渋い東京

2017.07.18

Vol.19 渋い東京

“懐かしい未来”の専門店(後編)いま何故カセットテープなのか 中目黒waltz

流行は循環する…よく聞く言葉だが、その循環は単なる模倣で終わらない。時に、全く新しいものとして存在する。時代、人々、場所、それらの要素の影響は大きい。昔からあるものだけれど、今、この東京で新たなものとして勢いづいてきたカルチャーを紹介する。

沈黙から目覚めたカセット文化




おしゃれ俳優たちが通う街としても有名な中目黒。目当ての店はこの街の住宅街にひっそりと佇んでいた。その名は「waltz」。ファクトリー感漂う店内にはビンテージのカセットデッキをはじめとするカセットテープ関連の商品が整然と陳列されていた。その数なんと5000本。


CDリリースもされている有名曲のカセットテープも多く見られる。 世の中にはこんなに沢山の音楽テープがあるのかと感動するほどの本数が並ぶ。


ウォークマンタイプのプレーヤーをはじめ、デッキも豊富に扱う。渋いデッキは今見てもカッコイイ。

「カセットの専門店は世界中探しても珍しいと思います。よく“昭和のカセットが復活”みたいな取り上げられ方をするのですが、そうではないと思いますね。むしろ今までになかった新しいカセットテープカルチャーです」と語るのはこの店の店主、角田太郎さん。巨大ネットショッピングサイトAmazon Japanの立ち上げに参画してきた人物だが、彼がたどり着いた先は「カセットテープ」というレトロな響きの実店舗だった。

「テープは音が悪いのではないかと言う方がいますが、これは間違いで、テープも聞く道具によってその音は変わります。いいデッキを使えばいい音を聞かせてくれる。メディアの比較ではなく、プレーヤーの比較でいけば、あなどれない存在です。カセットテープは一番手軽に良質な音楽をわたしたちの耳に運んでくれるものだと思いますよ」(角田さん)。試しに、昔は高価格商品として売られていたプレーヤーを使い、カセットテープを聞かせてもらった。カチャッと蓋が開く音に懐かしさを感じた次の瞬間、スピーカーから響くその音色は、味のある素晴らしい音、古びているなどとは微塵も感じない。


メカ感が強い80年代のラジカセはスクエアな感じがクールな印象。
「私たちがカセットテープに出会った時代はそもそもの音の入れ方が違っていたのです」。角田さんによれば、当時のカセットテープは「コピー文化」だったと言う。「レコードが主で、カセットはその音を録音するものとの考えが強かった。レコードショップに行っても、カセットテープのコーナーは本当に小さいものでした。コピーの音は悪くて当たり前なのです。今、お店で販売しているカセットテープは直接音が録音されたものです。だから、ちゃんとしたマシンで聞けば本当にいい音が楽しめます」。

NEXT>デッキの良さは音で変わる

TOKYOWISE SOCIAL TOKYOWISE SOCIAL