シングルマザー、家を買う。 駅近最強説から三種の神器まで マンション購入リアル体験記 Sweet Home for Single Mother

2017.04.24

vol.17 LIVING IN TOKYO

②家を買う編 〜中身ではなく、場所で買うのが吉〜



②家を買う編 〜中身ではなく、場所で買うのが吉〜
さて、家が売れたのなら新しく住む家をなる早で探さなければ。密かに狙っていた物件はあったが、駅から14分という立地にいま一歩足を踏み出せずにいた。しかも1年ぐらい売れずに残っており、最近500万円値下げをしたにも関わらず、いまだに売れ残っている。何か落とし穴があるのではと不動産屋さんに相談したところ、「値段が高いから売れないだけ」とあっさり不安を解消してくれた。

私が家を探している代沢エリアは、分譲だけでなく賃貸物件すら圧倒的に数が少ない。築10年前後、今より広い部屋という条件はクリアしており、ここで逃したらそう簡単に見つからないこともわかっていた。内観してみたところ、“悪くない”というのが率直な感想。安っぽいビニール系のフローリング、バブル時代みたいなスケルトンのドアノブ、壁が邪魔して完全に開かない下駄箱の扉。ツッコミどころはたくさんあったが、私はこの物件に決めた。

マンションの持ち主はダブルローンを組んでおり、一刻も早く手放したかったようで、結果230万円安く買うことができた。100点の物件ではないが、これから100点にすればいい。中身は変えられても場所は変えられないと悟ったのだ。

③住宅ローン編 〜三種の神器はコネ・実家・実績〜



③住宅ローン編 〜三種の神器はコネ・実家・実績〜

新しい家が見つかったものの、私には住宅ローンの問題が残っていた。前回家を買ったときは会社員で独身だったため、いとも簡単にローンの審査が下りた。しかし今の私はフリーランスで働くシングルマザー。自営になってから1年しか経っていないうえに、これから莫大なお金がかかる未就学児を抱えているのでは、社会的信用がゼロに等しい。

大手銀行にそっぽを向かれた私が見つけたのは不動産屋さんの知り合いが勤めるマイナーな信用金庫。ローンが下りなかったときのために、恐る恐る実家に「ぶっちゃけうちにはいくらお金がありますかね?」と丁重に申し入れしたところ、かき集めればン千万円あることが判明。実家が金持ちでよかったと心から感謝した(嫌味ですみません)。

500万円でも貸してくれればと願っていたところ、予想に反して2000万円の借り入れに成功。実家に現金があることのほか、前の家で借りた住宅ローンを7年間で1000万円以上返済した実績を加味してくれたという。母親に怒られながらも、実家に帰る度に野菜やら洗剤やらを盗んできた甲斐があったと心底思った。



こうして私は無事に住み替えができたわけだが、不動産に対する自分ならではの価値を改めて考えてみたところ、“人とのつがなり”を重視して家を買ったように思う。一番の支えである実家により近づき、今では親友と呼べるほど付き合いが深くなった保育園のママ友たちと同じエリアで暮らせる。それが私にとって、何よりも幸せなのだ。多くの人が暮らす東京でこそ、自分のまわりの小さなコミュニティを充実させることが快適に暮らす秘訣なのではないかと本気で思う。さて、まずはあのダサいドアノブから直さないと。

(Text: Ayako Takahashi- TPDL
(Illustration : Ayana Sasaki)

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