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2015.08.13

vol.7 TOKYO COST PERFORMANCE
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先日「若い人ってすぐ“コスパ”っていうのね」と母に言われた。そう、私たちは何にでもコスパの良し悪しを考え、能率でモノを推し量りがちだ。「安い・早い・うまい」がよしとされた時代の風潮の名残りかもしれない。では、一般にコスパの悪い人ってどんな時間の過ごし方をしているのか? TOKYOWISE的にコスパの良い人の時間の過ごし方と比べて考えてみた。

コスパの良い人Aくん


・デートや会食では、食べログで点数の高い店を調べて予約
・電車などの移動中はスマホでSNSを閲覧し、常に情報収集
・どこへ行くにもGoogle mapで最短距離を採用
・会話中、知らない単語があればすぐにスマホで検索

[Aくんの行動パターン例]


待ち合わせの場所からそのエリアで人気のレストランにGoogle mapを見ながら迷うことなく到着。
食事中、会話で話題に出たことはすぐにスマホで検索し、相手の知らなかったことまで付加して披露。
観たい映画があったら評判を口コミサイトで調べ、つまらなそうだったら評価の高いタイトルに変更する。
初対面の人や数年来の友人に会う前には相手の近況をFacebookの個人プロフィールや投稿でチェックし、共通の話題を見つけておきたい。

コスパの悪い人Bさん


・日本にローンチ直後の話題のスウィーツ店に何時間も並ぶ
・自撮り棒を使って撮った“証拠”をSNSに常に投稿
・方向オンチなのに地図を見ない
・毎晩愚痴を漏らすために電話してくる友達と何時間も話す

[Bさんの行動パターン例]


人が殺到するであろう週末の昼過ぎ、日本に上陸したばかりの原宿周辺のパンケーキ店へ向かうも場所がわかりにくく迷ってしまい、到着する頃にはピークを迎えている行列へ2時間以上並ぶ。
ようやく店に入り、オーダーしたパンケーキを食べる前にまずスマホで写真を撮り、その場でInstagramに投稿。
食べる頃にはトッピングのアイスは溶け、焼きたてだったあつあつのパンケーキもすっかり冷めているが気にしない。
味より、いかにロマンチックなパンケーキの写真を撮ることのが大事だから。


もちろん、コスパが悪い人とよりも、良い人と時間を過ごしたいと思う。Aくんと一緒にいればまずい料理を食べることを避けられるし、評判の悪い映画も観なくてすむし、道に迷わず、余計な時間を使わなくていいかもしれない。一方Bさんと一緒にいたら人混みの中をぐるぐると歩き回ったあげく行列に並び、ヘトヘトの体にお腹ペコペコになった状態で目の前に出されたパンケーキをBさんの満足する写真が撮れるまで食べるのを待たなければならず、無駄な時間ばかりが過ぎていくと感じるかもしれない。
たが、Aくんが支持しているスマホの情報はあくまで一部の人たちの評価であり、ネットでポストしない人たちが評価する素晴らしいレストランもたくさんあるだろう。また例えば彼とデートをして、待ち合わせから食事中もずっとスマホを手放さない彼に「私の顔よりスマホの画面見てる時間のが多くない?」なんて不満を持ったりしないだろうか。

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Bさんは地図を見ないで道に迷ってしまうこともあるが、その途中に今まで知らなかった通りや思いがけず素敵な店を発見し、「今度時間があるときに来てみよう。」とわくわくした気持ちになれたりするかもしれない。
そして、久しぶりに会ったAくんとの会話はこちらが近況を語ろうとすると「ああ、それFacebookで見たから知ってる」と先読みされてしまいイマイチ弾まないし、BさんはInstagramで話題の店の写真をイチ早くアップしたおかげで地元の友人たちからはカリスマ的存在となり、人気者となっている。

つまるところ、コスパの良し悪しは人の価値観に左右されるものであり、何を持ってコスパが良いか悪いのかは、その人のプライオリティがどこにあるのかで180度変わるということである。コスパの良さそうなAくんの行動は”時短”という視点でみれば見習いたいが人とのコミュニケーションが欠落しがちであり、コスパの悪そうなBさんは一見無駄と思われる行動からお金や時間には代え難い対価を得ている。結局、”楽しさ”、”心地よさ”という指針で比べると、Bさんの方がグッド・パフォーマンスといえるのではないか。

ベスト・コスパの追求に疲れたら、一度スマホを捨て、無駄だと思われることを進んでやってみたらどうだろう。案外野生の勘が働いて、本当に無駄なものが削ぎ落されていくかもしれない。

(Text:Nao Asakura)
(Illustration:Shinobu Ono)

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