2017.08.28

Vol.19 渋い東京

渋い建物のルーツ!明治・大正ロマンが香るジョサイア・コンドル建築 BEST5

今、なぜジョサイア・コンドル?


三菱一号館美術館、ニコライ堂、旧岩崎邸庭園……。東京の渋い建物を調べていたら、そのほとんどに関わる人物がいた。その名はジョサイア・コンドル。英国人建築家で、幕末から明治にかけて日本の近代化のために来日した“お雇い外国人”のひとりだ。当時ジョサイア・コンドルに期待されたのは、日本人建築家の育成と欧米諸国に遜色ない西洋建築物を建てること。国の任務を終えたあとは三菱社内につくられた丸ノ内建築所(現在の三菱地所・三菱地所設計)の建築顧問となり、丸の内オフィス街や邸宅の設計を手がけた。

ル・コルビュジェ、フランク・ロイド・ライトは知っていても、ジョサイア・コンドルは知らない。かくいう私もそうだった。コンドルにはコルビュジェやライトのようなスタイリッシュさはなく、建築を中心としたオシャレな某デザイン誌で特集を組まれることは、これまでも今後もないだろう、と思ったりする。

三菱一号館美術館

それでも、私はジョサイア・コンドルが好きだ。無表情なコンクリートジャングルのなかで、明治ハイカラや大正ロマンといった時代の空気感を纏いながら残る建物は、たまらなくカッコイイ。2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて都心の再開発に拍車がかかるなか、少し足を止めて、西洋人に負けじと必死にものづくりをした人々の姿に思いを馳せてみるのもいい、と思うのだ。

三菱地所設計へ、聞きに行こう


かつて丸の内煉瓦街と呼ばれたエリアには、第一号館から第二十六号館までの三菱オフィスビル群があった。スクラップ&ビルドが激しい東京とはいえ、この地にあったものが跡形もなく全てが消えてしまったことに、大いに疑問が残る。なぜジョサイア・コンドル建築は現代に継承されなかったのか? その答えを求めて、三菱地所設計を訪ねてみた。

「一般に、特定の建築家の建築様式は継承されるものではありません。思想が弟子に受け継がれ、その弟子がまた次にと繋げていくものです。保存の面からすれば、コンドル作品は残っているほうです」

そう答えるのは、野村和宣さん。三菱一号館の復元設計者であり、ジョサイア・コンドルが顧問を務めた丸ノ内建築所の後継組織である三菱地所設計の一員だ。

三菱地所設計建築設計三部長の野村和宣さん 三菱地所設計 建築設計三部長の野村和宣さん。

「1894年に、赤煉瓦の三菱一号館が誕生しました。煉瓦造建築は日本の近代化の象徴であるという自負が三菱にはあり、それを引き継いだ三菱地所にもありました。歴史ある煉瓦造建築を守りながら、丸ビルに代表するアメリカ式のオフィスビルを造り始めましたが、戦後の高度成長期に丸の内を見た外国人に“赤煉瓦はスラム街を連想させる”と言われたことから、当時の三菱地所の社長が煉瓦造の建物を取り壊して一新する、丸の内総合改造計画に踏み切ったと言われています」

なぜ、三菱一号館は蘇ったのか?


再開発が進むなかでも、日本のオフィス街の原点である三菱一号館は、丸の内の煉瓦造建築の中で最後まで残っていたという。しかし1968年、ついに老朽化を理由に移築保存を視野に入れたうえでの解体が行われ、かつて一号館があった土地には、三菱商事ビルヂングが建った。

「近年になり、東京駅や日本工業倶楽部会館、明治生命館といった大正期から昭和初期に建設された歴史的建造物を保存する動きのなかで、明治期の建物がないことに気づきます。そこで当時の三菱地所の社長が、三菱一号館は復元できるように解体したはずであることを思い出し、元の場所に煉瓦造で復元することを発案しました」

40年あまりの時を経た2009年、一度は丸の内から退場をさせられた三菱一号館が、もとあった場所に復元された。重厚でクラシカルな赤煉瓦の建物が丸の内に蘇ったことに、歓喜の声を上げた人は多かっただろう。



「過去のことではありますが、一度壊した会社が同じものを造るなんて何事だって話ですよ。歴史的建造物の価値はオリジナルに宿っているのであり、レプリカとして中途半端に再現してもその価値は伝わりません。議論の末、社会的意義をもって忠実に復元するべきとの結論に至りました。旧三菱一号館は、構造として積み上げた煉瓦を表面に表しています。表面の煉瓦は当時の技術でできるだけ精度を高めて製作していました。現在の技術を使えば煉瓦の精度はさらに高まりますが、それでは三菱一号館ではない。私たちは旧三菱一号館の煉瓦の色・質感にできるだけ近づけるため当時の製造法にこだわり、明治時代の人が最高の精度で積んだ煉瓦造を復元することに注力したのです」

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