夏の終わりと秋の気配が少しずつ忍び寄る9月。
今月の新作は、事実に基づき社会に鋭く問いかける作品と、多様な絆のかたちを描く作品が揃った。夏の余韻を抱えながら、新しい季節の入り口で人の心の揺らぎや決断を映し出し、観る者に深い余韻を残す5本を紹介する。
『タンゴの後で』
劇場公開日：2025年9月5日
1972年公開の衝撃作「ラストタンゴ・イン・パリ」。
その華やかな成功の裏で、主演女優マリア・シュナイダーが背負った葛藤と怒りを軸に、映画業界に潜む権力と搾取の構造を暴き出す。
19歳で一躍スターとなった彼女を待ち受けていたのは、過激な性描写シーンの撮影による深いトラウマだった。本作は彼女の人生と闘いを、いとこの著作を基に映像化。
アナマリア・バルトロメイがマリアを演じ、マット・ディロンがマーロン・ブランドを演じる。
2024年製作／102分／PG12／フランス
原題または英題：Maria
配給：トランスフォーマー
劇場公開日：2025年9月5日
公式サイト：https://transformer.co.jp/m/afterthetango/
『リモノフ』
劇場公開日：2025年9月5日
詩人にして革命家、亡命者であり兵士――数多の顔を持ちながら世界を挑発し続けた実在の人物、エドワルド・リモノフ。その破天荒な人生をベン・ウィショー主演で描くドラマが誕生。
原作はエマニュエル・キャレールの伝記小説「リモノフ」、監督は「チャイコフスキーの妻」のキリル・セレブレンニコフ。
名声と自由を求めて亡命するも、アメリカで孤独と挫折に直面し、それでも詩と行動で世界に挑み続けた男の姿が浮かび上がる。
2024年製作／133分／R15+／イタリア・フランス・スペイン合作
原題または英題：Limonov: The Ballad of Eddie
配給：クロックワークス
劇場公開日：2025年9月5日
公式サイト：https://klockworx-v.com/limonovmovie/
『九月と七月の姉妹』
劇場公開日：2025年9月5日
デイジー・ジョンソン原作を映像化した本作は、10カ月違いで生まれた姉妹セプテンバーとジュライのいびつな絆を描く。
我の強い姉と内気な妹は支配関係にありながら、強い絆で結ばれている。
学校で起きた事件をきっかけに、母とともに移り住んだアイルランドの海辺の家で、新しい暮らしが始まるが、ただの戯れだったはずの姉妹の命令ゲームは次第に緊張感を増し、外界から切り離された家の中に不穏な影が立ち込めていく。監督はアリアン・ラベド。
2024年製作／100分／PG12／アイルランド・イギリス・ドイツ合作
原題または英題：September Says
配給：SUNDAE
劇場公開日：2025年9月5日
公式サイト：https://sundae-films.com/september-says/
『風のマジム』
劇場公開日：2025年9月12日
原田マハの小説「風のマジム」を、伊藤沙莉主演で映画化。沖縄・那覇で暮らす伊波まじむは、祖母が営む豆腐店を手伝う日々を送っていたが、ある夜バーで出会ったラム酒に心を奪われる。
その原料がサトウキビだと知り、通信会社の社内ベンチャー企画に「南大東島産サトウキビでラム酒を造る」という夢を応募。
やがて小さな想いは島を巻き込む大きなプロジェクトへ――実話を基に描く感動ドラマ。
2025年製作／105分／G／日本
配給：コギトワークス、S・D・P
劇場公開日：2025年9月12日
公式サイト：https://majimu-eiga.com/
『ひゃくえむ。』
劇場公開日：2025年9月19日
手塚治虫文化賞を最年少で受賞した魚豊のデビュー作を、『音楽』の岩井澤健治がアニメ化。舞台は100m走――わずか10秒に満たない一瞬の輝きに人生を懸ける者たちの狂気と情熱を描く。天賦の才を持つトガシと、努力で走りを極めようとする小宮。放課後の練習から始まった絆は、やがて互いを高め合うライバル関係へと進化する。
数年後、天才ランナーとして勝ち続けなければいけない恐怖に怯えるトガシの前に、トップランナーの一人となった小宮が現れる。
主演は松坂桃李と染谷将太。
2025年製作／日本
配給：ポニーキャニオン、アスミック・エース
劇場公開日：2025年9月19日
公式サイト：https://hyakuemu-anime.com/
日差しが和らぎ、空気に涼しさが混じるこの時期、ひとりで静かに味わうのもいいけれど、誰かと並んで観て、その後に社会問題や互いの関係について語り合うのもまた映画ならではの楽しみ方だ。
