TokyoPoem,北千住,隅田川,菅原敏,詩人,詩

2016.06.15

Vol.10
『隅田川を渡るとき』

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今夜も見知らぬ言葉を話す
女たちとならんで駅前
いつもの場所に立っている

各国入り乱れて
さながらオリンピックのようでもあり
皆それぞれにたくましく
喧嘩もあるし
客の取り合いもあるけれど
憎む気にはなれない
そしてみな
いつの間にか消えていく
馴染みだったあの顔も
国に帰ったのかもしれない

毎朝五時近く
疲れた体を車に乗せて
いつもの川を渡るとき
私は国を思い出す

ちいさなころを思い出す
あの川沿いを歩いたことを

白い花の咲いていた
静かな川を思い出す



『隅田川を渡るとき』
足立区北千住にて

菅原 敏 (すがわら びん)http://sugawarabin.com/

詩人。2011年、アメリカの出版社PRE/POSTより詩集『裸でベランダ/ウサギと女たち』で逆輸入デビュー。新聞や雑誌への寄稿・執筆のかたわら、スターバックスやビームスなど異業種とのコラボレーション、ラジオやテレビでの朗読、デパートの館内放送ジャックなど、幅広く詩を表現。Superflyへの作詞提供、メディアプロジェクト『詩人天気予報』、美術館でのインスタレーションなど、アートや音楽との接点も多い。

【HP】 http://sugawarabin.com/
【twitter】https://twitter.com/sugawara_bin

【連載】
雑誌『BRUTUS』詩人と暮らし(毎月1日・15日発売)
cakes『新訳 世界恋愛詩集』https://cakes.mu/series/3194

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