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2015.03.27

vol.5 TOKYO STANDARD
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洋服の中でも最もスタンダードなアイテムのひとつとして「シャツ」という存在がある。年齢関係なく誰もが袖を通すアイテムだ。しかしながら最近の街を行き交う男性陣を観察していても、はっ!とさせられるほど、シンプルに格好よく着こなしている人を殆ど見かけなくなった現状もこれまた事実。



そこで今回は、その「シャツ」を粋に着こなす男性がもっといてもいいのではないか?という勝手な疑問から、学芸大学でトラディショナルとスポーティーをブランドのキーワードにコレクションを展開するメンズアパレルブランド「VAMP (ヴァンプ)」のデザイナー・松尾健成氏にインタビューを敢行。独自の解釈で提案する「シャツのすすめ」を思う存分語っていただいた。

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本来のシャツというもの

松尾健成さん (以下健成さん):まず僕が思うシャツとは、本来下着と同じ感覚で身に付ける物ということです。そういう考えからすると、単純に枚数は持っておきたいですね。しかし、分かりやすくスーツベースで現状の世の中の流れを見ると、自分を飾るファッションアイテムとしてではなく、所謂手が出しやすいリクルートスーツに寄ったシャツのチョイスになってきてしまっているのかなと個人的には感じています。本来男性がシャツを着るということは、人に見せる装いとして一番清潔感を感じさせることが出来るアイテムなんですけどね。もちろんカットソーや女性であればブラウスなども素敵なのですが、洋服を創る側からすると、メンズ服はやっぱり着ている人を綺麗に見せるアイテムとしてはシャツが一番スタンダードなんじゃないかなと。

デイリーユースで男性に好んで着てもらうとなると、シャツだけでコーディネイトを考えるのはちょっと難しいというのはありますね。そこで入口としてはまず、色で楽しむのは重要です。例えば、「今日は天気がいいからこの色を着よう。」とか、「逆に天気が悪いから、気持ちも上がるような明るい色を着てみよう」とか、ちょっとした理由付けを探してみるのは第一歩になるんじゃないかな。あとは、とにかくルールなどは考えずに「シャツを手に取って着る」ってことです。それが習慣にかわり、一歩上の着こなしにも繋がるのではないかと。結局どんなタイプ、色、生地のシャツを着ていても、似合っているか似合っていないかは自分では分からないじゃないですか。そこも凄く重要だと感じている部分で、まず誰に対してそのコーディネイトをアプローチしているかって事。そういう心使いが、いまファッションに一番欠けているのではないかなと感じています。大前提として、自分の為に服を着る事は当たり前の事。でもその先を考えた時に、相手のことやシチュエーションを思うということに行き着くはずなんです。それによって遊びのシャツを選ぶのか、堅い印象のものを選ぶのかと試行錯誤することで、自分らしい着こなしが出来るんじゃないですかね。

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日本人という国民性

健成さん:僕たち日本人という人種は、特にシャツそしてスーツに対して、「右へ倣え』だと思う時があります。それはファッションの文化に対するどこかコンプレックスみたいな物があるのかなと思ったりします。イタリアのシャツがいいと言えばみんなそれしか買わない。それって全く面白くないですし、ファッションとして楽しんでないのかな。確かにイタリアのシャツ工場の中には柔らかく、繊細で綺麗なものもあります。もちろん歴史もそれなりにあります。しかし流行やイタリア製というだけで購入することはいいとは思えないんです。人と同じ物を着る事がどこかホッとするというのは分からなくもないんですが、せっかく格好付けてオシャレするんだから、楽しんで選んでもらいたいですね。自慢する為のシャツではなく、人に喜んでもらえるシャツを買ってもらいたいというか。日本にもいいブランドは山ほどありますから!シャツってブランドや作りだったりにうるさいシーンだと思われがちなんですが、そんなことを一切気にしないで自分が綺麗と感じたり、いいなと思ったらとにかく袖を通すこと。このシャツを着てみたいなって自分が思った感覚をもっと日本人は大事にするべきです。知識だけあってもシャツは似合わないですからね。結構、仕立てであったり、手縫いでどうこうとかスタンダードなアイテムだけに色々言われがちですが、僕は正直まったく興味がない部分です(笑)。

シャツをデザインするということ

健成さん:僕がデザインする際に2点だけ重きを置いていることがあります。それは、着た時に「きっちりと見える」という点と、着ていて「楽」という点ですね。見た目はばっちり決まっていながら、着ている人をどれだけ甘やかせられるかという逆の発想というか、実は当たり前というか。格好良くても、着ていて疲れてしまうのは、それだけでハードルを上げてしまうとも思いますしね。あとは色合いです。ブルーでも色々なブルーがあるので、自分がいいと思える綺麗な色を選んでいます。

そんなコンセプトで作っているので、別にパジャマの代わりのドレスシャツでもいいんですよ。ドレスシャツにスウェットパンツで出かけたって構いません。それで、着終わった物は、ちゃんとメンテナンスしてあげて、また次の活躍の場まで寝かせて上げると。綺麗に手入れさえしてあげれば、デイリーに着る物としては本来そうあるべきなんです。カットソーより長持ちもしますしね。確かに歴史があるアイテムですが、それが歴史の勉強になってしまった時点でつまらない物になってしまいますよね。ファッションでなくなってしまうというか。

これは僕個人の意見ですけど、今のファッション誌を見ていて感じるのは、一般の人には買えないような値段の洋服を掲載して突き放すけど、実際は「買ってねっ」というアプローチだから、読者は混乱しますよね。だって、4万も、5万もするシャツを一杯見せる訳ですよ。でも大半の雑誌を見ている方って一般層であって、決して富裕層とは言えないし(笑)。その辺りのメディアとの温度差も、今後はファッション業界でくくった時に課題になってくるんじゃないですかね。ファッションとして物が着たいのか、うんちくを言いたいがために洋服を着るのかで意味合いが全然変わりますから。どこのシャツがいいではなく、どうコーディネイトしてどう着こなすかが重要な気がします。

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シャツが持つ色気とは?

それはシャツに限らず、その人の事を思うところからすでにスタートしていますよね。その人と過ごす時間全てを考えることで自分自身の色気が出てきたり、立ち振る舞いが女性の前でエレガントになったりするわけです。変な意味ではなく、やっぱり男性は常に女性からの視線を本来考えるべきだと思います。そうじゃないとお洒落していても盛り上がらくないですか (笑)。決して悪いことじゃないと思います。自分の意識を常に持ち上げておくというのは、シャツやスーツを着るというだけでなく、ファッションとして絶対的に大切ですから。それこそ、物に頼りきってしまうと、自分に自信がないということにも成りかねないですし。女性と一緒の時は、男性が目立っているのは僕は格好悪いと感じる方なので。そういう細かい思いやりの積み重ねがが、結果「色気」に繋がっていくのではないでしょうか。

やっぱり男でも色っぽくあって欲しいと思っていて。それは、変に胸元を開けてシャツを着るとかそういうことではなく、日々淡々と自分のスタイルを通しながら生活をするところから。その積み重ねによって、服をきちっと着るということに繋がると思っていて。男の人が肌をどれだけ見せないで色気を出すかみたいなことって中々難しいですけど、それが出来る人は素直にに格好いいなって思えます。そして、スパイスとしての不良っぽさはこれもまた重要かと。ましてや東京のような場所だと尚更です。

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シャツのすすめ

「女性にモテたいのならばシャツを着ろ」ですかね (笑)。清潔感のあるシャツをいつもメンテナンスして着ていて、色や素材で遊んだり、アクセサリーのチョイスや時計の色など様々な要素が入ってくるから、シンプルな着こなしだけど不良感だったりを感じでしまう部分だと思います。そういのが、洒落っ気だと感じます。それと忘れてはいけないのは、シャツを着る動機はいつも不純です!(笑)。女性を嫌いな男はいないですし、絶対意識しています。それが重要です。それともう今までの話を前提として、とにかくシャツを着ることを楽しむ事です!頭で考えていても何もならないですし、シャツを勉強したってオシャレにはならない。楽しみながら経験を積むのが一番です!

最後にシャツを2枚ほどご紹介
s_shits TG SHIRTS (SAXE BLUE)(画像左)
一見、カジュアルに見えるが、縫製や仕上げにこだわったアウトポケットのサファリテイストシャツ。ツイル素材の綺麗な見た目が、真夏の太陽の下で活躍してくれるアイテム。
¥20,520 (税込)

GINGHAM CHECK SAFARI SHIRTS(画像右)
ギンガムチェックというクラシックな柄で製作した、サファリシャツ。背中にプリーツが入り、ゆったりと着れるのが特徴的。Tシャツや、ポロシャツの上から羽織物としても活躍してくれる。
¥23,760 (税込)


(Text:Tatsuya Nakamura (R.G.C))
(Photos:Masaru Sato (MALULANI))

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