ジバラ映画鑑賞記

2017.05.02

ジバラ映画鑑賞記
『T2 Trainspotting(T2 トレインスポッティング)』【ジバラ映画鑑賞記 Vol.3】

21年ぶりのキャスト共演と続編のストーリーが話題の『T2 Trainspotting』

(ややネタバレあり)
スコットランドに暮らす少年たちの破天荒な青春ドラマを描いた、『Trainspotting』(1995年)。90年代のポップ・カルチャーの代名詞ともいわれた前作から21年、待望の続編『T2 Trainspotting』が公開となった。
注目すべき点は、あれから20年という時間を経て彼らはどうなったのか? そして、その時間の中で何が変わったのか。

T2 Trainspotting

友達を裏切って大金を手にしたレントン(ユアン・マクレガー)は、すべてを捨て、エディンバラを離れて妻とオランダのアムステルダムに逃亡していたはずが、今作では故郷に戻って、悪友と再会。結果、過去の思い出や出来事に引っ張られるかのように非社会的な生活を送ることになる。表向きはパブを経営しながら、売春、ゆすりの裏稼業を続けるシック・ボーイ(ジョニー・リー・ミラー)、家族に愛想を尽かされ、孤独に絶望し、脱ドラッグに葛藤するも抜けきれないスパッド(ユエン・ブレムナー)、刑務所に服役中のベグビー(ロバート・カーライル)……、彼らは、変わろうと思えば変われたはずなのに、モノ分かりの良い大人にはなれないまま。そんな彼らを負け組と例えると、唯一、勝ち組になったのは、前作では高校生だったダイアン(ケリー・マクドナルド)だ。今作では弁護士として登場する。というか、20年経っても付き合いがあったことに驚き! では、負け組の彼らがなぜ変わることができなかったのか? 「そこには、イギリスの持つ伝統的な格差社会とEU離脱に象徴されるような社会的閉塞感が深く関わっているんじゃないかと思う」と、そう話すのはTOKYOWISE編集長。「現にイギリスは経済的に良い部分は一部に限られて、移民問題も含めて深刻な社会格差に悩まされている。スコットランドはEU残留を希望して独立の話が出るくらいイングランドと対立しているし、トランプと同じくEU離脱は自国最優先の新保守の動きがあることも事実。ヨーロッパ全体も今のフランス大統領選挙で極右が目立つような変な社会情勢になっている」と言う。編集長の言葉のように、時代や社会の背景があって、今このタイミングで続編が公開されたとすればとても感慨深い。

T2 Trainspotting

今作では、前作の回想シーンが所々に入ってくる。若き日のキャストの姿に懐かしさを感じながらも、街の風景の変化が映し出されているような気がした。その中でも、唯一変わらないのがレントンの実家とどんなことがあっても彼を優しく受け入れる家族。変化も必要だけれど、変わらない良さも大切だというメッセージのようにも思えた。変わらない親友たちも、もしかしたらホッとするものなのかもしれない。

T2 Trainspotting

映画鑑賞と評価

<トレスポ好き編集部員Yuriko Bailey’s Comment>

「新作の公開が楽しみで仕方なかった。まず、ダニー・ボイル監督や主要キャストが再集結、21年越しにスクリーンに登場できていることはすごいなぁと感心。前作から観ているファンとしては、合間に入ってくる懐かしいシチュエーションやシーンにデターッ!って興奮するところもあったけれど、期待が大きかっただけに、全体的には、う〜ん……と、十分な満足感が得られなかった。新しいキャラクター(シック・ボーイのビジネスパートナー?? 彼女!?)の女の子との絡みや前作を上回る裏切りの連鎖は、今作を初めて観るという人には興味深い点かもしれないけど、それぞれがおじさんになったという設定が前提にありながらも、前作のような疾走感は無く、若さゆえのどうしようもないハチャメチャ感とは違ったダメ具合が描かれていて、観終えた後に切なさを感じた。でもやっぱり、映像表現や音楽は前作に引き続き良かった!」

<ジバラ映画鑑賞家Miyaan’s Comment>

「率直に、“4人のおっさん頑張れ〜”と言いたくなった。若かった頃のどうしようもない感じと青春を引きずっていたり、戻ったり。相変わらず、ドラッグや暴力、窃盗などの犯罪と背中合わせ。歳を重ねてもダメな部分は変わらないんだなぁと思う反面、恨みや騙し合いをしながらも男の友情って面白いなぁと女性目線で思うところもしばしば。今回の主役は、レントンよりもスパッド(ユエン・ブレムナー)なの!?と突っ込みたくなるところや、もしかしてスパッドが勝ち組になっちゃうかもという展開は見所。そして、Iggy PopやDavid Bowie、Underworld、Queenなど、音楽好きにはたまらない選曲の良さと監督のダニー・ボイル率いるボイル組の作る世界観はさすが!」

期待値が高すぎて、前作がすごかったと再認識!
歳をとった切なさが残る映画
評価:★★★(3)


最後に、『T2 Trainspotting』を鑑賞する前に、是非とも前作の『Trainspotting』をチェックすることをおすすめしたい。継続性のあるストーリーであり、見比べる楽しみもあるのが今シリーズの魅力だ。

※『スラムドッグ💲ミリオネア』の撮影監督のアンソニー・ドッド・マントル、プロダクション・デザイナーには、『28日後…』のマーク・ティルズレイとパトリック・ロルフ、衣装デザインは、前作に引き続きレイチェル・フレミングと『博士と彼女のセオリー』のスティーヴン・ノーブルなどが名を連ねる。

【作品情報】
『T2 Trainspotting(T2 トレインスポッテイング)』
監督:ダニー・ボイル
脚本:ジョン・ホッジ
出演:ユアン・マクレガー/ユエン・ブレムナー/ジョニー・リー・ミラー/ロバート・カーライル
配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
http://www.t2trainspotting.jp
丸の内ピカデリーほかにてロードショー中!

おすすめ度の★評価について
★★★★★ 観る価値大
★★★★  満足度高め
★★★   賛否両論…
★★    もう一声!
★     残念すぎる

(Text:Miyaan)

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