東京良音空間

2014.07.14

MUSIC CONCIERGE
東京良音空間 Vol.02

東京良音空間 Vol.02
音楽ラウンジ period

その店は、神田駅から少し離れた不思議な場所にある。不思議というのは、オフィスビルの建ち並ぶエリアに、音を極めたラウンジがあるということだ。
「エリアを考えていたのではなく、音を楽しむのに最適なスペースと構造を探していた結果、ここになりました。大手町からも近いというアクセスの良さも魅力でしたが。」

オーナーのM氏は、どこまでも音を中心に考えている。
「もっと音を良くする具体的な方法はわかっているんですが、今の諸々の実力ではここまでです」
「空気の揺れ、って映像なんかの視覚情報よりもある部分で人間のヴァーチャルな感覚に訴えかける力が強いと思うんですよ。音楽も直接心に働きかけてくるもの。ここでやりたかったのはCDやレコードに記録されている現場の空気の揺れを再現することで成し得る、時間と空間のトリップです。ポピュラーに限らず音楽は時代に大きく影響されるわけですが、レコーディングや編集の諸環境、そしてエンジニアの企みも時代時代でずいぶん違います。そういった現在とは異なる様々な時代性が情報としてメディアに丸ごと記録されています。そういったことまで感じていただけると嬉しいのですが・・・」

まったく畑違いの仕事から、この音楽ラウンジの開店に向かっただけに、並大抵の苦労ではなかっただろう。
「いえいえ、苦労なんて全くありませんでしたよ(笑)。前職を含め、様々な出逢いにより関心を持ち、経験し、考えてきたこと、それら全てをひとつにまとめるとこうなりました」
M氏の“音”に惚れ込み、訪れる常連の中には音楽制作サイドの人もいるそうだ。
「でもこの店はマニア向けにつくった訳では決して無いんです。音楽にそれほど興味を持っていなくても、今の時代を生きる全ての人に気軽に来てもらいたい。ご提供するのは知識や情報ではなく、ある種体験ですから。感じ方はそれぞれ、ご自分で感じたことが全てに優先します。意外に常識や知識って怪しいものなんですよ、半世紀以上前の録音に皆さん驚かれますから」

昼間は小音量で主としてクラシックだが、夜はヴォリュームを上げ居る人の好みにも合わせてロックやジャズ、昭和歌謡など何でもかけるという。自分のとっておきの1枚を持ち込んでみるのもいいだろう。

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音響を考えて立てられた流木も店主自らがしつらえたもの。最低限の席数は“音”との対話を楽しむためのもの。単にオーディオを見せびらかせるのではなく、その音に包まれた空間そのものが、このperiodが数多の音楽バーとは一線を画し、“音楽ラウンジ”というスペースにこだわりを持っている所以なのだろう。

システムはどこまでもオリジナリティを追求しているようだ。
「音響的には部屋が最も支配的ですね。機器に関してはそれなりに色々試しましたが、最終的には自分の耳を信じて構成しました。忘れられたものやあまり馴染みの無いものもありますが、私にとってはみな色づけなく音化してくれるものばかりです」

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ゆっくり淹れられたコーヒーを楽しみつつ、音楽の普遍的な深淵に触れる時間を楽しんでみてはどうだろう。

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▼システム構成
<デジタル>
MSB Technology The Platinum LINK DAC Plus
<アナログ>
C.E.C. ST930 + ortofon Kontrapunkt-a
Marantz SC-11S1 → FLYING MOLE DAD-M100pro×2 → Adam Audio Classic Compact

音楽ラウンジ period
東京都千代田区内神田2-3-9 MECビルB1F
http://2012period.blogspot.jp/

(Text:Y.Nag)
(Photo : Yuuko Konagai)

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