モンステラ・マニアによる 熱帯温室マニア

2018.10.01

モンステラ・マニアによる 熱帯温室マニア

夢の島公園 夢の島熱帯植物館 エントランス

世界の熱帯温室

さて、熱帯温室の基礎講座第二回です。今回は熱帯温室の今を軽く勉強してみよう。
国の使命も背負った産業革命の産物である熱帯温室だが、その後、現代までその機能は大きく進化している。昔のSFでは、月や火星にすむ場合、そこにはドーム形の建物がいくつも建てられ、その中に人間が暮らすことのできる地球環境をつくるというのが定番だったが、そんな未来を感じさせる建物がアメリカにある。2018年完成したアマゾン本社の温室型オフィス「Amazon Spheres」だ。ビルの谷間に突如誕生した3つのドームの中には4万本以上の植物が植えられている。まさに外の世界と切り離されたガラスのパラダイスオフィス。従業員達は、ジャングルの中につくられた巨大な鳥の巣の中で打ち合わせをするのだという。


また、イギリスの南西部、コーンウォール州に2001年完成したエデンプロジェクト。こちらはガラス素材からさらに進化して、ETFEというフッ素樹脂でできたバイオームというドームがいくつも連なってできている。まさに未来のエデンの園か。

今や植物園として世界一注目スポットなリゾート、シンガポール、ガーデンズ・バイ・ザ・ベイのクラウド・フォレストは、高さ35Mの人工の山とそこから落ちる滝があるという。シンガポールに熱帯温室って?と思ったら、こちらは地中海の乾燥気候を再現しているという。まさに無い物ねだりの超完成型だ。

日本の熱帯温室事情

で、日本の現状は。水族館や動物園より影の薄い熱帯植物温室だが、その数は、実は水族館や動物園より多い。自治体では文化施設として、植物園などの中に設置されていることが多いが、ゴミ焼却場の余熱再利用するものや、換気システムと地下の冷気だけで温度調節する環境配慮型の温室もある。規模は小屋程度のものから、ドームがいくつも連なった巨大施設まで、大小様々だ。コンセプトとしては、かつては巨大温泉レジャー施設や温水プール(波のあるプールなど)などに熱帯イメージを強調したものも多く、温室的要素も大きかったが、ほとんどが消滅してしまっている。昭和時代に全国に一世を風靡した「ジャングル風呂」がまだいくらか現存する程度だ。現代では、熱帯植物と一緒に、数種類のちょっとした動物や、水槽などの水生生物と一緒に展示する場合も多く、鳥を放し飼いにしている「花鳥園」や伊豆のバナナワニ園のような独自のテーマパークもある。また道の駅などに併設されている場合もあり、純粋な熱帯植物温室から、花農家の公開農園的なものも。近年台頭しているおしゃれ造園業者などは、ショールーム的に独自の温室を一般公開していたり、なかには植物園に負けない規模のものまである。

このように、熱帯植物温室は、動物園や水族館より、身近に存在するにもかかわらず、さらに、空前の観葉植物ブームが起きているというのに、その多くが、魅力を伝えきれておらず、来場者数の減少に苦戦している。実際いくつかの民間施設が経営母体の何度も代わったり、閉鎖に追い込まれたりしている。1976年オープンの伊豆洋らんパーク(のちの「みんなのハワイアンズ」)や1966年オープンの長崎県亜熱帯植物園などが、相次いで閉園し、膨大な植物コレクションの引取先が見つからず、危機に瀕している。

温室応援プロジェクト

この企画では、日本に数ある熱帯植物温室スポットを訪問し、紹介してきたモンステラ・マニアが、 あらためて、それぞれの温室の特徴を紹介し、経営の危機に瀕しているところも多い植物園の知名度向上を図りながら、それぞれのいいところを考え、最終的にモンステラ・マニアが考える理想の熱帯植物温室をかんがえるという、温室応援プロジェクトだ。

最初はどこを紹介しようか。次回を是非お楽しみに。

(Text & Photo:tetsuro oh!no)

tetsuro oh!no(テツロー・オーノ!)
インテリア&ファッションイラストレーター
WEBサイト「モンステラ・マニア」の中では、ミッドセンチュリーデザインインテリアをテーマにイラストや、ボタニカルをテーマにしたグラフィックポスターなどを製作発表している。

モンステラ・マニア since2000
1950〜70年代のミッドセンチュリー期に、インテリアプランツとして一世を風靡した観葉植物の王様“モンステラ”を主役に、観葉植物とインテリア、アートを紹介するインテリアプランツ啓蒙WEBサイト。

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