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Ren-Sai

AI小説:第3話 図形の呼吸

※本作は、AIによる文章生成の実験として制作された短編連載です。
現代の東京に生きる人々の呼吸を、AIとともに描き出します。

深夜、画面の中のロゴがこっちを見ている気がした。
少しの曲線、わずかな余白。
そのどちらも、数字では説明できない。

「これでいいですか?」
AIデザインツールが、候補を十個ほど出してきた。
どれも整っていて、きれいだ。
だけど、どこか同じ顔をしている。
AIで作成したものは「整っている」のに、「生きていない」。
最初は戸惑ったけれど、今は少し楽しくなってきた。
どうすれば“息を吹き込めるか”を考える時間が増えたからだ。

46歳。独立してもう12年。
企業ロゴやパッケージ、広告のアートディレクション。
この仕事が、今も好きだ。
AIのツールが増えて、
「もう自動でできます」と言われることもある。
けれど、きれいに並んだものを“心地よく整える”のは、
まだ人の仕事だと思っている。

若い頃は勢いで“壊す”ことばかり考えていた。
今は、“整える”方が性に合っている。
ズレた線を直したり、色のバランスを探したり。
完璧に仕上げることより、
「ここだ」と思える瞬間を見つけるのが好きだ。
整えるのは、作業じゃなくて会話。
素材と、画面と、自分の感覚と。

AIは最初から整っている。
でも、整っていく途中の“揺れ”には、まだ人の余地がある。
その余地を残すことが、たぶん僕の仕事なんだと思う。

午前2時。
デスクライトが、机の上のマウスを照らす。
窓の外で救急車の音が遠ざかる。
都会の夜は、どこかで誰かが働いている。
自分だけが起きているわけじゃない。
そう思うと、少しだけ安心する。

メールの通知が鳴った。
「もう少し今っぽく、明るいトーンにしてください」
“今っぽく”という言葉が苦手だ。
でも、だからこそ挑戦したくなる。
AIに指示を出す。
“明るく、親しみやすく、少し遊び心を”
数秒後、十案が並ぶ。
悪くない。
それでも、自分の手で線を引き直す。
その瞬間、胸の奥が少しだけ静かになる。

この仕事を始めた頃、
徹夜明けに見た朝の青空が忘れられない。
あの青さを見たくて、今も続けている気がする。
AIには、まだあの青の深さはわからない。
でも、いつか共有できたら面白いかもしれない。

椅子を引き、立ち上がる。
体がギシッと鳴って笑ってしまう。
「よし、今日も悪くない」
そうつぶやいて、自分の手を見る。
皺が増えても、この手がある限り、
まだ線は引ける。

パソコンを閉じると、部屋が静かになった。
窓の外の空が、わずかに白み始めている。
東の光が差し込んで、机の上のペンを照らした。
描きかけの図形が、少し呼吸をしているように見えた。

コーヒーをひと口飲んで、笑う。
「まあ、今日も整えていくか」
そう言って、またペンを取った。

次回第4話は...
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