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2015.08.05

vol.7 TOKYO COST PERFORMANCE
イラストカラバリ

東京都心での子育て事情


今年の1月、渋谷区の病院で女の子を出産し、約半年。目黒区の自宅で子育てをしているが、散歩するにも歩道が狭くベビーカーのすぐ横を車がびゅんびゅん走り、近所のスーパーは通路が狭いのでベビーカーで入ることができず、抱っこひもに子どもを入れ、根菜や水、牛乳などを買った日には両手にそれらを下げ、筋トレと思わなければ拷問でしかない重量の荷物を産後の体に課して、家までの距離を歩かなければならない (最近は周りを見習ってエルゴ(※1) で前抱っこ×自転車という技でかなり楽できるようになった)。我が家(賃貸マンション)の向かいに、以前は一軒の土地だった場所を3軒同じ造りの一戸建が並び、その一軒に同世代(30代)の夫婦が越してきたのだが、奥さんがうちの娘と2週間違いで男の子を出産したらしい。奥さんとは私が散歩に行くタイミングなどに玄関先でばったり会うので、よく立ち話をするのだが上の子(3歳)が保育園に行っている間、生まれたばかりの息子を預けるためにせっせと保活(※2) しているという。目黒区は今年度の待機児童数が過去最多となり、状況はとても厳しい。それでも、一等地で一戸建てを購入したために高い住宅ローンを支払わなければならず、夫婦フルタイムで働かないと生活が回らないという。
こんなにも東京で子育てするのはお金がかかるわりに色々と不便だし、そのうえ決して環境がよいとは言えない。うちも私が休職中で子どもひとり増えただけで、家計はぎりぎりだ。
そんな中、小・中学校時代の同級生が子どもを5人生み、大田区で子育てしている様子をFacebookで発見した。子育てに疲れきっている感じはなく、それぞれの子どもの誕生日に外食したり、ディズニーランドに頻繁に出かけたりと、とても充実した日々を送っているもよう。子ども一人育てるにも共働きしなければ余裕がでなかったりする都心で、一体どのように子ども5人の家計をやりくりしているのだろうか? もちろん、ご主人がかなりの高収入ならわかるが、同じ品川区の下町出身で、エリートを好むようなタイプの子でもなかった。そこで、ぜひ子育てや家計のやりくりのアドバイスを請うべくFacebookからDMを出し、この友人Mにおよそ20年ぶりに会うことにした。

イラストカラバリ

1人も5人も変わらない!?


地元のファミレスで待ち合わせをしたが、末っ子のAちゃんを連れてきていたMは20年前の面影が色濃くあり、すぐに見つけることができた。互いに近況などひとしきり報告しつつ、ずばり「やりくりできてるの?」と疑問を投げかけてみた。10代の頃と変わらないおっとりした雰囲気はそのままに、やはり5人もの子どもを育てている母然としたMは、はつらつと語ってくれた。

まず、子どもの構成は上から長女(14歳・中2)、次女(12歳・小6)、長男(9歳・小3)、次男(6歳・年長)、三女(2歳)の5人なのだが、今のところ食費くらいしかお金がかからないという。もちろん、児童手当てという制度の助けもあるのだが、Mいわく「1人育てるのも5人もそう変わらない。1人目と2人目が生まれたばかりのときが一番大変だった」という。
まず食事だが、大家族を特集したテレビで見うけられるような大皿に盛り付けると取り合いになるので、ワンプレートにそれぞれ決められた量をあらかじめ取り分け、おかわりなしで終了。なるほど、たとえ2人や3人でも何度もおかわりされたら5人分作るのと同じ。無駄なく、“丁度よい量”を極めているわけだ。また子どもが5人もいたらその世話だけでとても自分の時間など持てないのではと思われるが、上の子たちが下の子の世話を競ってしてくれるので一番上がある程度の年になれば子供たちだけで留守番させ、自分は外出できるという。上の2人は無理だったが下3人は保育園に入れ、今は週3でパートもしているらしい。
M流の子育てノウハウを聞き、都内で子だくさんでも、楽しく(コスパよく)子育てできる人についてまとめてみた。

“東京子育てコスパ7カ条”


・家のことで、細かいことは気にしない。(炊事、洗濯は最低限するが、部屋が散らかっていても大丈夫)

・子どものことでも、細かいことは気にしない。(たまには拾い食いも菌に免疫ができてOK!)

・こだわりすぎない。(自然派な食べ物、ブランドのお洋服などおとなの“こだわり”はお金がかかる)

・旦那さんが家事の手を抜いても文句を言わない。(=言わせない)

・安産である。(難産を経験すると、出産が怖くて次が作れない)

・お互いの両親、または身近で手を貸してくれる人がいる。(または、誰かに頼ることが上手)

・とにかく、子どもが好き。(これに尽きます!)


芸能人・モデルを筆頭にベビーラッシュで東京でも第ニ子・三子を出産する人も増えている。もしもコスパを気にするなら、4人目、5人目を作ってみてもいいかもしれない。
でも、何より大の子ども好きというのが大前提でね!

(Text:Nao Asakura
(Illustration:イケダコウスケ)

※1エルゴ=ハワイで誕生したベビー用品ブランド”Ergobaby”の略称。抱っこ・おんぶひも(ベビーキャリア)が日本でもその使いやすさから絶大な人気を得ている。

※2 保活=子どもを保育施設に入れるために保護者が行う活動子どもを保育所に入れるために保護者が行う活動。都市部では、保育所の入所希望者が定員を上回り、入所できない待機児童が多数いるため、入所選考の際に有利になるように就労条件を変更したり、入所しやすい保育所の近くに引っ越したりするなど、涙ぐましい努力をしている保護者も多い。(知恵蔵2015より引用)

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