vol.5_title_buy

2015.05.15

vol.5 TOKYO STANDARD

s_DSC_0436 次なる目的地は、原宿・竹下通りの「ザ・ダイソー」。見渡すかぎり、人、人、人。ドン・キホーテの六本木店と同じ、4~5人に1人くらいの確率で、外国人の顔が視界に飛び込んでくる。30分ほど店から出てくる人を眺めていたら、「中国系の人は何かしら必ず購入しているが、欧米人は“見るだけで何も買わない”人もわりかし多い」という傾向が見えてきた。

s_DSC_0449 1人目の彼は、フレンドリーなフランス人大学生。現在、都内の某大学に留学中なのだそう。ダイソーの買い物袋の中から出てきたのは、なんと昭和の文豪・夏目漱石の小説「坊っちゃん」だった。「夏目漱石の作品は大好きです。こんな名作が100円だなんてあり得ないですよね。ダイソー、素晴らしいです!」と満面の笑顔。本の中身はもちろん日本語。フランスに居た頃から語学を勉強していたそうで、小説もかなりスラスラと読めるという。

まさかダイソーで小説が売られているなんて、この彼に出会わなければ、筆者は知る由もなかった。日本を代表する不朽の名作をダイソーで見つける彼のセンスも凄いが、これを商品化してしまうダイソーも凄いと感じ入ってしまった。

s_DSC_0463 「ダイソーのメロンパンは私たちの間ではブームよ!原宿に来たら必ず買ってるわ」と言うのは、左側の女の子。3人共、短期留学中の学生だ。「僕はチョコチップメロンパンが好きです。コンビニだと1個100円だけど、ダイソーだと同じお金で2個買えるんだよ。味も美味しいし、よっぽど経済的だと思いますよね」と右側の男の子。語る内容もしかり、若干二十歳とは思えない落ち着いた口ぶりに、思わず納得。

s_DSC_0450

s_DSC_0438 メガネの彼は学生、コートの彼は勤め人。またもや在住者で、聞くと、それぞれ1年、7年とかなり長く東京に暮らしている。この日の買い物は、メガネの彼が、裁縫セット、メンズリップ、ネクタイ、コートの彼は白ワインだった。中には鬼のお面や東京都の地図、書道グッズなど、ユニークなチョイスも見られたが、ダイソーでも飲食品などの生活必需品が目立った。

今回の取材において、自身の予想とはるかに違っていたのは、観光客よりも、在住者の方が圧倒的に多かったこと。ダイソーにおいては、2時間以上、インタビューをぶっ続けに行ったが、その中に観光客は一人としていなかった。たまたまそういう日だったのかもしれないが、前述の「欧米人は“見るだけで何も買わない”人もわりかし多い」というパターンは、もしかすると、立ち寄る観光スポットとしては“マスト”だけれど、「特に必要のないもの、欲しいと思わないものは買わない」という合理的な経済観念あってのことではないかと思う。

そして、ドン・キホーテにしろ、ダイソーにしろ、外国人からはコストパフォーマンスの高さが評価されているが、18ロールのトイレットペーパーを買うアメリカ人女性や「坊っちゃん」をはじめとした日本の小説を買うフランス人学生、原宿に来たら必ずメロンパンを買うという女子留学生のように、ピンポイントで“自分の定番”を極めるのが、どうやら外国人の買い物スタイルのようだ。

余談になるが、インタビューを断わられた人は実質ゼロだった。皆、好意的で、写真撮影も清々しいほどひとつ返事でオッケーをくれる。またの機会に、また別の角度から、外国人の方たちをぜひ突撃取材してみたいと心から思う。

(Text & Photo: 岸 由利子)

TOKYOWISE SOCIAL TOKYOWISE SOCIAL