BEHIND THE MUJI

2017.06.14

BEHIND THE MUJI



「こんなハンガーが欲しいという、開発者自身の想いやお客様の要望にお応えしていたら増えていった感じですね。もともとは、ポリプロピレンのハンガーが最初に登場しました。それから木製のハンガーも欲しいというお客様からの要望をいただき、木製のハンガーを開発、シャツなどを“ちょいがけ”できる薄型が欲しいという要望があり、薄型のハンガーができました」。

無印良品のハンガーのロングセラー商品がアルミのパンツハンガーだ。初登場は15年以上も前で、当時から形状も仕様も変わっていないという。3段式のパンツハンガーは、収納スペースが限られている東京の住まいにはうってつけのアイテム。



「昔から売っているので、ここで変えるのもこわいですよね。無印良品のいいところは、以前に買ったものを継続して買うことができること。買い足していけるのが大きな魅力だと思っています。開発した商品をすぐに変えるのではなく、できるだけ残していこうという風土があります」。

買い足しで思ったのだが、そもそもハンガーって揃えたほうがいいものなのだろうか。揃えるとなると意外とお値段が張るものだが……。

「揃えなければならないということでは無いですが、収納を美しく整えたいと思っている方は多いと思います。無印良品では、用途に合わせてボディの素材や厚さは違っていても、クローゼット用ハンガーのフックはアルミで統一されています。ボディは衣類をかけたらほとんど見えませんが、フックはばっちり見えるので」。

木のハンガーであろうと、プラスチックであろうとフックはアルミ。ここに無印良品の真髄を見た気がした。

クローゼット用ハンガーだけでもかなりの充実ぶりだが、最近人気急上昇中なのが、洗濯用のアルミハンガー。シンプル・イズ・ベストなこのハンガーを、衣類用に愛用している人も多い。



「洗濯物を干して、そのままクローゼットにかけられるデザインを意識しました。干しやすさはもちろん、乾いた後の衣類の形まで考えられた形状になっています。洗濯ハンガーっていっぱい使うものですから、なるべくお求めやすい価格になるよう素材や形状を吟味しました。それも人気の理由のひとつでしょうね」

無印良品のハンガーはもうこれで出尽くしたのだろうか。それとも今後まだ増えていくのだろうか。

「クローゼット用ハンガーはもう出尽くした感がありますが、洗濯用ハンガーは、もう少し広がっていくのではないでしょうか。無印良品では機能が重複しているものは新たに作らないという考えがあります。無理に専用のものを作って、汎用性がなくなるのは無印良品らしくないと思います」



洗濯用ハンガーといえば、無印良品には靴を干すハンガーがない。誰もが知っている針金ハンガーを曲げて干すようなハンガーは必要ないのかと尋ねたら「現時点では何とも言えませんが、そういったお客様の声も多いので、何か新しいご提案ができないか検討中です」とのこと。無印良品が靴を干すとこうなるのかというものが飛び出すのを楽しみに待っていよう。

まとめてみた

新生活シーズンだけでなく、年間を通して売れまくっているという無印良品のハンガー。その人気の理由を考えてみた。

①一見すると誰も気づかないようなこだわり
木製もプラスチック製も、フックはアルミで統一されているクローゼット用ハンガー。大切な衣類を保管するための機能だけでなく、収納したときの美しさまでも考えられているのには感服させられる。

②開発者がいちばんのヘビーユーザーである
日高さんのクローゼットは無印良品のハンガーで埋まっている。なるべく何も考えず、無意識に使うことで、使い勝手の悪い部分はないかを常日頃からチェック。開発者が消費者目線でいることで、品質が保たれている。

③止まらない進化
お客様の要望に応じて、研究を重ね、マイナーチェンジを繰り返している。売れないからといってすぐに廃止するのではなく、改良することで長く残していく。つまり、今あるハンガーはどれも傑作、ということだ。

(Text:Ayako Takahashi
(Photo:Yuuko Konagai)

無印良品
https://www.muji.com/jp/

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