ARTIST SELF-PRAISE 作家自画自賛

2015.12.07

ARTIST
s_DSC_0337

アーティスト自身による
自画絶賛 Vol.12
イヴァン・アルパ

ウブロ、ロマン・ジェローム、ジェイコブなど、名だたる高級時計ブランドのプロデュースを手掛けてきたスイス時計業界のカリスマ、イヴァン・アルパ氏。今やウブロの主力モデルとなった「ビッグバン」シリーズの大ヒットも、ロマン・ジェロームから世界20本限定で発売されたアーケードゲーム「パックマン」とのコラボモデルの誕生も、ひいては、デイビッド・ベッカムや田中将大、木村拓哉らがジェイコブの時計を愛用することも、陰の立役者、彼の存在なしにはあり得なかったこと。

そんなイヴァン氏が、満を持して立ち上げた独自ブランド「ArtyA (アーティア)」は、彼の才能が遺憾なく発揮されたまばゆいラグジュアリー世界。時計の概念そのものさえ、エレガントにぶち壊す、芸術的で、型破りなタイムピースがずらりと並ぶ。プーチン大統領、アーノルド・シュワルツネッガー、スティーブン・セガール、ヴィン・ディーゼル、KISS、フィル・コリンズ、マイク・タイソンなど、圧倒的な個性とパワーを放つ世界のセレブリティたちが自ら、「あなたの作る時計が欲しい!」と彼にコンタクトを取ってきたというのも納得できる桁外れにクールなブランドだ。

「ArtyA (アーティア)」は、昨年より日本にも本格的に上陸。この度、来日したイヴァン氏に、現在に至るまでのユニークな経歴や、斬新なアイデアやクリエイションについて、たっぷり語っていただいた。 s1_watch1©ArtyA ──イヴァンさん、あなたのご経歴にとても興味があります。数学の教授としてキャリアを始められたそうですね。

数学はファンタスティックですよ。正確な質問があって、それに対する的確な答えがあるので、いつも自分が正しいということが分かりますし、それゆえ、リラックスできますから(笑)。

──その後、パプアニューギニアに行かれたのですよね。

30年くらい前のパプアニューギニアは、今とは違って、まだ誰も行ったことがない土地でした。1年間、ひとりで歩いて横断しましたが、当時は、818の異なる言語と種族があったので、ひとつの場所から少し歩いて別の場所に着くと、外国に来たような、違う世界に入り込む感じで面白かったです。

道中、定宿があったわけでもなく、とにかく歩き続けていましたし、マラリアなど、ありとあらゆる病気にもかかりましたが、どこのどんな種族の人も、よそ者の私を決して、ひとりぼっちで放っておかないんです。「もし、この人の身に何かあったらどうしよう…」と親身になってケアしてくれ、いつも助けてくれました。

機会があれば、ぜひ見て欲しいのですが、現地の人たちのアートは、素晴らしく創造的です。少なくとも、私の1000倍、クリエイティブだと思います。今、私にとっての新しい種族は、“サムライ”。サムライ種族を世界じゅうで、再活性化させたいと本気で考えています。
s_DSC_0355

──日本の文化には、以前から興味があったのですか?

すべてを理解できてはいないけれど、日本の文化は大好きですね。分からないことがある、それもまた私にとっては興味深い点です。5歳の頃から、ジュネーブの空手道場に通い、日本の武士道精神を学んできました。肉体的な強さを鍛えるだけでなく、忠誠心、リスペクト…武士道の価値、お分かりですよね?精神的な強さも養ってくれますよ。押忍!(笑)

数学の教授は楽しかったけれど、それ以外にも、自分がやりたいと思うことをやりたかったんです。かといって、アマゾンで暮らしたり、バンコクに渡ってタイボクシングに勤しんだのは、スイスを逃げ出すためではなく、精神的な旅。時には困難を伴うことがあっても、自分にとって興味深く、面白いと思える場所に行き、そこで、どんな風に対応できるか、自分を試してみたのです。異なる環境にあえて身を置くことで、学ぶことはたくさんありましたね。

──ワイルドですね。

自分自身を見つけなくちゃね(笑)。今、あなたが言ったように、人生はワイルドであるべきだと思います。想定内の一本道より、遠回りしても、自分の思う道を進んだ方がダンゼン面白いし、そういう生き方をしていると、人間的にも豊かで、どんどん面白くなりますよね。

「お金は、悪魔の目」という言葉があるのですが、これは、“人々は、お金のために奇妙な行動をする”ということを表しています。分かりやすく例を挙げると、生涯を通して、好きでもない仕事に就き、仕事そのものも、一緒に働く人たちも、すべて好きじゃない。でも、お金を稼ぐためには、他に選択肢がないと思い込んで、それに従事している。10年、20年が経ち、気づいた時には、燃え尽きている…。そこで、「ああ、自分の人生はこんなはずじゃなかったのに!」と、後悔しても遅すぎるのです。だからこそ、自分の夢を生きなくちゃいけないし、生きている間に、精一杯生きるべき。そう思います。 s_watch2©ArtyA ──ところで、ArtyAの意味は?

“Art”と、私のイニシャル“Y.A”を融合させた、極めてシンプルなネーミングです。このブランドのDNAはクリエイティビティ、情熱、そして幸せ。今、自分のブランドを持てて本当に嬉しく思っています。だって、100%、自分のやりたいことが表現できますからね(笑)。

例えば、左の時計は、アラビア語で“太陽”を意味する“Shams”というコレクションのひとつで、“ライジング・サン”(昇る太陽)という名の独自手巻きムーブメントの動くさまが、総スケルトンのダイアルから見える仕様になっています。

──インデックスやスモールセコンドなど、いわゆる腕時計にあるディテールが一切、省かれているのですね。精密機器のような、構造美に惹かれます。絵画のように美しい右の時計のダイアル、このモチーフは何なのですか?

『Son of Earth』コレクションの“Butterfly”というモデルで、名前の通り、蝶をモチーフにしています。アーティストであり、私の妻でもあるドミニク・アルパが、このシリーズのダイアルデザインを手掛けています。本物の蝶の羽根などを材料として使うこともあります。モダンアートなシリーズですね。 s_watch3©ArtyA ──本物の材料と言えば、ダイアルに弾丸を使い、高級時計と銃器を結合させた世界初の『Son Of A Gun』コレクション(左)があります。初めて見た時、まさに心をぶち抜かれました。

嬉しいです、ありがとう!すべての時計にはストーリーやメッセージが込められているのですが、本物の弾丸を使ったシリーズをひと言で表すと、「Enjoy Your Life」です。時計を見て、時間を知ることは誰にもでもできますが、“人生の時間”を知ることはできません。明日、あさって、来週、来年…いわゆる予定というものは把握していても、実際、一寸先に何が起きるかは誰にも分かりませんよね?極端な話、もしかしたら、次の瞬間、命尽きてしまうかもしれない。その可能性は大いにあるわけです。だからこそ、一瞬、一瞬を大切にし、楽しんで生きて欲しい。そんな想いを込めて、作ったのが、弾丸を死のシンボルとした『ロシアン・ルーレット(上記左)』です。

──ギターやギター・ピックなど、音楽をモチーフにした作品もたくさんあります。音楽はインスピレーション源ですか?

音楽は、私にとって非常に重要です。ロックやクラシックも好きですが、最近はジャズがお気に入りです。ピアノも弾きますし、人、木、花、車…この世界に存在するすべてを愛しています。例えるなら、私という人間は、熟した魂と、6歳の子供のスピリットが共存している生命体かもしれません(笑)。 s_DSC_0343

──ArtyAには、ユニークで強い個性を持つセレブリティのファンが多いですよね。

私の時計を買ってくれる人たちの多くは、ただ単に、身に付けることがステイタスだとか、そうした一次元的なレベルではなく、コンセプトや背景にあるストーリーなど、もっと違うレベルで、深いところまで、ブランドを理解してくれています。つまり、私にとっては、その人たちが興味深いのです。

例えば、ロレックスは素晴らしいブランドですし、リスペクトしていますが、時計を着けている人は私の興味をそそりません。批判しているのではなく、クラシカルダンスより、ボクシングの方が好きというスタイルの違いの問題です。人に見せるため、ステイタスのため…買い物の目的は人によってさまざまにあると思いますが、私は声を大にしてお伝えしたいですね。「あなたの好きなものを買いなさい、そしてあなたの好きなことをやりなさい」と。

「現代は、つまるところ、誰も時計を必要としていない時代だ」と、イヴァン氏は言う。PC、iPhone、iPad…至るところに時間を正確に教えてくれるアイテムがある中、時計を持つことは、ある意味、“種族のオブジェクト”的なものだと捉えているのだそう。

「できれば、ArtyAの種族は、私たちが愛する人々であって欲しいと願ってきました。そして現に今、私の時計を買ってくれる人たちを愛しています。特に近年嬉しいのは、インターネットやApple製品と共にこの世に生まれたような若者たちも、愛してくれていることです」―さいごに筆者から、これだけはお伝えしておきたい。自分なりの審美眼を持つ人なら、ArtyAの作品に一度触れてみて欲しい。心を打たれるアメイジングなタイムピースがきっと見つかるだろう。その美しさは、寝ても覚めても脳裏に鮮やかに浮かんでくるような不思議な魅力。陶酔させてくれること必至だ。

(Text and Photo[Portrait]: 岸 由利子)

ArtyA 日本公式サイト
http://artya.jp/

FACEBOOK
https://www.facebook.com/ArtyA.watches/

TOKYOWISE SOCIAL TOKYOWISE SOCIAL