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2014.10.01

vol.2 TOKYO 30s girl
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Bravo! NIPPON
古事記アーティスト・吉木誉絵さんが語る『古事記』の魅力、いにしえの女たち-(3)

日本に悪女は存在しない!
男女の聖域を守り抜く「秘密」が女性らしさの秘訣
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──ところで、イエスの洗礼者・ヨハネの首を求めたサロメのような悪女は、古事記にも出てくるのですか?

吉木:サロメをモチーフにした芸術作品は素晴らしいですよね。聖書やギリシャ神話をはじめ、昔の宗教的な物語には、彼女のように、ある種の残虐性を含む悪女が多く出てくるのですが、古事記に悪女は一人として出てきません。その代わりといっては語弊があるかもしれませんが、「秘密」を大事にしていた女性たちは多く存在します。

例えば、日本を産んだ女の神様、イザナミノミコトは、火の神を産んだ時、その火でやけどを負って、命を落としてしまいます。黄泉の国に行くのですが、夫であるイザナギノミコトが、愛しさあまって、迎えに行くんです。「愛しい妻よ、あなたがいないこの世の中は耐えられないから、いっしょに帰ろう」と。

イザナミノミコトは、「ありがとう、嬉しい。でも、私は黄泉の国の食べ物を食べてしまったので、外には出られないし、元には戻れません。これから黄泉の国の神様と相談してくるので、ちょっと待っててください。その間は、決して覗かないでくださいね」と言います。

しかし、一向にイザナミノミコトは出てきません。しびれを切らしたイザナギノミコトは、左側の髪に挿していた櫛の尾羽を折り、それに一つ火をともして御殿に入り、中をのぞいてしまいます。そこには、うじ虫が湧き出た体から雷がゴロゴロと鳴り響く、変わりはてたイザナミノミコトの姿がありました。

恐れをなしたイザナギノミコトは、一目散に逃げ、黄泉の国の神様が捕まえようとし、さいごは、イザナミノミコトもあとを追いましたが、結局、ここで日本史上はじめての離婚が成立してしまうんです。

──知らなくていい秘密を知ってしまったために、二人の仲が裂かれてしまったのですね。

そうです。他にも、豊玉毘売命(トヨタマビメ)という女性の神様の話があります。彼女の本当の姿は鮫なんですね。子どもを産む時、元の姿になってしまうため、夫の山幸彦(ヤマサチヒコ)に、「私を見ないでください」と言いますが、ここでもまた男性の神様は見てしまいます。愛し合っていたにも関わらず、トヨタマビメは深い悲しみに暮れ、海に帰ってしまい、二度と会えなくなります。

作家の三島由紀夫が「男女の境界線は、踏み越えてはならない」と言うように、これらの神話から、男女には、それぞれの聖域があり、その一線は越えてはいけないものだということがうかがえます。言いかえるなら、「女性らしさを守る」ということではないかと。

現代女性にもきっと同じことが言えますよね。好きだからといって何でもかんでも相手に見せるのではなく、見せ方というか、一番分かってほしい部分だけをちゃんと見せればいいのかなと。今も昔も、女性は女性で守っておかなくてはならない秘密があって、その秘密が女性らしさや美しさを保つことにつながるのではないかと思います。

これからは日本の出番、女性の出番

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──先ほど「今ほど女性が輝ける時代はないと思う」とおっしゃいましたが、どういった理由からですか?

吉木:古事記にも書かれているように、私たちの先祖にあたる人々は、まわりとの調和をはかりながらさまざまな問題を解決し、国をつくってきましたが、これって、女性的な方法ですよね。最も尊い神様は天照大御神で女神です。つまり、日本という国そのものが、女性的な国であると私は考えています。

力で支配するような、腕力に訴えるような、男性的な問題解決の方法が疲弊している今、世界で求められるのは、平和・調和の精神に則ったより女性的な解決方法。ゆえに、いよいよ日本の出番だなと思うんです。

そして、争いや諍いのない平和な世界になれば、より女性が活躍しやすくなる。これは歴史をたどっても、ごく自然な流れです。必ず文化が花開き、そこには多くの女性たちの活躍がみられます。例えば、世界最高の長編小説「源氏物語」を書いたのは紫式部で女性です。彼女の生きた平安時代中期ごろから、女性たちは大いに活躍していましたし、活躍できる環境も保障されていたのです。これからの日本がどうなっていくか、今から楽しみでなりません。

ちなみに、アインシュタインは、「来たるべき世界政府の盟主は日本が担うことになるであろう。そのような尊い国を作っておいてくれたことを神に感謝する」、ダライラマも「これからは日本の時代であり、かつ日本の女性の時代である」とずっと前から予言していたそうだ。これは、支配するというのではなく、平和にどう貢献するかということについて、日本が舵取りするようになるという意味だ。そして、その根っこには、古事記に記された私たちのルーツ、「和の精神」がある。素晴らしい時代がやってきたようだ。

吉木誉絵公式サイト
http://www.ynorie.com/

(Text:岸 由利子

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