2017.09.04

Vol.20 アツい東京

おそるべき催眠作用!静かに響く清涼音楽 アンビエント・ドローンとは?

「アンビエント・ドローン」(以下A&D)というジャンルの音楽を聴いたことがあるだろうか。「アンビエント」ミュージックは、日本では「環境音楽」とも訳され(適訳ではない)、例えばラウンジスペースや、リラクゼーションを目的とした施設などで耳にしたことがあるかもしれない。基本的にはボーカルのない、インストゥルメンタル※1である。ゴールデンタイムに放送されるテレビドラマの主題歌になるような大衆的な音楽と対局にある、マイノリティで比較的マニア度の高い人たちに愛聴される。「ドローン」ミュージックの方は、変化のない低音がひたすら持続する音楽で、人によっては聴いていて不快感を得たり、「怖い」と感じる人もいるかもしれない。ポップ・ミュージックを聴く人には少々理解し難い音楽だといえるが、私にとっては聴いていて“無”になれる音楽だし、爆音で聴くと電気マッサージのようで気持ち良いのだ。これらの音楽は気持ちをリラックスさせ、落ち着かせてくれる効果があり、ストレスフルな現代人にとって、とても魅力的なのだが、ひとえに語るのは難しい。
そこで、海外でも作品を多くリリースする日本のA&Dミュージックシーンを代表するアーティスト、畠山地平氏に専門家の目線で、A&Dについて指南いただいた。

まずは畠山地平氏の作品を聴いていただこう。

A&Dはどうやって生まれた?


A&Dの歴史的背景なのだが、アンビエントミュージックとは、巨匠ブライアン・イーノが自分の創作した音楽に対して明確な方向性を与えるために名付けたジャンルである。イーノはフランスの作曲家エリック・サティが20世紀のはじめに提唱した「家具の音楽」に、アンビエント作品の着想を得たと語っている。「家具の音楽」とは、インテリアのように部屋の中に存在しており、生活の中に溶け込む音楽である。イーノが提唱したアンビエントは、「周りの環境を整える音楽」として、80年代頃から独自に発展していった。
そしてドローンミュージックとは、現代音楽の1ジャンルとして、60年代後半から70年代頃にアメリカの作曲家ラ・モンテ・ヤングがインド音楽に着想を得て発展させてきた。バッハの時代のクラシック音楽にも使われていた持続低音としても馴染みの深いパートだが、隠れていたドローンの部分だけを取り出して提示したミニマルミュージックである。抽象表現主義のバーネット・ニューマンのような美術家と影響し合っている、と畠山氏は言う。

2000年代に入り、テクノロジーが急速に進歩したことにより、楽器や録音機器など個人で制作することのできる宅録環境が劇的に向上。それにより、アンビエントとドローンミュージックが融合し、2010年には完全に定着して、今もアーティストによって発展し続けているということである。

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