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2014.09.10

vol.2 TOKYO 30s girl
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Brand-New Share House
東京30代女子が2拠点生活!?

セカンドハウスという新たなシェアハウスのカタチ

最近、30代女子シェアハウスがめきめき進化している。
例えば、本来なら、“家賃とは別枠で”お金を払って通うはずのフィットネスジムやヨガスタジオが共有スペースにあったり、屋上デッキ、シアタールーム、バーラウンジといった、ホテルばりの豪華施設がついていたり…。自分時間を有意義に使えるという意味でも、効率の良さでも、魅力的なバリエーションが実に豊富。単なる“家賃節約のための共同生活”という域をとうに越えた今のシェアハウスは、まさに東京的、かつ充実型ライフスタイルのひとつだといえる。今回は、中でも、とりわけユニークなシェアハウスで暮らす3人の30代女子に、現在に至る経緯、その生活の様子、“大人ならではのシェアハウス”の醍醐味をたっぷりうかがった。

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ユウコさん、エミさん、サキさん(仮名)の3人が暮らすのは、代々木八幡にあるファミリータイプマンションの2LDK。とにかく広くてきれい。奥のリビングへと続く長い廊下に沿って、それぞれの部屋、バスルーム、トイレ、収納スペース、キッチンがある造り。高く抜けた天井が、空間をさらに広く感じさせる。

──そもそもシェアするようになったきっかけって、何だったんですか?
ユウコさん:3人共、「仕事場がこの界隈」、「夜遅くなることが多い」、かつ「“自宅”はあるけれど、遠い」という共通項がはじまりだったんです。

──え!?みなさん、ご自宅があるのですか?
サキさん:はい、ユウコさんは軽井沢、エミさんと私は、それぞれ鎌倉と世田谷に実家があります。「遠いといっても、都内じゃないの!」とツッコミを受けそうですが、うちの実家は、駅からかなり遠く、夜な夜な深夜タクシーのお世話になるのが、そろそろつらいなと思いはじめていた時に、シェアハウスの話が持ち上がって…。

ユウコさん:サキさんとは4年くらいかな。エミさんとはもう7年になるかも。3人共、仕事を通して知り合い、それからの付き合いなんです。

エミさん:ユウコさんとは、仕事のあと、夜もしょっちゅう遊んでいて、ホテルに一緒に泊まることが多かったんです。それはそれで楽しかったけれど、よく考えてみたら、「ホテル代、もったいないよね」と。

ユウコさん:みんな、自宅は自宅であるので、「そんなに高いお金を払っては住みたくないけど、シェアすれば、そこそこ広い家に、もうひとつ拠点の場が持てて、便利だよね」ということで、去年、物件探しをはじめました。

エミさん:メゾネット、テラスハウス…と、1日で色んな物件を5つほど見たんですが、「間取りもすごくシンプルで、ちょうど良いかんじだよね、よし、ここで!」と、満場一致で決まり、シェア生活がスタートしたんです。
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──本拠地(自宅)とシェアハウスで過ごす割合って、どんな感じですか?
ユウコさん:その時々に依りますが、基本的には、夜ごはんが家で食べられる時間があるなら、私は軽井沢に帰っちゃいますね。帰宅が夜12時を過ぎそうな日は、こちらに泊まるという感覚です。

サキさん:私はだいたい週の2/3くらいはここにいて、残りは、用事のある時を含めて、世田谷の自宅で過ごしています。

エミさん:当初は週3日くらい過ごす感じでしたが、最近はこっち(シェアハウス)にかなりいますね。「居心地が良すぎてどうしよう!」という嬉しい悩みにモンモンしている今日この頃です。

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<──>―いっしょに暮らすうえで、みんなで決めたルールってありますか?
エミさん:実はほとんどないんですが、今日はシェアハウスに帰るという日は、「これから帰るね」と、フェイスブックのグループメッセージで報告し合っています。「今から、友だちを連れて行くけど、泊まってもいい?」といった、当日の急な来客予定も伝えますね。

ユウコさん:建物1棟がシェアハウスだったりすると、むずかしいケースもあるようですが、うちは布団も3組ありますし、友人に対しては、「どうぞくつろいでいってください」の歓迎スタンスです。住人の私たちが心地良いと感じる空間だからこそ、来客にとってもその点は同じみたいで、「明日も帰ってきていいいですか?」ってパターンもよくあります。

──掃除や料理といった家事や、水・牛乳、トイレットペーパーなど、生活必需用品についての決めごとは?
エミさん:足りないものをみつけた人がその都度買ってくる感じです。これがもし20代女子3人のシェアハウスだったら、1円単位まで細かく割ったりしたのかもしれませんが、みんなある程度、“成熟してる”じゃないですか(笑)。だから、ちっちゃいことは気にしない。サキさんは料理が好きなので、作りたい時に作る、ユウコさんは、軽井沢に帰るたびに、コーヒー豆とか、美味しい農産物を調達してきてくれる。私は、掃除が好きなので、やる。別に決めているわけじゃないけど、役割分担みたいなものが自然にできていているんですよね。かといって、何も気にしないということではなくて、やっぱり大人として、それぞれに気を遣っている、そのバランスが絶妙にマッチしているんだと思います。揉めごとは一切ないですね。

サキさん:料理した時に、たまたま誰かがいたら、いっしょに食べたりもしますが、基本的に、食事は別々。週によって、まったく顔を合わせない時は、「カレー、たくさん作ったので、良かったらどうぞ!」とおすそ分けしたりもします。冷蔵庫の中の私物を誰かが使ったとか、シェアハウスではそういうことでよく揉めると聞きますが、特に夏場とか生鮮食品ってくさりますし、逆に「食べてくれてありがとう!」って思います。
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エミさん:今のところ、その気配はどこにもないというのが現実ですね(笑)。ただ、ひとつだけ、決めていることがあります。結婚することになっても、ある日突然、親に何かがあって、実家に戻らなくちゃいけなくなったとしても、みんなでここを共有して借りているので、唐突に、「私、抜けます!」となれば、どうしても均衡がくずれてしまうわけです。その時は、代わりになるような人をみつけてくる、あるいは、次の更新までは、家賃を払い続ける。これは、入居する前3人で話し合って、決めました。

ユウコさん:30代の今、もし、少しでも結婚を予期するような状況にいたら、最初からシェアしていなかったと思います。今の2拠点生活は、ある意味、それぞれにとってすごく都合が良いんですよ。「今日は自宅に帰りたいな」と思えば素直にそうすればいいし、逆に、「今日は誰かといっしょにいたいな」という時は、シェアハウスに帰ればいい。最低限のルールはあるけれど、へんに縛られないし、自由度が高くて、何の利害関係もない。これがもし彼氏相手なら、そうはいかないですよね。いちいち断りを入れなくちゃいけないでしょうし、想像しただけでも、色々と大変…。

サキさん:実家に帰ると、逆にストレスを抱えちゃいますね、私は。

ユウコさん:分かる!お風呂の順番とか、朝起きる時間とか、ルールが違い過ぎて、その“マスト”に合わせるだけで相当なパワーを使ったりするよね。

エミさん:さみしくないから、このままずっといっちゃうんじゃないかという危機感はあるけれど…(笑)

ユウコさん:至上最高の快適さだよね、きっと。

全員:イエス!

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──今のシェアハウス生活について、周りの反応はどうですか?
エミさん:まだここに住むことを決める前、親しい友人には、「そんなの絶対にうまくいかないから、やめたほうがいい」と言われましたが、私としては心配の要素がひとつも見当たらなかったんです。現に、暮らしてみたら、そうでした。

サキさん:私も!

ユウコさん:「いい大人同士が、同居?」という人もいますが、「いいな~。なんか楽しそうだね!」といわれることの方が多いですね。完全にリラックスモードの部屋着&すっぴん姿で、各々が無言でテレビに見入ったり、ゲームをしたり、仕事をしたり。みんながそろう時は、三者三様、気の向くまま、過ごしていますし、ドラマなどで描かれているような美しい感じはありませんが、2人は私にとって、良い意味で、家族よりも気兼ねなく過ごせる相手かもしれません。

エミさん:この先、10年、20年とか続くとか続かないとかいうものでもなくて、今、同じことを趣味にしているという感覚に近いかもしれませんね。「本拠地はあるけれど、もうひとつ帰る場所を持ちたい」という共通点と、言葉で定義できないような生活感覚が奇跡的に合った3人が、いっしょに暮らしている。それが楽しい時期なのかなと。

ユウコさん:これまでに、海外でも日本でも、シェア生活することが多かったんですが、経験上、一緒に住めるかどうかは仲良しの度合いじゃないと思うんですよ。シェアメイトって、友だちとはまた別の存在。ざっくり言うと、「いっしょに住める人かどうか」が大事。実際住んでみないと分からないこともありますが、私たちが苦もなく、わりと楽しく、暮らせているのは、“変な生活習慣”を持っている人がいないということが大きいと思います。たとえば、常時お香を炊いていないとダメとか。

サキさん:あと、私たちの場合、良い意味での“気にしなさ加減”も合っているのかも。たとえば、みんなのバスタオルをいっしょに洗うのがイヤという人もいますが、うちは、みんな平気なので、まとめて洗うことが多いです。効率的ですしね。

バーコーナー



いくつになっても女子にありがちなプライベートへの過剰な踏み込みは一切なく、かといって、ただの同居人と割り切り、引かれた境界線の範疇で接するということでもない。同じ屋根の下、共に暮らす人のためにできることは、誰に頼まれるでもなく、しれっとやってしまう。小さいことかもしれないが、そんな大人の女性ならではの気配りができるからこそ、ほど良い距離感とバランスが保てているのかも。いざとなれば、ひとりになれる環境(自宅)があるということも、心の余裕を生んでいるのだろう。セカンドハウスとしてのシェアハウスという選択。これから30代女子の新しいライフスタイルの風潮になるかもしれない。

(Text:岸 由利子

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