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2015.07.24

vol.6 TOKYO LOVE
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約束、待ち合わせ、ぶらつく、食べる、飲む、寝る。シチュエーションは違っても、デートの大半はこの繰り返しだ。ひとめ惚れだろうが、出会った瞬間に運命を感じようが、回数を重ねるごとにルーティン化していくお決まりのパターンは、やがて男と女を飽きさせる。

想定内のデートだとラクだし安心だが、それにあぐらをかくのも人の性。別にきらいになったわけじゃないのに、二人のあいだにはどこか気だるい空気が流れ出し、「あの熱い気持ちは一体どこに行ったんだろ?」と自分の冷めっぷりに驚いてみたり、離れてみたり、またくっついたり。

“おもしろきこともなき世をおもしろく” と言ったのは長州藩士の高杉晋作だが、現代のデートにも、ありきたりのパターンを抜け出すためのちょっとした工夫が必要なのだ。サプライズプレゼントや旅行より、もっと経済的で簡単な方法がある。それは時間の使い方と行く先を変えること。今回胸を張っておすすめしたいのが、大相撲観戦デートである。マンネリカップルにとっては刺激的、愛を育み中のカップルにとっても、スパイスになること請け合い。それではさっそくご覧いただきたい。

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わたしを“SUMO”に連れていって!


1月の初場所、5月の夏場所、9月の秋場所。本場所は年に6回開催されるが、この3つが両国国技館で行われる「東京場所」で、それぞれ期間は2週間。連日、ひしめく人たちで賑わう。

チケットには、マス席と椅子席の2種類がある。マス席は、国技館の「相撲案内所」のホームページから購入するか、事前に電話予約が可能。少し値は張るが、入場券から観戦中のお弁当や飲み物、おみやげまで、トータルにお世話してもらえて、一般客とは別の案内所入り口からスムーズに入場できる。お出迎えから席まで案内してくれる案内人もいて、VIPなおもてなしが満載。

一方、椅子席は、チケット大相撲やチケットぴあなど、前売り発売所で購入可能。インターネットももちろんOK。当日券も約300席あるが、今年の初場所でも朝7時にはすでに国技館の前には長蛇の列が…。二人で並ぶのもいいけれど、やはりここはスマートに、事前の購入をおすすめしておきたい。

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国技館はワンダーランド


JR総武線両国駅の西口を出てすぐ、国技館の南門は、力士をはじめ、関係者の入口である。本場所開催中は14時ごろから、幕内力士が続々場所入りしてくる。ひいきの力士をひと目見ようとするファンたちで、いっぱい。この日、通りがかりに見かけたのは千代丸。力士は皆、道路沿いに車が止まると、ささっと出てきて、さささっと門をくぐり、支度部屋に入っていくが、間近でお目にかかれるまたとないチャンス。もしすでに、彼や彼女の気に入る力士がいたら、出待ちも観戦前の楽しみのひとつになるだろう。

南門を通りすぎると、正面木戸口へ。ゲートには、往年の名力士だった親方たちがずらりと顔をそろえる。彼らがチケットの半券と引き換えに、取組表を手渡してくれるのだ。こちらは、今年の5月場所のもの。力士たちの出身地、身長、体重と共に、これまでの取組結果も書かれている。

s_torikumihyo©日本相撲協会 そしていよいよ館内へ。大相撲の本場所では、朝8時半、9時ごろから取組が開催されていて、序の口や前相撲の若い力士たちが顔を連ねる。午後になるに連れて、十両、幕内、横綱と位が上がるため、観客もそれに比例して増えていき、満員御礼となるのが常。でも、チケットがあれば、午前中からの観戦ももちろんOK。

取組は次から次へと開催されるが、観たければ観る、ちょっと一息入れたいなと思えば、合間に抜け出し、館内を気の向くままに歩き回ることができる。無料入場の相撲博物館あり、おみやげ屋あり、売店あり。相撲案内所の集まる通称「お茶屋通り」には、たっつけ袴姿の「出方さん」があちこちにいて、江戸時代にタイムトリップしたような情緒気分も味わえる。大相撲の観戦スタイルはフリーダムに溢れているので、1日じゅういても、たっぷり楽しめるのである。

s_yakitori©日本相撲協会 土俵に一番近い別名“砂かぶり”のタマリ席以外は、好きに飲食しながら、観戦できるのも嬉しいところ。お酒もOKなので、みんな大いに飲みまくっている。国技館名物の手作り焼き鳥や幕の内弁当など、フード面でも事欠かない。中には、酔っ払って、外のベンチで居眠り休憩している人の姿もちらほら…。初めて行った時、「ここはもしや、マンモス級の大衆居酒屋?」と驚いたほど、賑やかでお祭りのようなムードだ。

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相撲はやっぱりスリリング


さて、こちらは、午後3時45分ごろの幕内土俵入り。テレビで放送される結果はすべてこの“中入”からだ。色とりどりの化粧廻しを締めた力士たちが土俵を一周する姿は圧巻。次いで、最高位の横綱土俵入り。太刀持ちと露払いを従えて、四股踏み、せり上がりなどの所作を単独披露する。厳そかな空気の中、会場は一気に華やぐ。

BGMや何か派手なパフォーマンスがあるわけでもなく、取組は、皆の手元にある取組表の通り、淡々と順に行われていく。私が思うに、大相撲の面白さは、勝つか負けるか、体当たりの一発勝負であることだ。プロレスだと、5カウント以内に止めれば反則攻撃も認められる。ボクシングは10カウント以内に立ち上がれば、リベンジのチャンスもあるが、大相撲は、一瞬の技がすべてを決める。その刹那さが観る者をゾクゾクさせてくれるのだ。

独特の開放感が漂う国技館で、非日常なスリルを二人で味わう。このコントラストがデートを盛り上げ、有意義な時間にしてくれる。大きな手の平から、噴水のように弧を描いて土俵に撒かれる塩。「佐田の海~!」「豪栄道~!」と観客席のあちこちから飛び交う声援。パチンパチンと力士の肌がぶつかり合う音。一つひとつ意味を持つ行司や呼出しの儀式的な動き。1400年の歴史を誇る伝統アミューズメントパークは、恋のカンフル剤。一度はぜひ足を運んでみて欲しい。

(Text & Photo: 岸 由利子)

日本相撲協会公式サイト
http://www.sumo.or.jp/

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