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2016.08.29

vol.12 TOKYO HEAT WAVE

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ゾンビ映画に込められたメッセージ


ゾンビと言えば、ウーウーと唸っていたり、生きた人間を襲ってくる、また、前へ習えのように腕を伸ばしてスローな動きで迫ってくるものを想像しがち。何らかの理由で死者が蘇ったり、歩き回る様子をオールドスクール・ゾンビと例えるなら、<第3ブーム>の今は、ウィルス感染によるものやスピードと能力を備えたニュースクール・ゾンビが主になっているような気がする。ネーミングも、ゾンビではなく、Z(ゼット)、ゾキュンなど様々だ。これには何か理由があるのだろうか。

ばんば:「何らかの理由で死者が蘇る」「人を襲う」というのは、今も昔もゾンビの共通点だと思います。ただ、2000年代は多種多様なゾンビ映画が生まれていて、話題作の『バイオハザード』やブラッド・ピッド監督(主演)の『ワールド・ウォー・Z』、海外ドラマの『ウォーキング・デッド』『Zネーション』など、ウィルス感染による世界の終末が描かれているものが多く、呼び方もそれぞれ。『アイ・アム・ア・レジェンド』や『ウォーキング・デッド』では、ウォーカーとされている。ゾンビ映画と分類し難い、『28日後』というイギリスの大ヒット作もあります。僕が思うに、ゾンビ映画には、人間の欲や恐怖、文明批判、社会風刺が反映されているように思います。例えば、スーパーマーケットやアミューズメントパークといった商業施設やガソリンスタンドなどのスポットが舞台になっていることも少なくない。そこに人が行く、ゾンビが集まるというのは、ある種の記憶や習慣の悲哀が描かれているのだと思います。ウィルス感染系の作品が主になっているのも、以前よりも世界が狭く・近くなってきたことや、テロの脅威なんかが反映されている気がします。

──なるほど。今のお話を聞いて、『ゾンビ・ランド』(2009年)が思い浮かびました。生き残るためのルールや商業施設での悪戦苦闘、絶望的な状況で他の人間と出会う一喜一憂、先の幸せを求めて遊園地を目指す様子など。今思うと、怖いだけではなく色々なメッセージが散りばめられているように思えます! 個人的には、ビル・マーレイが登場するシーンでくすっと笑ってしまったり、ゾンビ映画を観たことがない友達から、「おすすめのゾンビ映画は?」と聞かれると、つい、この作品を紹介してしまいます(笑)。あと、想像やバーチャルの話で、ゾンビと対峙した時のシュミレーションをしたりするのも楽しかったり(笑)。

ばんば:笑!『ソンビ・ランド』は面白いし、コメディ要素もあって、ゾンビ映画を怖いと思っている人にはオススメの作品ですね。シュミレーションするのも本当に面白いし、武器の有無、どこを狙うか、どうやって逃げるか……とか、意外と頭を使うこともあったり、ポカーンと何も考えすぎずに観れる作品もあるから面白い。ゾンビ映画は、作り手の想い、観る人の捉え方によって、解釈や感じ方の違いがあるからこそ魅力と深みが出てくると思います。勝手にこうだ!と言い切れない部分もあったり、フィーリング、意識と違和感にアンテナを張って観る側の解釈で楽しむのが良いんだと思います。

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怖いだけじゃない、おすすめゾンビ映画はこれ


ゾンビ映画は、単に気持ち悪いわけでも、怖いだけでもない。
歴史や背景を知れば知るほど、観れば観るほど面白い。
例えば、こんな笑激の予告映像を観たら、ちょっと興味が湧いてきませんか?

ロンドンゾンビ紀行

『ロンドンゾンビ紀行』の本編は、内容として星5つ評価で☆☆ですが、観るきっかけや興味につながる作品に出会えると、ゾンビ映画の幅が広がるのかもしれません。

最後に、ばんば氏から教えていただいた、「意外性が面白しろかったり、くすっと笑える」作品と解説を含めた、おすすめゾンビ映画10選をご紹介!

<中世のイギリスを舞台に、女性の強さとゾンビの怖さを描く>


『高慢と偏見とゾンビ』(2016年9月公開予定)
元ネタは、文芸調としうか18世紀のイギリスを舞台にした小説。ゾンビ映画の自由さがうかがえる一作です。

<超、今っぽい! モンスターペアレンツも驚きの作品!>


ゾンビスクール(2016年)
学校給食でチキンナゲットを食べたらゾンビになっちゃった! というコメディ要素満載の作品です(笑)。

<現代を背景に、わかりやす過ぎるゾンビ王道設定が面白い>


インド・オブ・ザ・デッド(2013年)
予想を超えて丁寧なゾンビ・マサラ・ムービー。終末観は無いが、インドのゆとり世代が活躍?するのんびり加減も許せるし、腹が立たない。

<革命か反体制による蜂起か!? と思ったらゾンビだった!!>


『ゾンビ革命 フアン・オブ・ザ・デッド』(2011年)
キューバの社会情勢をシニカルな笑いへと転化させた、ストーリーも描写も好評価のキューバ初のゾンビ映画。

<人間のために働く&尽くす、新しいゾンビ・キャラクター>


『ゾンビーノ』(2007年)
凶暴なゾンビをハイテクアイテムで調教し、人間と共存する様を描いた今までにない内容がユニークすぎる。

<背景もストーリーも意外性に驚くゾンビ映画のあれこれ>


『ゾンビ大陸アフリカン』(2010年)
『オゾンビ』(2012年)
『コリン』(2008年)
『スリー・デイズ・ボディ』(2013年)
ウォーム・ボディーズ(2013年)
建物が無い草原が舞台、ビンラディンがゾンビに、恋心を抱く……など、怖さよりも他への興味が勝ってしまう。

この夏は、ゾンビ映画で冷や汗を流して、クールダウンするのっていうのも悪くないのでは? 
<ゾンビと対峙した時、逃れるための How To(ハウツー)講座>は、また別の機会に。

(Text:Sayaka Miyano

ばんば淳一
映像ディレクター、演出家。
企画立から広告やCM制作を主に、インタビューや映画コラムなども手掛ける。
無類の猫好き。

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