※本作は、ChatGPTにより生成した小説を実験的に掲載しています。
その日、仕事はいつもより早く終わった。
それなのに、まっすぐ家へ向かう気になれなかった。
45歳。
都内のメーカーで、企画と調整みたいな仕事をしている。
大きな失敗はないし、評価も悪くない。
ただ最近、「何も起きていない感じ」が続いていて、そのことが少しだけ気にかかっていた。
夕方の会議で、部下の提案にこう言った。
「それ、前にも似たのあったよね」
言った瞬間、空気がほんの少し止まったのがわかった。
否定したかったわけじゃない。
部下を早く帰らせたかったし、会議をこれ以上引き延ばしたくなかった。
ただ、そのつもりが、言葉だけ先に出てしまった。
会議は予定より早く終わり、パソコンは自動でシャットダウンされ、フロアの照明も落ちる。
今日は“ちゃんと帰れる日”だった。
エレベーターで一階まで降りて外に出ると、まだ空は明るく、人も多い。
なのに、足は自然と駅の方向へ向かわなかった。
ふと足を止め、会社の近くのカフェに入る。
この時間なのに席はそこそこ埋まっていて、仕事をしている人もいれば、ただぼんやりしている人もいる。
みんな、仕事と家のあいだにいるように見えた。
窓際の席に座ってスマホを見るが、新しい通知は特にない。
今日の会議の議事録も、もう誰かがまとめているだろう。
そう思うと、少し肩の力が抜けた。
コーヒーを一口飲んだところで、スマホが震える。
さっきの若い部下からだった。
「さっきの案、もう少し整理して送ってみます」
短い文だけれど、前向きさが伝わってくる。
画面を見つめながら、さっき自分が言った一言を思い返す。
“似ている”と、“ダメ”は違う。
その違いを、忙しいときほど省略してしまう自分がいる。
そのあと、顔だけ出すつもりで友人との忘年会に向かった。
年末の店はどこも混んでいて、グラスの音と笑い声が重なっている。
久しぶりに会う顔もあって、近況を聞かれ、無難な返事をする。
楽しくないわけじゃない。
ただ、どこかで自分の時間を気にしている。
一軒目で切り上げ、外に出る。
終電の時間はまだ先だったけれど、
その日はなぜか、タクシーに乗りたくなった。
年末にタクシーで帰るなんて、ずいぶん久しぶりだ。
後部座席で窓の外を眺める。
信号待ちの赤、コンビニの白い光、忘年会帰りの人たち。
街はにぎやかなのに、車内は静かだった。
その静けさが、ちょうどよかった。
家に着くと、部屋は静かだった。
冷蔵庫を開けて水を飲み、ソファに座って靴下を脱ぐ。
テレビはつけない。
ノートをもう一度開くと、さっき書いた一行がちゃんとそこにある。
「新パッケージ案:最初のアイデアを前提に検討」
消さなかった自分に、少しだけ安心する。
明日、消すかもしれない。
消さないかもしれない。
どちらでもいい。
でも今夜は、「少し違う関わり方をしてもいい」と思えている。
窓を少し開けると、夜の空気が入ってきて、遠くで電車の音がした。
ここは、仕事でも、家でもない。
帰路未満の時間。
その場所に立ち止まれたことが、なぜか悪くなかった。
次回は第6話「光の裏側」
34歳。順調に見える起業家。
整いすぎた毎日の中で、「自分の本音」をどこに置いたままなのかに気づいてしまう一日を描きます。