2017.11.06

Vol 21.学ぶ東京

高卒で学位は取れる!?
社会人から大学院へ 進学への道


日本人の平均寿命は年々伸びている。統計学者の話では、このままいけば、平均年齢が100歳を超える日も遠くないとの話も聞く。100歳まで生きる人生、どんな人生設計を描けばいいのか。これまでに日本社会があたり前に思ってきた学びのエスカレーターも、少し変化が見え出しそうだ。

学びの欲はいつ芽生えるかわからない。高校時代に芽生える人もいれば、卒業後に「あんなこと学んどけばよかった」と後悔する人もいる。そもそも、人生経験の浅い18、9歳くらいで人生を決められる人間の方が少ないだろう。となると、学び欲に目覚めてしまった大人はどこへ行ったらいいのだろうか。生涯学習的なセミナーや講座を受けるのもいいが、大人になって学ぶのだ。どうせなら最高の学びにしようではないか。学びの最高学位といえば博士。もちろん博士になるには生半可な努力ではなれないが、入り口がないわけでもない。「大卒じゃないとムリじゃね?」と思いきや、そうでもない。高卒既卒者にでもチャンスはある。

試験さえ通れば何歳だって入学できる


そもそも、大学の入学試験を受けるのには年齢制限はない。何歳だって挑戦できる。ためしに、入ってみたい大学の「大学名 募集要項」で調べてみれば、情報はすぐに分かる。ほぼ、全ての大学の募集要項に書かれているのは受験する年の春もしくは秋までに高校を卒業見込みのものということだ。つまり、高校を卒業している人ならば、何歳でも受験資格はあるのだ。

中卒はどうなるか。この場合は「高校卒業程度認定試験」というものがある。昔は通称「大検」と呼ばれていたものだが、平成17年度から仕組みが変わり、名称も変更になった。試験の実施はだいたい年に2回。理科系科目、数学系科目、国語、社会、地理、歴史、英語などの試験を突破すると高等学校卒業者と同等以上の力があると認定され、大学受験を受けることができるのだ。簡単なことではないが、真剣に取り組めばチャンスが無いわけではない。このためのスクールもあるので、調べてみる価値はあるだろう。

高卒者なら大学院も目指せる


高卒者はそのまま高校新卒者と同じような応募の仕方をたどることになる。しかし、大学を飛び越えて、大学院に入れる可能性もなきにしもあらず。大学院の募集要項には、大学を卒業していないとダメと書いてあるところの方が珍しい。また、大学によっては社会人の院生を積極的に受け入れるところも見られ、社会人入試を実施する有名大学も数多く存在する。大学によっては、少子化の影響もいなめず、社会人の入学で授業料というマネーを生み出したいという部分も大きかろう。

海外の大学を見渡すと、社会人になってから入学するパターンは多くみられる。特に大学院の場合はその比率が大きい。世界で一番ノーベル賞受賞者を出していると言われるアメリカのシカゴ大学を見てみると、学部生5800人に対して、大学院生7100人と、圧倒的に大学院生の数が多い。この中には大学への就職を考えてあえて大学院に残るいわゆるポストドクターの人々も含まれているが、それでも、数は多かろう。面白いのが大学の寮。日本の大学の場合、大抵は一人暮らし用の寮がほとんどだが、シカゴ大学では家族でも住めるよう、2LDKや3LDKといった間取りのアパートメントも大学で所有しており、多くの家族連れ院生が利用していた。筆者が滞在中もこうした家族を何人も見た。会社員をやめて、社会学者を目指す人、骨董屋から美術史の学位取得をする人などなど、バラエティーに富んだ顔ぶれだった。

高卒だった大学の事務員の女性でさえ、「お金をためて、これから大学へ行くの」と話していた。彼女は結婚して子どもが二人いたが、学校の先生になりたいと言っていた。そう、もはや、年齢が高いからとか、家族がいるからということは、彼らから「大学」という学びの選択を躊躇する理由にはならない。むしろ、親にお金を出してもらうのがあたり前のようになっている日本の学生の状況の方が「信じられない」といった感じだった。

NEXT>>では、日本で高卒から大学院に行く場合はどうなるか?

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