遺跡発掘、PV出演、恋人のフリ… だから東京はおもしろい 「謎の仕事」紹介します Weird Jobs

2017.04.10

vol.17 LIVING IN TOKYO

遺跡発掘、PV出演、恋人のフリ… だから東京はおもしろい 「謎の仕事」紹介します Weird Jobs

ところで、「便利屋さん」ってご存知だろうか?路上で「お困りの方はご相談ください!」という文言と電話番号が書いてある貼り紙などを私も見たことがあるが、実際困ったときに電話をかけるにはちょっとした勇気がいる。というか、「何でもやる」みたいな商売をしている人たちが何だか「怪しい」と感じてしまうのも否めない。そこで、「知り合いが“便利屋さん”の会社を経営している!」という編集部Hの紹介で、東京の格安便利屋「ワンストップ代行センター」(以下東京便利屋)代表兼最高雑務責任者の高野淳二氏に、東京の困った人たちから依頼される仕事とはどんなものなのか? 面白いエピソードを聞くことができた。

ケース1:出張マッサージ 


料金:10300円/1h
(内訳:基本料金2000円+出張費3000円+5300円<Sランク>)※1
東京便利屋のHPにスタッフの写真が掲載されているのだが、「高野さんという方にマッサージをしてほしい」との依頼が30代後半位らしい男性から電話が入った。もちろん、マッサージは専門ではないので「プロではないのですが」と返事をしたところ、それでもOKとのこと。服装について、裸で待っていたいという相手の要望をなんとか水着着用を説得して、料金や利用規約などを説明し、依頼主の自宅へと向かった。場所は港区の高級タワーマンション。インターホン越しに高野氏の顔を確認するなり、「今日は都合が悪くなって…」と面会を拒否。どうやら写真と実物のイメージが違ったらしい。当日キャンセル料は100%なので、なんとかドアを開けてもらってお金は回収できたそうなのだが、事が及ぶことも覚悟で現場に向かった高野氏。このくらいの度胸がなければ、便利屋は務まらないか…。(女性スタッフへのこの手の指名はお断りしているそう。)

ケース2:探偵


料金:10300円/1h
(内訳:基本料金2000円+出張費3000円+5300円<Sランク>)※1
地方にお住まいと思われる中年女性から、「娘が彼氏と同棲することになったのだが、新居の住所を詳しく教えてくれないから突き止めてほしい。ついでに彼氏がどんな人なのかも知りたい」というご相談。探偵業の届出もしている高野氏は、依頼主の娘さんの引越し日に元の部屋の前で待ち伏せし、バイクで引越し屋のトラックを尾行。無事見失うことなく新居に到着し、住所を素早くメモしたあと、引越業者に混ざり、相手の男性を写メに抑え、現場を後にした。依頼主には娘さんの正確な居場所がわかり、同棲する相手の男性の姿も確認できたので大変喜ばれたたようだが、例えばあまり良心的でない便利屋の場合、「見失ってしまった」と言って、お金だけ請求されてしまうケースもあるという。また、正式な探偵事務所に依頼すると10倍近く費用がかかることもある。親御さんの立場からしたら、数万円で娘さんの無事が確認できるなら、安い料金なのかもしれない。

ケース3:恋人のフリ


料金:10300円/1h
(内訳:基本料金2000円+出張費3000円+5300円<Sランク>)※1
寿司屋でパートをする40代の女性から、「私をナンパしてほしい」という依頼。同じ寿司屋で働く若大将が恋人のようなのだが、どうやら最近態度が冷たいので、店に客として来て彼女に声をかけ、彼の気を引いてほしいというのである。しかも、寿司屋の近くにある大学病院の白衣を着用し、聴診器を首から下げる、というのが彼女の希望のスタイル。その格好で寿司屋に入るのってかなり不自然だよな…とは思いつつ、依頼主の希望通りの出で立ちで現場へ。若大将の目線に入る位置のカウンターに座り、はじめは依頼主に「美味しいですね」などと無難に声をかけ、次第に「素敵ですね」「電話番号教えてください」と徐々に声を張って切り込んでいく。初日は彼女のアドリブで番号交換は断られたが、二度目の来店(も同じスタイル)時には、番号交換に至った。その後ふたりの関係が回復したのかは定かでないが、依頼主は満足していたというので成功だったのだろう。それにしても、若大将が勘の良い人だったら、バレるよな…ということはさておき、お寿司が食べられて、人助けができて、お金をもらえる仕事、なんてアッパレなんだろう。

ちなみに、上記は特殊案件ばかり紹介したが、東京便利屋の得意分野は家具組立・各種取付け・日曜大工・内装リフォーム(ちょっとした壁穴の補修から部屋のリノベーションまで!)
さらに、花見シーズンは会社単位で場所取りの仕事が毎日入り、ブランケットなどの備品もセットにして、一回数十万円稼げる案件もあるという。これぞ便利屋を営む醍醐味!

みなさんのお仕事エピソードを聞いて感じたのは、「仕事の数だけ人間のストーリーがある。」ということ。だから東京は楽しい。“フリーライター”というのも東京にいるからこそネタが尽きないし、なんとかやっていける職業でもある。やろうと思えば、何だって仕事にできるんですよね!

(Text : Nao Asakura
(Illustration : aimi chiyoya)

取材協力 : ワンストップ代行センターhttp://東京便利屋.com
※1 料金の詳細は http://東京便利屋.com/price をご覧ください。

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