Editor’s Eye

2017.10.31

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実力派若手女優 岸井ゆきの

実力派若手女優 岸井ゆきの
初主演映画について語る
「おじいちゃんが死んじゃったら、家族はこうなる…のかもしれない」

「やっぱり家族ってやっかいだ。」をキャッチコピーに、家族や親戚の微妙な距離感やゴタゴタを絶妙に描いた映画『おじいちゃん、死んじゃったって。』。舞台となった“九州の小京都”と呼ばれる熊本県・人吉市から、インド・バラナシへと飛び立つヒロイン・吉子を演じるのは、実力派若手女優・岸井ゆきのさん。この映画が初主演作品だ。これから注目されるだろう彼女に、本作について見所を伺った。

家族が死んだときセックスしていたら、あなたはどうしますか?

家族が死んだときセックスしていたら、あなたはどうしますか? とある地方都市に住むOL・春野吉子(岸井ゆきの)。祖父が亡くなったとき、自分は彼氏とセックスしていたことに罪悪感を抱きつつ、部屋に貼られた野良犬が人間の死体を食べるインドのポスターを眺めながら、「生」と「死」について悶々と思いを巡らす。

祖父の葬儀のために久しぶりに顔を合わせた2つの家族。現在の家族構成にありふれた一男一女の核家族だ。

祖父の長男である叔父・春野昭男(若松了)と別れた妻ふみ江(美保純)、引きこもりの従兄・洋平(岡山天音)と高校生の従妹・千春(小野花梨)。昭男の弟である父・清二(光石研)と母・京子(赤間麻里子)、上京し離れて暮らす弟・清太。そして、昭男と清二の妹である独身の叔母・薫(水野美紀)。

日本映画界屈指の演技派俳優たちを集結したキャスティングで、親子、きょうだい、いとこ、親戚間の関係がゾワリとするくらいリアルに演じられており、「現場ではカットがかかっても、そのままみんな親戚のような空気が流れていました。実在する『私たちの熊本の日常』を切り取ったようなシーンもたくさんあって」と岸井さんはクランクインのちょうど一年前を振り返る。



とりわけ大きな事件が起きるわけでなく、それぞれの立場や心境の変化が物語を展開させ、彩っていく本作。岸井さんに「一番好きなシーンは?」と聞くと、意外にも「お父さん不在の家族三人での朝食のシーン」というインパクトがあるとはいえない場面を即答する。「引きのワンカットで、リハもなく本番!という感じだったのですが、自分でも『これ、本当の家族じゃない?』って錯覚するほど自然にできて、それがすごく楽しくて。弟の清太も、甘えん坊キャラで、本当に可愛いんですよね。」確かに、岸井さんご本人に弟がいるのかな?と苦笑してしまうような、姉弟のアホらしく愛らしい日常会話がそこにはあった。

逆に難しかったのは、バリバリのキャリアウーマンの叔母・薫との絡みだったという。「水野さんとのシーンは、監督に吉子との関係をどう作っていくか相談しました。吉子にとっては最初、東京に住むイケイケの叔母だったと思うんですけど、おじいちゃんのお棺の前で彼女が泣く意外な一面を見てしまう。言葉は乱暴だけど、本当は優しくて、誰よりもおじいちゃんの死を悲しんでるということに気がつくんです。その距離感をどう表現すればいいか悩みました。」



本作の監督を務めるのは、ソフトバンク、資生堂、JRAなど多くのCMを手がける若手で注目度の高い森ガキ侑大さん。森ガキ監督の印象について、「とても話しやすかったです。 表現したいことが監督はとても明確だったので、吉子についてわからないことがあっても、全部答えてくれました。でも押し付けではなく、『自分はこう思うんだけど、岸井さんはどう思う?』と聞いてくれて。最終的には、私がやりやすいようにやってみていいよ、って意見を汲んでくれるんです。」と語る岸井さん。ふたりで何時間も役作りについて話し合ったこともあったという。森ガキ氏は本作が長編映画初監督作品となるが、脚本家であり原作者の山崎佐保子さんとは同じ年で共通するポイントも多く、「山崎さんの台詞は単純のようですごく奥行きがあり、台詞と台詞の間の余白が、演出しやすくて化学反応の振り幅もすごく広がったと思います。」とコメントしている。

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