Try Group Blind Date

2015.06.04

vol.6 TOKYO LOVE
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「誰かいい男(ひと)紹介して~」
「今度の飲み会、可愛い女(コ)来るかなぁ」


1日数回はこんな台詞を投げ掛けられていた頃を思い出す。と言うのも、当時周囲には±5歳の独身男女がわんさかいて、例外なく誰もが「気さくな集まりを通じて運命のロマンスが芽生えること」に大きな期待を寄せていた。「あいつに頼めば誰かと繋がるかもしれない」「ひょっとしたらいい出逢いがあるかもしれない」。つまり「合コンサーバ」のような存在だったわけだ。
見るものすべてが材料となるような仕事に就く者にとっては、悪くはない役回りだった。心に残ったことはノートに忘れずに記しておけばいい。それに寂しい夜も、皆がいれば気が紛れることだってある。

こうして1年200日以上、夜は飲み会(合コン)に費やしたと思う。まるで往年のイチローの年間安打数並みの偉業だ。こっちの方が本職かと錯覚してしまうほど、会社の仕事の合間にメールでの打診、やり取り、日時や店のブッキング、お得なメニュー設定などに気を遣った。金も使った。一晩平均1万近くとして年200万。これを数年繰り返したのだから、軽く1000万以上は確実に使った。
そして店での飲み会に飽きてくると、眺望の良い空間に住んでいる仲間のところでホームパーティを開いたり、昼下がりの公園でBBQパーティをしたり、夏はホテルのプールサイドを借り切って大規模なパーティを催し、大勢で愉しみを分かち合うようにもなった。

自然と酒や料理にも詳しくなり、男女の知り合いも増えた。話すことによって視野や知識が広がったり、人の数だけ異なる苦悩があることも知った。常連店のオーナーと気さくに微笑み合うこともあれば、飲み会が縁で大きな仕事を得たこともあった。
運命のロマンスも宝クジ的確率で奇跡的に訪れることもあり、結婚して子供を授かって家庭を築く者もいれば、その後すれ違って離婚したり、何年も付き合ったのに破局してしまったカップルもいる。それでも運命の相手と出逢ったと感じた時の、あのうっとりとするような夜の時間を忘れたことはない。

多くの見知らぬ人と出逢う機会があるのだから、毎回愉快なことばかり起こってはくれない。「恋愛裁判所」の弁護士、「恋愛株式市場」の証券アナリストとして、他人の相談事やクレーム処理に追われたこともある。
調子に乗り過ぎて勘違いされた夜。余計な言動で相手に不快感を与えてしまった夜。金持ちでないという理由だけで屈辱を受けた夜。死に金を使って損失を受け入れた愚かな夜。そんないくつもの虚しい夜を乗り越えて来た自負がある。非情な人間になれなかった誇りがある。こうした飲み会(合コン)を入口にした経験や成長は、「人間力」とか「美学」というジャンルを叩き込んでくれた気がする。

同じ場を共有した異性の数は約5000人。ノートに書き連ねてきたメモの量も膨大になった。机上でやっつけたマーケティングの悪臭がするハウツー記事より、経験で物事を語る方がよっぽど人の役に立つし、唯一無比の価値がある。
これから並べることは、お金(血)と時間(汗)と健康(涙)を使いまくり、時には精神まで抵当に入れた男たち(一部女たち)によるリアルな語録集だ。

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まずは恐るべき女たちとの遭遇!!

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