悪い」と昔は言われる節があったんですが、おかげさまで、「美しい人に怒られたい」 「吉木りさに怒られたい」に関しては、逆にネットで話題にしていただいて、テレビもご覧いただいたという方が多く、こういう形もあるんだなと思いました。

今年1月10日放送の「新春ポンコツ時代劇! 吉木りさに怒られたい ~江戸編~」では、タイトル通り、ちょっと時代劇っぽく、“くノ一”や“花魁”に扮した吉木さんに怒られる内容になっていました。ただ怒られるのも、ちょっと飽きてきた頃かな…と思いまして(笑)。

ネットの動画もテレビに近くなってきたし、両者の雰囲気も近づいているように思います。今もほぼそうなっているのかもしれませんが、ネットが大衆化すればするほど、こうしたケースも増えてくるかもしれませんね。

―最近はテレビを見ながら、スマホをいじっている人も多いですよね。紹介されたお店やスポットを調べたり。

高橋:ネットと一緒に楽しむテレビもひとつの考え方だと思います。でも、先ほどのお話にも出たように、“ネットでの盛り上がりと視聴率は反比例する”と言われる理由って何だろう? と考えた時に、スマホをいじる暇を与えている時点で、それって、ひょっとするとつまらない番組なのかもしれないとも思うんです。本当にグッときていたら、ツィッターでつぶやくよりも、見入っちゃいますよね。それくらい楽しめるものを考えていかないとな…と、作る側としては思うことがあります。

―テレビ東京と言えば、アニメのイメージも強いです。

ご期待に添えるような話になるかどうか分からないんですが、アニメは実際多いです。テレビだけでなく、どんな媒体でもそうだと思いますが、本来なら、いわゆるF1層(20~34歳の女性)が最も広告価値が高いので、一番取るべき層です。でも、うちは中々取れないので、ずらした戦略といいますか、ちょっと逸れた所でコアなアニメファンをターゲットにしていったんです。。ターゲットがしっかりしているとスポンサーも付きやすく、ビジネスとしても成り立つという側面があるんですよね。

長崎:あと、男子目線で言うと、「ギルガメッシュないと」に始まり、深夜のお色気路線の番組も、テレビ東京の独壇場でしたよね?

高橋:僕がADでかけだしの時、お世話になった上司は、入社して初めての仕事が“パンティ仮面”だったという人など、ギルガメのADを経験したという人が沢山いましたね。女性のパンツを被って仕事していたとか、当時の思い出話を聞くと、相当面白いです。実際は話で聞くよりも、もっとひどかったんだろうなと想像しながら(笑)。

長崎:その挙句の果て、「おねだり!!マスカット」でAV女優をスターにしちゃうんだから、すごいですよね。

高橋:マスカットのシリーズは、テレビ東京は放送のみで、企画制作自体は、「とんねるずのみなさんのおかげでした」などを手掛けられているマッコイ斉藤さんです。エロい替え歌とか、放送ギリギリの内容もありましたが、たしかに昔の当局の深夜番組にエロのイメージがあったことは確かです。昨年、開局50周年特番である「50年のモヤモヤ映像大放出!」という、テレ東の歴代の番組をふりかえるような番組のディレクターをやって、そのとき過去のテレビ東京の視聴率を歴史として勉強してみたんですが、たしかスポーツを除けば、1位は「ハレンチ学園」で5位が「エマニエル夫人」ですからね。

長崎:パンチラの連発ですね(笑)

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―選挙の報道もかなりユニークですよね。

高橋:同じ会社の社員として、見ていてびっくりしますよね。池上彰さんの報道特番については、彼自身がすごいと思うんですが、あえて政治家の方を怒らせたりする質問とかも、けしかけたりしますからね。あくまでこれは僕の見解ですが、うちの報道スタッフも忸怩(じくじ)たるものがあったんじゃないかなと。僕が入社した10年前って、選挙特番の尺も他局に比べると全然短くて、正直、僕からみても、“負けてる感”が否めませんでした。少し上の先輩たちは、その思いをここ数年溜めてきて、ああいう番組を作ったんじゃないかと推測します。

長崎: 映画にしてもそうなんですけど、大宣伝かけたものがコケる反面、単館でバカほど当たるものが出てきたりっていうことが普通に起きるじゃないですか。インディーズ・メジャーみたいな時代になってきていると個人的には思っているんですが、テレビ東京さんにはぜひ、メジャーでありながら、マイナー感がなくならないという唯一無二の立ち位置で、インディーズ魂を持ったまま、突っ走っていただきたいと切に願います。

高橋:おっしゃる通りです だから調子に乗らないで粛々とやるしかありません。所詮テレ東なんですから。テレビの人たちって、すぐ調子に乗っちゃうんですけど、テレ東にいると、やっぱりなんだかんだいって他局にボロ負けの日多いし、毎朝視聴率日報を見てすぐ気を引き締められるんでいいですね(笑)。決してメジャーにはなれないとは思いますが、それはそれで、中にいる人間は居心地が良かったりします。番組作る人にとっては意外に楽しいところじゃないかなと思います、テレビ東京は。

(Text: 岸 由利子)
(人物Photo:Masashi Nagao)

テレビ東京
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