vol.6_title_Same Sex Marriage

2015.07.11

vol.6 TOKYO LOVE

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──ところで、ミナさんは、東京国際レズビアン&ゲイ映画祭に長く関わられているそうですね。

ミナ:第9回から関わっているのでほぼ15年になります。レズビアン、ゲイだけでなく、トランスセクシャルなど、セクシャル・マイノリティを幅広くテーマにした映画祭で、今年は7月11日から17日まで、シネマート新宿でレイトショーを上映。17日から20日は、スパイラルホールで開催されます。

世界的には、「Queer Film Festival」や「LGBT Film Festival」など、呼称が変わるという流れがありますが、日本では、もう少し浸透してからでもいいんじゃないかと話しています。パーティのオーガナイズだけでなく、協賛・渉外も担当させていただいてきましたが、今でも、電話口で企業の担当者の方に、「東京国際レズビアン&ゲイ映画祭の~」と言うと、「え!」という反応が返ってきますね。

──露骨にびっくりされる感じですか?

ミナ:はい、“レズビアン”や“ゲイ”という言葉を復唱できない感じですね。設立から24年経った今も、まだ伝わりきれていない部分があるので、そこも踏まえて名前を変えていないんです。

──今年のみどころは?

ミナ:15歳から22歳のLGBTが所属するボストンの劇団「トゥルー・カラーズ」の青春ドキュメンタリー『トゥルー・カラーズ ~愛について考えた一年間~』や、カミングアウト、恋愛、家族との関係を描いた『海外短篇集』、アルバニア人兄弟のギリシャ縦断珍道中を描いたロードムービー『クセニア』等など、多彩な作品が揃っています。

あと映画祭とは少し話が反れますが、昨年上映したアメリカの同性婚をめぐる歴史的な裁判のドキュメンタリー映画『アゲンスト8』が、今年、全国ロードショーで公開予定です。映画祭の上映作品がロードショー化されたのは、これが初めてですね。

アルミ:シニカルにコミカルに。アメリカは、やっぱり見せ方が上手ですよね。みんな号泣でした。セクシャリティを越えて、愛とは何かを問いかける作品、ぜひ観てみていただきたいです。

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──最後にお聞かせください。お二人は、5年間で1万人のLGBTポートレート撮影を目ざすカミングアウト・フォト・プロジェクト『OUT IN JAPAN』にも率先して参加されています。「私たちが出ることで、誰かのためになるのなら」と今回の取材も受けてくださいました。次の世代に向けて扉を開きたいという気持ちは強いですか?

アルミ:ここ数ヶ月、メディアがLGBTの特集を組む中、さまざまに取り上げていただいていますが、その根っこには、何らかの形で伝わって、誰かの勇気に変わればいいなという想いがあります。今、私たちがこうしていられて、色んな方たちが活動できるフィールドがあるのは、上の世代のLGBTの方たちがベースを築いてきてくれたからこそだと思うので。

先日、ずっと自分のセクシュアリティを打ち消してきた女性とお話する機会がありました。渋谷区の同性カップル証明書条例のニュースを受けて、「浦島太郎状態だったけれど、ひとつずつこれから向き合っていきたい」と前向きに捉えていました。ミナと二人で会ったのですが、抑えていたものが溢れ出したみたいで…。

ミナ:初対面で大泣きしちゃったんですね。本当は彼女みたいな人が、もっといっぱいいるんだと思います。別に男らしさ、女らしさをなくそうとしているんじゃなくて、女だから女らしくなくちゃいけないとか、男だから男らしくなくちゃいけないとかはないんじゃない?という話です。それと同性を好きなのか、異性が好きなのか、性別関係なく好きなのか、好きにならないのかも、本当に人それぞれで、もっと自由でいていいと思います。

アルミ:私は、自分のセクシュアリティを受け入れられた時、自分のことをやっと好きになれました。
男らしくとか、女らしくとか、何かにはめこまなくても、自分らしくいられれば、それが一番幸せなことだと思います。


今回、さまざまな同性カップルにお話を伺ってきたが、5年、6年と長く付き合っている男性カップルからは、「ゲイが多く住む渋谷区で条例が始まったのはいいことだし、広がっていけばといいなとは思う。でも、今の僕たちには直接的には関係がないかも。どちらかというと、この制度を作ったストレートの人たちの子供が成人する10年後くらいに、初めて意味を持ちはじめるのでは?」という意見が挙がった。

その一方、アルミさんとミナさんのように、結婚には直接結びつかなくても、二人の関係を見直すきっかけになった場合もあれば、大泣きした女性のように、カミングアウトできずに悩んでいる人にとっては、条例の存在自体が精神的な支えや勇気になる場合もある。

実際、「結婚したい」 「子供は欲しい」というカップルは約8割、30代後半~40代のカップルからは、「病気や葬式など先々のことを考えると、やはり法的な制度の必要性は感じる」という声も多かった。これを踏まえると、今回の条例成立は、今後のLGBTにとって、大きな一歩前進といえるのではないかと思う。個々にとって、今すぐ何かの力を持つわけではないが、この国がダイバーシティ(多様な個性)を尊重する社会になりつつあることの証であることはまちがいない。

(Text & Photo: 岸 由利子

OUT IN JAPAN
http://outinjapan.com/

第24回東京国際レズビアン&ゲイ映画祭(※)
http://rainbowreeltokyo.com/
2015/07/11(土)~7/17(金) @シネマート新宿※
2015/07/17(金)~7/20(月・祝) @スパイラルホール
※2016年開催より名称が「東京国際レズビアン&ゲイ映画祭」より、「レインボー・リール東京」に変更となりました。(2017年7月編集部追記)

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