2017.07.25

Vol.19 渋い東京

知っておいて損なし
芸者遊びで気をつけたいポイント5選


1)気を使いすぎないで、まずは楽しむ!
ついつい、芸者さんの美しさに緊張してしまい、かしこまった場になってしまいそうだが、普段通りに過ごしてもらって大丈夫だそう。

「美味しいお料理やお酒もきちんと楽しんでいただきたい。地域やそれぞれの花街の雰囲気もあるかと思うのですが、大森を中心にしている私としては、皆さんが楽しく過ごせるのが一番かと。羽目を外しすぎない程度に(笑)」

2)年齢を聞くのは野暮
芸者さんの美しさに見惚れて、つい「おいくつ?」と聞いてしまいそうだが、相手は女性。年齢はベールに包んでおこう。

「何歳なの?って言われると困ってしまうので、芸者衆の皆で、28歳です!って言っています(笑)。白塗りのお化粧をしているので、年齢不詳と思われるようなんですけど、そこは、そのまま年齢不詳にしておいていただけると助かります」

3)節度を持って接する
そして芸者さんの着物についつい触ってしまうところだが、おさわりは禁物。

「着物やかつら、時には肌に触れようとするお客様がいるのですが、そういったことは避けていただきたいと思います。お酒も入って、酔っ払ってしてしまうということもあるのだと思いますが……」

4)楽器に触らない
三味線などの楽器も珍しくて、つい弾いてしまいたくなるが、それらは芸者さんの商売道具。勝手に触るのは失礼。

「もし興味を持って体験してみたいという際は、必ず一声かけていただきたいと思います」

5)酒を飲んでも粗相はだめ
酒は飲んでも飲まれるな、の通り、酔っ払いの粗相には要注意。

「テーブルや畳にお酒をこぼしてしまう人、楽器をまたいで壊したりする人も時々いるので、ご注意いただきたいです」

芸者さんたちは、プロとして楽しませてくれている。遊びといえども、敬意を払って対応することが、お座敷遊びの極意なのだ。

芸者さんに学ぶ
女性が美しくなる所作と振る舞いとは


古来の文化や風習を大切にする花柳界の中で、極めて異例の男性であることや生業にすることの苦労や苦悩もあると言う。そんな多忙極まりない栄太朗さんは、いつでも美しく、女性が見習いたくなる所作と振る舞いを心得ている。



—女形芸者として、女性らしさを意識することはありますか?

「勿論あります。話し方しかり、しなやかな動きも意識しております。男性なので、女性としての振る舞いや目線も持ち合わせてバランスを保ちながらやっていきたいという気持ちは常にあります。しかし、女性には敵わないなぁと思うところは沢山ありますね……。最近は、男性ながらの骨太さや体型が気になるところがありまして、どうしたら良いものかと悩んでおります(笑)」

—しなやかな動きの基本は芸事の一つ、踊りが影響しているのでしょうか?

「そうですね、踊りなどの芸事が女性らしい動きの基礎になっていると思います。また、小さい頃からお座敷に出ており、着物でお仕事をさせていただきますので、自然と所作が身に付いているところもあるのかと思いますが、先輩のお姐さんから学ぶことも多くありますね」

—栄太朗さんの毎日の美容ケアを教えてください!

「お座敷の際は、白塗りの化粧が欠かせませんので、どんなに疲れて帰っても洗顔をしっかりすることが基本にあります。歯を磨かないと何だか気持ち悪いわって思う感覚に近いと思います。白いキャンバスに筆を使って色を乗せていく絵画のように、肌が綺麗でなくては化粧ノリも今一になったりするのでベースとなるスキンケアには気を使っています。また、お酌をさせていただく際に、手元や指先を見られることもあるので、寝る前のハンドケアも習慣の一つになっています」

TOKYOWISE編集部の男性スタッフが、「美しい!」と絶賛の栄太朗さんの手先と上品なお酌の一コマ。女性スタッフが、「やばい、明日からハンドケアやらなきゃ」と思ったのは言うまでもない(笑)

東京のお座敷遊びに変化の波!?


敷居が高い印象の“お座敷遊び”は、今や宴会や接待、イベントに芸者さんを呼んだり、外国人観光客も楽しめる機会が増えた。今回、取材に協力いただいた栄太朗さんのお姐さんにあたる奈実さん(『由の家』在籍)が女将を務める『大森茶屋』※3も、その一つ。昼の部、夜の部ともに完全予約制ながら、ジャパニーズ・エンターテインメントを満喫できる場として大盛況の様子。その理由は、明確な料金設定と舞台上で芸者さん達の踊りや唄などが楽しめる演劇的な要素があるからかもしれない。本来、お座敷遊びは、客が動くことなく座椅子の脇息(きょうそく)に肘を掛けて、ゆったり心地良く過ごしながら、側に寄ってお酌や話をしてくれる芸者さんのおもてなしと芸事を楽しむことがベースにある。

「一番大切なのは、お客様にとって楽しい一時、意味のある時間のためにお役に立てることだと思いますが、『大森茶屋』のように幅広い世代の方に気軽に楽しんでいただける場と、お出先様(お客様)に呼んでいただいて行く場とでは少し違いがあるように思います。簡単に申し上げるとお客様と芸者の距離感の違いでしょうか」

今回のように割烹料亭へ芸者さんを呼んで、お酒や遊びを楽しむのとはまた違う鑑賞型のお座敷遊びも体験できる大井海岸(大井・大森)は、東京の新スポットになる日も遠くなさそうだ。

TOKYOWISE編集部スタッフが自腹を切ってでも、「楽しかった♪ また是非!」と思うところには、栄太朗さんのおもてなしや気遣いの心があったということに集約されるかも。女性が見習いたい所作も含めて、今後も目が離せません!

(Text:Sayaka Miyano
(Photo:Masashi Nagao)

※1 http://www.vin-de.sakura.ne.jp/matsunoya/
※2 https://www.oomori-fujiya.com
※3 http://omorichaya.com

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