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2016.07.17

vol.11 TOKYO SYSTEM

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ゼロ年代以降、美魔女化し続ける「TOKYO」


こうした圧倒的な風景としての「TOKYO」は、実はゼロ年代以降(2000〜)に形成された。前出の500棟のうち約70%はここ15年間で大資本によって竣工されたもので、その動きは世紀末が明けてインターネットが社会へ浸透していく流れと見事に一致する。さらに共働きが当たり前になった時代は、帰る場所を郊外から都心へと変化させた。結果、受け皿としてのタワーマンション需要が高まった。

街作りはどうだろう? あの狂乱のバブル期の頃でさえカップルや夜遊び向けのスポット開発で留まっていたのに対し、近年は女性客重視のコンサルに惑わされるあまり、どの街も画一化された“箱作り”に躍起になっている。そのくせ郊外と何ら代わり映えのないテナントのほとんどは、ネットショッピングで簡単に間に合ってしまう。

法と金、都市銀行や大企業が主導する人工的なバベルの塔と、申し訳程度の緑地がついたショッピングモール的空間の量産は、ただでさえ防犯監視カメラが大量に設置された街から、新しい世代や若いスピリット、色気と体臭で繋がったポップカルチャーを奪っていく。東京らしさとは、街々の個性の集合体であることも知らずに。老朽化したインフラの改修と高層ビルでメイクして若返ろうとする「TOKYO」は、美魔女の原理そのものだ。

人の多さも半端じゃない。東京には約1360万、23区だけで935万もの人々で溢れ返っている。昼間人口になるとそれ以上に膨張する。生きていく場として東京はとっくにパンクしていること(保育園や介護不足、交通渋滞や通勤ラッシュなど)に今更驚く人はいないと思うが、一昔前と違うのは避けて通れない茨の道(少子化と超高齢化、格差と貧困など)に足を踏み入れたという現実だ。

それでも人は35年ローンを保ちながら、あるいは莫大な相続税に悩みながら、小さな「TOKYO」に執着する。団塊世代の夫婦は利便性を求めて引退後に「TOKYO」に移り住む。地方の若者たちはいまだに恋愛ドラマでタグづけされるような「TOKYO」を目指してやって来る。外国人ツーリストたちはアーカイヴされたCOOL JAPANな「TOKYO」を、時間通りに運行する地下鉄や観光バスで巡って帰っていく。

常にどこかから工事の騒音が聞こえる“現在新光景”が構築される中、デジタル・ネイティヴの子供たちはゲームとスマホをやりすぎてしまったせいで、もはや何がリアルで否か、「東京」と「TOKYO」の区別さえついていない。未来を担う少年少女たちの心には“風景のロスト感覚”は宿るのか?

人口だけでなく、政治や経済、情報や機会が一極集中した東京は、日本のGDPの1/5を占めるまでに至った。これは世界の大都市間競争の中でも断トツトップの経済力を誇る。だが一方で、もし東京が成長を止めれば、その時は日本の弱体化が進行し始めるというリスクも間違いなくはらんでいる。それにしても生活動線上に巧みに仕掛けられた“消費させるため”の銀河系のような広告群を、イルカのように器用に泳ぎ抜けていくのは「TOKYO」では至難の技だ。

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