ユカ・ツルノギャラリー
Eugene Kangawa
『from the future』

2014.08.08

CLIPPING
Eugene Kangawa『from the future』 展示の様子 《from the future》 2013年 video installation, Courtesy of Yuka Tsuruno Gallery

映像を中心に活動するEugene Kangawa(寒川裕人)による展覧会『from the future』。福島とカンボジア・プノンペンを独自の表現方法で収めた映像作品が、東雲のユカ・ツルノギャラリーで展示されている。8月30日(土)まで。

福島という場所の記憶が、忘れ去られてしまった“未来”を可視化

1989年にアメリカで生まれ、現在は東京を拠点に活動するEugene Kangawa。京都造形芸術大学在学中より国内外の展覧会に参加し、映像作品をはじめ、写真や彫刻などをもちいたインスタレーションを発表してきた。これまで20代を代表するデザイナーとしてggg「ギンザ・グラフィック・ギャラリー」に招聘されたほか、株式会社ON,incを設立し、都市計画が技術の共同研究、そのほかソフトウェア設計などを担うなど、次世代のあらたなアーティストとしても注目を集めている。

今回紹介される、福島とカンボジア・プノンペンというふたつのことなる文脈を横断することで浮き上がる、シリアスな題材を収めた映像作品『from the future』は2012年から2013年にかけて製作。本作では、Eugene Kangawaは福島とその周辺について、一連の情報がない人物を海外から福島へと招き「ここでいつ何が起きたのか」という想像の物語の執筆と風景の記録を依頼。それらをもとに構成することで、福島という場所の記憶が忘れ去られてしまった“未来”という、今後十分に起こりうることの擬似的な可視化が試みられている。

作中では、その想像の物語をあらためて見返すなかで、「この場所はクメールルージュ後のプノンペンと似ている」という一文に着目した作家自身によって、観光地と化したプノンペンの遺跡、そしてかつて訪れたことがある福島に再度赴き、撮影。ユカ・ツルノギャラリーで開かれる本展では3チャンネルのインスタレーションとして展示される。

本来関係のない福島とプノンペンというふたつの文脈を解体しつつも、多様な共通項でつなぎあわせられ、人工、自然、生と死、循環といったエレメントを美しく連想させる本作。断片と接続、記憶の風化といった問題を直接的な方法ではなく、極めて強い批判的な態度で描き出し、記憶から遠ざかりつつある重要なテーマの存在を、私たちに呼びかけてくる。
Text by YANAKA Tomomi


OPENERSより
ART│福島とカンボジア・プノンペンを独自の表現方法で収めた映像作品
http://openers.jp/culture/tips_art/news_from_the_future_47226.html

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