2017.12.07

Vol 21.学ぶ東京

囲碁レッスン、開始!




通常囲碁は19×19本の線が引かれた19路盤で行うが、初めて囲碁を学ぶには7路盤がおすすめだとか。私の中で囲碁はルールが難しいものと思っていたが、実際に説明を受けてみると、意外とシンプルなことに驚かされた。ルールはたったの5つ。

①黒、白、順番に打つ
②陣地の多いほうが勝ち
③相手の石の道をふさげば取れる
④石を打てないところ、打てるところがある
⑤コウはすぐには取り返せない

①②③は楽勝で、④⑤は文言だけでは理解不能だが、実際に打ってみると何となくわかってくる。



せっかくなので、取材に同行していたカメラマンのKちゃんと一局打ってみることにした。

最初にぶつかった壁が、オセロとの混在だ。オセロはひとつの石を取るのに2個の石で挟めばいいが、囲碁は4つの石で挟まなければならない。オセロに慣れ親しんでしまった脳は、つい線ではなく枠で考えてしまうクセがついている。さらに、碁盤が石でぐちゃぐちゃになってくると、どこを取ればいいのか見極めが難しい。そして、いまだにわからないのが終局の仕方。お互いの陣地が確定したら終わりなのだが、どこまで打ったら終わりなのか、その判断がつかないのだ。

「小さい盤だと、終局の経験がたくさんできます。7路盤をおすすめするのはそういった理由からです。囲碁はルールがシンプルすぎることがかえって災いし、その意味を実戦の盤上で理解するのが難しいんです。この難所で挫折してしまう初心者も多いですが、この壁を越えられれば、生涯の趣味になるでしょう」

ただ写真を撮るためだけにやってきたKちゃんもすっかり囲碁に夢中。取材そっちのけで、続けざまに二局打ってしまった。

目指せ、初級者クラス!




私が参加できなかった初級者対象クラスは、「詰碁」といわれるトレーニング問題から始まる。いくつもの詰碁を解き、パターンを覚えておくことで、実戦に役立てようというもの。解き終わったら講師が問題の解説を行う。



詰碁が終わったら30分間の対局。この対局は「指導碁」と呼ばれるもので、勝負にこだわらず、棋力向上のために打つ試合。対局後に開始から終局までを振り返るため、打った順番を記録に取りながら行う。

対局記録はパソコンに入力され、瞬時にプリントアウト。この記録をもとに、「あの手が良かった」「この手がまずかった」と講師が実戦の手直しを行う。この振り返りこそが、上達するための大切なポイントだ。

囲碁の魅力って?




「囲碁は中国で生まれ3000年の歴史を誇ります。持ち時間を計るぜんまい式のチェスクロックはデジタルになったものの、基本的な道具とルールは一切変わっていません。囲碁がいかに完成されたゲームであるかがわかります」

囲碁の魅力をそう語る江澤さん。囲碁は奥深いゲームと言われているが、たかだか7路盤でもそのことを十分に実感した。右脳と左脳の両方を使うというか、これまでの人生の中で経験したことのない脳の使い方をするのだ。



「囲碁は別名“手談(しゅだん)”と呼ばれ、言葉を交わさなくとも碁を打てば心が通じ合うと言われています。実は私、バックパッカーをしていた時代があるのですが、いろんな国でさまざまな人種の方と囲碁を打ちました。言葉が通じなくても、この人は慎重な人生を歩んできたのだなとか、人の言うことを聞くのが嫌いな人だなとか、すぐわかります」

私はカメラマンのKちゃんに全敗してしまったが、その敗因は、石を取ることに夢中になっていた私に対して、Kちゃんは陣地を広げることに目を向けていたから。それこそ、目の前の締め切りに追われる私らしい囲碁の打ち方だったのかもしれない。



人気囲碁漫画『ヒカルの碁』を借りて帰路に着いた私は、むさぼるように読破。日本棋院の囲碁入門アプリをダウンロードし、講義と練習問題に励む日々だ。そして早く誰かと囲碁が打ちたい、と強く思うのだった。

(Text:Ayako Takahashi-TPDL)
(Photo:Yuuko Konagai)

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