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2016.08.29

vol.12 TOKYO HEAT WAVE
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世界中で話題の『ポケモン GO』。スマートフォンやタブレットに目を向け歩き回り、スポットやモンスターのある場所に集まる様は「まるでゾンビのようだ」と騒がれ、夜は液晶に反射して青白い顔すら不気味で、“Pokemo GO Zombie”と更なる話題を集めている。

多くの人が耳にしたことがある“ゾンビ”だが、実は、2000年代から<第3ブーム>が起こっているのをご存知だろうか? ゲームから派生し、一大ムーブメントとなった『バイオハザード』シリーズ(最新作の公開を12月23日に控えている)をはじめ、海外ドラマで人気を博している『ウォーキング・デッド』、日本のゾンビ映画では珍しく大ヒットを記録した『アイアムアヒーロー』などが記憶に新しい。

今回は、夏の風物詩、ホラー映画の中でも進化を遂げているゾンビ映画に焦点をあて、映像ディレクター兼演出家のばんば淳一氏を迎えて、TW的・ゾンビ映画講座を開催!一度ハマると逃れることのできないゾンビ映画の魅力に迫った。
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■sequence1■
ゾンビ映画のはじまり


──“ゾンビ”という名詞が確立されたのはいつですか?

ばんば淳一さん(以下ばんば、敬称略):世界的に認知されたのは、ジョージ・A・ロメロ監督の『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』(1968年)だと思います。それ以前は、ブードゥー教の魔術で死者が蘇るという1930年代のクラシックなもの(『ホワイト・ゾンビ』や『ゾンビの反乱』)や吸血鬼のようなモンスターが登場する『地球最後の男』(1964年)という作品があって、この頃は、恐怖キャラクターを“モンスター”として表現しているんです。『地球最後の男』は、ロメロ監督やそれ以降のゾンビ映画に大きな影響を与えた作品の一つだと思っています。 この辺りを<第1ブーム>とすれば、ロメロ監督が創り上げた『ゾンビ(原題:ドーン・オブ・ザ・デッド)』と、それに続く『○○○・オブ・ザ・デッド』シリーズが、<第2ブーム>の火付け役になっていると思います。

ロメロ監督は、食人鬼=グール的な 歩く死者が登場する『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』の後、2作目に『ゾンビ』を製作した。ロメロ監督が築いた『○○○・オブ・ザ・デッド』シリーズは多数あり、2000年代には、デニス・ホッパーも出演した『ランド・オブ・ザ・デッド』や『ダイアリー・オブ・ザ・デッド』『サバイバル・オブ・ザ・デッド』などがある。
DSC_0054_resize ばんば氏お気に入りの『ゾンビ(原題:ドーン・オブ・ザ・デッド)』のキャップ。マニア垂涎のアイテム。

■sequence2■
ヨーロッパ発のゾンビ映画が多い訳


──<第2ブーム>を起こしたロメロ監督も作品もアメリカのはずですが、なぜヨーロッパ発の作品が多いのでしょうか?

ばんば:『ゾンビ』は、イタリア出身のダリオ・アルジェント監督が一部編集と音楽を差し替えた、アルジェント監修版というバージョンがあります。ロメロ版の139分に対し、アルジェント版は119分。音楽には、イタリアのプログレッシブ・ロック・バンド、ゴブリンを起用しているんです。実は、多くの人が観ている、僕も最初に観た『ゾンビ』はアルジェント版なんです。当時、人気バンドだったゴブリンは、『サスペリア』の音楽も担当していたし、イタリアとアメリカの合作『サンゲリア』は、ロメロの『ゾンビ』がヒットしたのを受けて作られた、いわばマカロニ・ゾンビ映画なんですが、その残酷描写のオリジナリティが国外でも話題になったりと多くの人に影響を及ぼした作品。ロメロ監督作品から影響を受けつつも、その後イタリア独自に製作・公開された作品の数々が影響しているのでは?と思われます。

■sequence3■
1980年代ブームの理由とは


──80年代はゾンビに限らず、ホラー&オカルト映画のブームがありましたよね。『バタリアン』や『デモンズ』が本当に怖くて、私のトラウマです。ばんばさんにもトラウマの作品はありますか? また、ブームの理由はどこにあるのでしょうか?

ばんば :僕のトラウマは70年代、『悪魔のいけにえ』ですね。幼少期に偶然テレビで観てしまって。その時のチェーンソーの爆音と女性の悲鳴、あと太った男が追いかけてくる映像がずっと脳裏に残っていて、それを『悪魔のいけにえ』だと再確認したのは、青年になってから国際映画祭で見たポスターでした。この映画と『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』はアート作品としてMoMAにも収蔵されています。衝撃と感動を受けたのは今でも忘れられないです。その後の自分に大きな影響をもたらした作品だと言えます。80年代のブームは、特殊メイクや技術の向上と発展が大きな理由にあると思います。『バタリアン』のダン・オバノン監督は、『エイリアン』の脚本も手掛けていて、この時代は、ホラー、スプラッター、SFなど、たくさんの作品が製作されているんです。

──『バタリアン』と『デモンズ』は、ゾンビ映画に当てはまりますか?

ばんば:『バタリアン』は、原題が『リターン・オブ・ザ・リビングデッド』と言って、『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』の続編的パロディ版と言われています。映画の冒頭、主人公たちの会話に『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』が出てきます。造形は悍ましいかもしれませんが、実は、ププッと笑ってしまうコメディ要素があるので、違う角度から観ると楽しいですよ(笑)。フランス出身の女優、マチルダ・メイのヌードで話題になった『スペース・バンパイア』のクライマックスにも、ゾンビを彷彿とさせる群衆パニックシーンがありました。『デモンズ』は、ゾンビと違って悪魔がキーワードになっています。1973年からシリーズ化されている『エクソシスト』のように、悪魔が憑依する、宗教的な要素があるものなのでオカルト映画かと。こうして話している中で、今みたいにフルCGが当たり前ではなかった70~80年代の映画作品は、改めて、内容も描写も本当に凄いなぁと思います。だから、何度観ても楽しめるし魅力的なんですよね! 

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