DO YOU HAVE IT?

2014.12.05

DO YOU HAVE IT?
No.22
江戸幸・銅おろし金
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職人技がキラリ。台所の名脇役、ここにアリ

東京で唯一、銅おろし金を今なお手で作り続ける職人、勅使河原隆氏による逸品。1935年に隆氏の父、初代・勅使河原幸次郎氏が創業した「江戸幸」の刻印も、柄先の穴も、そして両面の目立ても、すべて隆氏の手によって作られている。目立ての道具は、同じく手作りの鏨(たがね)、そして金づち。鏨の先端を研ぎ、銅板に打ち込むことで目を立てていくのだが、その鏨でさえ、思い通りの角度に研ぎ上げるまでに10年はかかるという。

コンコンコンコン、コンコンコンコン。アップテンポなリズムで次々と立てられていく目は上下左右どこから見ても均一。打ち込む音が乱れることはなく、ほんの2分ほどで手の平サイズのおろし金片面の目立ては完了。素晴らしいとしかいいようのない、まさに匠のワザ。

隆氏いわく、銅おろし金の魅力は、「切れ味と食感だね。セラミックやプラスチックのおろし金だと、ちゃんと繊維が切れないんです。水っぽくなるのは、突起でこすって、細胞をつぶしているから。銅おろし金は、必要以上に細胞をつぶさず、繊維だけを切るから、余分な水分も出ないし、おろしたものがちゃんと山になるし、やわらかくて、まろやかな食感ですよ」。

江戸幸の銅おろし金を愛用している人は全国各地にいる。「修理もやっています。目立て直しって言うんですけどね。一旦すべての目をつぶす。銅板を磨く。そこから、錫をつけて、もう一度目を起こしていくと、新品みたいになっちゃうから、また使えるのね」。手っ取り早い便利グッズもいいけれど、長く使えるホンモノをひとつ、生活に加えてみては?

(Text : 岸 由利子

江戸幸勅使河原製作所
03-3602-1418

平成職人工房
http://www.shokunin-jp.com/

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